アート界への愛と風刺がつまった大人の寓話『僕とカミンスキーの旅』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第195回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、4月29日から公開となる『僕とカミンスキーの旅』を掘り起こします。

盲目の天才画家とインチキ美術評論家、奇想天外な旅の先に見たものとは…

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無名の美術評論家ゼバスティアンは、金と名声を得るために芸術家の伝記を書こうと画策する。
目をつけたのは、画家のカミンスキー。
彼はマティスの最後の弟子でピカソの友人、ポップアートが隆盛を極めた1960年代にニューヨークで“盲目の画家”として注目を浴びた人物。
いまではスイスの山奥で、ひっそりと隠遁生活を送っている。

ゼバスティアンは伝説的人物の新事実を暴くため、老いたカミンスキーをそそのかし、彼がかつて愛した女性の元に連れて行こうとする。
しかし思わぬトラブルが立て続けに起こり、旅は思わぬ方向へと向かっていく…。

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崖っぷちの青年美術評論家と盲目の老画家がヨーロッパをめぐる旅を描いたロードムービー、『僕とカミンスキーの旅』。
東西ドイツ統一の裏側で時代に翻弄される家族の悲喜劇を描き世界的にも注目を集めた『グッバイ、レーニン』のヴォルフガング・ベッカー監督とダニエル・ブリュールが再びタッグを組んだことでも話題となっているドイツ映画です。

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野心家の青年ゼバスティアンを演じるのは、ダニエル・ブリュール。
『グッバイ、レーニン』以降はハリウッドにも進出、いまでは国際的なスター俳優に成長しました。
“好青年”という言葉をそのまま体現したような好感度俳優のブリュールが、インチキ臭い役どころを演じているというだけで思わずニヤリ。
そしてその期待に応える、見事な演技を披露しています。

カミンスキーに扮しブリュールと絶妙な掛け合いを見せるのは、『007』シリーズの悪役ミスター・ホワイトなどで知られるイェスパー・クリステンセン。
また喜劇王チャールズ・チャップリンの娘でもある名女優ジェラルディン・チャップリンがカミンスキーの元恋人のテレーゼを演じているのも大きな見どころですよ。

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ピカソ、ザ・ビートルズ、アンディー・ウォーホルなど著名人のポートレートや美しい絵画が、スクリーン狭しと登場する本作。
美術好きならば、これら絵画に触れることにも胸が躍ることでしょう。
その一方で、“盲目の画家”という話題性で祭り上げられた老画家の人物像には、アート界への皮肉や風刺がたっぷり盛り込まれており、観るうちに“虚”と“実”の境界線が曖昧になっていくような錯覚も…。
噛めば噛むほど味が出る、これぞまさに「大人のための寓話」です。

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僕とカミンスキーの旅
2017年4月29日からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
監督・脚本:ヴォルフガング・ベッカー
出演:ダニエル・ブリュール、イェスパー・クリステンセン、ドニ・ラヴァン、ジェラルディン・チャップリン、アミラ・カサール ほか
©2015 X Filme Creative Pool GmbH / ED Productions Sprl / WDR / Arte / Potemkino / ARRI MEDIA
公式サイト http://meandkaminski.com/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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