GO!GO!ドーナツ盤ハンター

忘れちゃいけないPaul McCartneyフォロワー“森高千里”【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。
そんなアナタのためにドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が「ぜひ手元に置きたい一枚」をアーティスト別・ジャンル別にご紹介していきます。

4月末、2年ぶりにポール・マッカートニーが来日しました。なんだかんだでまた武道館公演に行ってしまった私ですが、御年74歳のポールが、51年前に立った同じステージで、バリバリの現役アーティストとして歌っているこの事実。間もなく後期高齢者となる年で大規模なワールドツアーを行っていること自体、よく考えたら異常なのですが、もはやポールは時の流れを超越した存在なのです。
ポールに影響を受けたアーティストは数知れませんが、忘れちゃいけないのが森高千里です。『渡良瀬橋』のPVを初めて観たときの衝撃は今も忘れられません。

「うおお、1人『Let It Be』やんけ!」とひっくり返ったものですが、本家ビートルズのPVと見比べてもらえれば、いかに森高がディープなファンで、ポールを敬愛しているかが一目瞭然。間奏のリコーダーは『The Fool On The Hill』のオマージュだし、傑作『私がオバさんになっても』の世界観はもろ、『When I’m Sixty-four』です。細かい点を挙げていくとキリがないのですが、あの人を食ったようなヘンテコな自作の歌詞も、ビートルズを深く聴きこんだ感性の成せる業かもしれません。きょうはポール来日記念で“弟子”である森高の、アナログ盤で聴きたいナンバーをご紹介していきましょう。

【ビギナー向け】・・・『ザ・ストレス(ストレス中近東ヴァージョン)』(1989)

ザ・ストレス

ドーナツ盤が急速にCDへと切り替わったのが、1989年です。80年代最後の年であり、昭和が終わり平成がスタートした年。1987年デビューの森高は、まさにレコードとCDの端境期に現れたアイドルで、初期のシングル数作は両方のメディアで発売されていました。
もともとこの曲は、4枚目のアルバム『見て』(1988)に収録されていた曲で、森高自身がストレスからお腹が痛くなった経験をそのまま歌にしたのですが、「ストレスが地球をダメにする」というフレーズは、ブラック企業だらけの今の社会を予言するかのようです。
アルバムでのタイトルはただの『ストレス』でしたが、シングル化にあたってアレンジを変え、頭に『ザ』を付けたのが本曲。だから「ストレス中近東ヴァージョン」なのですが、このワケの分からなさこそ森高の魅力。ジャケットがなぜウェイトレスの恰好なのかも真意は不明ですが、一説によると「ストレス」と「ウェイトレス」を引っ掛けたらしく、つまりダジャレかいっ!
当時はまだ「コスプレ」という概念が世間に定着しておらず、このケレン味溢れるキュートなジャケットは、レコード店に置かれた等身大パネルの効果もあって、ヲタク層のハートをワシ掴みにしました。「あれ、お尻を突き出したポーズじゃなかったっけ?」と言う方、それはCDシングル盤(あのタテ長の8cmシングル)のジャケットで、この正面ポーズはかなり貴重。これが最後のアナログシングルということで、市場では5,000円近くするようですが、独自の道を行く森高の記念碑的作品、値は張っても持っておきたい一枚です。

【上級者向け】・・・『ザ・ミーハー(スペシャル・ミーハー・ミックス)』(1988)

ザ・ミーハー

森高のセカンドアルバム『ミーハー』(1988)に収録されていた曲で、シングルカットにあたってミックスを変え、頭に『ザ』を付け…って、あれ?さっき同じこと書いた気が。ま、『ザ・森高』(1991)というベスト盤もあるくらいですからね。
この曲は、森高が初めて自分で詞を書いたシングルであり、まさに森高ワールドの原点。ビートルズで言えば『Love Me Do』です。この曲が世に出ていなければ、他人が書いた普通の楽曲をあてがわれ、あの天才的感性は埋もれていたかもしれません。
本人によると、アルバムレコーディング中「なんか一曲、詞書いてみたら?」とスタッフに言われたのがキッカケだったそうで、そのスタッフには感謝するほかありません。最初はなかなか言葉が浮かばず苦吟したそうですが、「自分のことを書けばイイんだよ」と言われて、「私、お嬢さんじゃなく、ただのミーハーなの!」と開き直ったところから、森高革命は始まったのです。これもアナログ盤は稀少で、3,000円〜5,000円するようです。

【その他、押さえておきたい一曲】

『NEW SEASON』(1987)

NEW-SEASON

デビューシングルであり、出演映画の主題歌。まだ女優で行くのか歌手で行くのか、路線が決まっていなかった頃の初々しい表情が貴重。

『ALONE』(1988)

ALONE

5枚目のシングルで、いかにも80年代な感じのダンサブルなナンバー。作詞は森高自身。

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

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