久慈駅「うに弁当」(1,470円)~東北エモーション、中から見るか?外から見るか?②【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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八戸線のレストラン列車「TOHOKU EMOTION」。
前回に続いて、「東北エモーション、中から見るか?外から見るか?」をお届けします。
第2弾の今回は、「外から見る旅」を楽しみます。

八戸線のキハ40

八戸線のキハ40

「外から見る」には、「東北エモーション」より先回りしなくてはなりません。
このため“乗る時”より1本早い、東京6:32発「はやぶさ1号」に乗って、八戸に9:21着。
46分の待ち合わせで、八戸10:07発の433D普通列車久慈行に乗り継ぎます。
国鉄時代を色濃く残す、非冷房のキハ40に揺られて1時間あまり。
今回は11:21着の岩手県洋野町(ひろのちょう)にある有家(うげ)駅で下車します。

八戸線・有家駅

八戸線・有家駅

三陸の真っ青な海が目の前に広がる無人駅の「有家駅」。
近くの浜はサーフィンスポットとしても知られ、サーファーの姿も見られます。
震災の時は、この辺りもおよそ14mの津波が襲ったと伝えられており、洋野町は亡くなった方こそいませんでしたが、漁業関係施設を中心に、大きな被害を受けてしまいました。
八戸線の被害も大きく、有家駅の待合室も震災後に建てられた新しいものとなっています。
(参考:洋野町HP、環境省HP)

「洋野エモーション」の看板

「洋野エモーション」の看板

有家駅前の踏切を渡り、海沿いの道を歩いていくと、小屋の近くに「洋野エモーション」の看板が見えてきました。
実はコレ、「東北エモーション」の通過に合わせて、地元の皆さんが大漁旗などを振る活動のこと。
平成25(2013)年の運行開始直後から、有志の方によってボランティアで続けられています。
最近ではJR東日本のCMにも登場、地元では大漁旗を振ることを「エモる」と呼ぶとか!?

「洋野エモーション」活動開始

「洋野エモーション」活動開始

「洋野エモーション」の活動は、下り列車通過前後のおよそ30分程度。
この日、有家駅近くには、およそ10人の皆さんが「エモり」にやって来ました。
地元の方のみならず、八戸から「エモり」たくて、わざわざ県境を越えて足を運んだ方もいました。
12:20過ぎ、長めの警笛の音と共に、「東北エモーションの」白い車体が登場。
いよいよ「エモり」ますよ!

大漁旗に応えて、ゆっくり走る「東北エモーション」

大漁旗に応えて、ゆっくり走る「東北エモーション」

『ありがとう~!!』
大漁旗がはためく音と共に、「東北エモーション」に乗ってくれた皆さんへの感謝の思いが弾けると、応えるように、車内の皆さんからも、思いきり手が振り返されます。
全く知らない人同士が、わずか3分間だけ、同じ空気を楽しむ一体感。
どんな形でも「つながる」って、楽しいんですよね!

「東北エモーション」を追いかけて

「東北エモーション」を追いかけて

『さあ、走るよ!』
有家駅付近は、線路と交通量の少ない道路が並行していることもあって、体力に自信がある人が多い日は、“追っかけ”エモーションが行われることもあります。
この日は、「東北エモーション」がとてもゆっくり走ってくれたお陰で、思い切り走って、列車に追いついてしまった猛者も・・・!?

再び加速していく「東北エモーション」

再び加速していく「東北エモーション」

「ありがとうJR」の“復興ドラム缶”がある「宿戸(しゅくのへ)」の海岸と、この「有家(うげ)」駅近くで行われている「洋野エモーション」の活動。
大漁旗をはじめとした数々の旗は、地元の皆さんの私物を持ち寄って行っているといいます。
スタートから4年目に入り、今年は昨日5/1から運行が始まった「トランスイート四季島」の乗客が、「東北エモーション」を貸し切って運行する日もあるとのことで、一層、活動にも熱が入りそうです。

見えなくなるまでお見送りが基本の「洋野エモーション」

見えなくなるまでお見送りが基本の「洋野エモーション」

実は今回お邪魔したのは、「洋野エモーション」を発案されたいわて復興応援隊の“ケイティ”こと宮本慶子さんに、私の「前回」の記事を読んでいただいたことがきっかけ。
元々は、『(あまちゃんの)夏ばっぱみたいに、思い切り大漁旗を振ってみたい!』という思いから始まって、ずっと地道に活動を続けています。
もちろん、「洋野エモーション」は、自由参加、飛び入り参加、一見さんOK!
運行日の正午過ぎ、洋野町の海沿いに旗を持った人が集まっていたら、「私もエモりたい!」と伝えて、仲間に加わってみてはいかがでしょうか?

“夏ばっぱ”こと、工藤クニエさん(2017.1、京王百貨店新宿店にて)

“夏ばっぱ”こと、工藤クニエさん(2017.1、京王百貨店新宿店にて)

「東北エモーション」に手を振った後、地元の方に美味しい店を教えてもらって、昼ごはんにするのもよし、次の普通列車を1時間ほど待って、久慈へ向かってもいいかもしれません。
久慈といえば、三陸鉄道久慈駅の「三陸リアス亭」の訪問は必須。
大漁旗を振って“夏ばっぱ”気分を味わったら、ホントに“夏ばっぱ”のモチーフとなった工藤クニエさんの味をいただくのも、「外から見る旅」のストーリーとしては面白いでしょ!?

うに弁当

うに弁当

久慈駅弁、三陸リアス亭の代名詞でもある「うに弁当」(1,470円)。
「駅弁膝栗毛」では、「去年夏」以来、改めてのご紹介ですね。
訪れたのは、3月中旬の平日ということもあって、なんと「予約なし」で入手出来ました!
20個限定で早朝から行列を作り、朝のうちに完売してしまうのは、超繁忙期ならではのこと。
やっぱり、旅は空いている日に出かけるのがイチバンですね!

うに弁当

うに弁当

ふたを開けた瞬間に漂う磯の香りに、一気に胸が高まります。
やっぱり、久慈の「うに弁当」は、日本のうに駅弁の最高峰。
単に、ご飯の上に蒸しうにが載っているだけではないんです。
ご飯のすき間に炊き込まれた1つ1つの小さなうにが魅せる、最高のパフォーマンスが凄い。
久慈を訪れる大きな動機の1つになる「うに弁当」であることは、間違いありません。

東北エモーション、八戸線・陸中八木~有家間

東北エモーション、八戸線・陸中八木~有家間

2回にわたってお届けした「東北エモーション、中から見るか?外から見るか?」
最初はやっぱり、「中から見る」のがお薦めです。
ただ、「外から見る」のも意外にイイ!
ローカル列車に揺られ、地元の方と話をして、“夏ばっぱ”気分を味わうのも、一つの旅です。
乗っても、“エモって”も楽しい「東北エモーション」の旅です。

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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