出水駅「竹灯籠弁当」(1,080円)~鹿児島・出水の隠れた極上足元湧出!「湯川内温泉・かじか荘」【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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肥薩おれんじ鉄道・HSOR100形気動車

肥薩おれんじ鉄道・HSOR100形気動車

熊本県の八代と、鹿児島県の川内(せんだい)を結ぶ第3セクターの鉄道「肥薩おれんじ鉄道」。
熊本・鹿児島の2県にまたがる並行在来線というのは、少し珍しい存在です。
本州の並行在来線は、ほぼ県境で会社が変わるため、利用者には運賃の割高感が否めません。
でも、「肥薩おれんじ鉄道」は2県で1つの会社なので、「通しの運賃」で済みます。
しかも、車窓は絶景だらけですので、乗らないのは、本当に“勿体無い”路線です。

湯川内温泉かじか荘

湯川内温泉かじか荘

さて、鹿児島・出水といえば、「ツルの越冬地」で有名です。
一方、歴史好きの方には、日本最大級の武家敷群「出水麓武家屋敷群」も見逃せません。
その中で温泉好きが目指すのが、「湯川内(ゆかわうち)温泉・かじか荘」。
湯川内温泉までは、出水駅東口からタクシーで15分ほど。
「出水タクシー」を指名すれば、上限1,500円でメーターストップしてくれます。

湯川内温泉は、出水市郊外にある古めの一軒宿で、日帰り入浴(7:30~19:30、300円)も営業。
今から260年以上前の宝暦4(1754)年の開湯で、江戸時代は薩摩藩・島津家御用達の温泉として使われ、明治時代になってから一般の人にも開放されました。
つまり、武士階級が庶民に秘密にしておきたかったくらいの「いい温泉」という訳です。

湯川内温泉かじか荘(上の湯)

湯川内温泉かじか荘(上の湯)

浴室のドアを開けると、湯気と共に、微弱な硫黄系の匂いが漂ってきました。
湯川内温泉の素晴らしいところは、温泉の中でも極上とされる「足元湧出」の温泉であること。
浴室は2つあり、それぞれの風呂の底の砂利の間から、ぷくぷくと温泉が湧きだし、掛け流されていて、お湯に浸かれば、湧きだしたお湯と気泡が背中を伝っていくのが分かります。
この風呂は、敷地内斜面上段にある浴室「上の湯」で、湧きだしているお湯は湯川内1号泉。
湯温はぬるめの38.4℃、ph9.6、成分総計170mg/kgのアルカリ性単純温泉です。

湯川内温泉かじか荘(下の湯)

湯川内温泉かじか荘(下の湯)

加えて、湯川内温泉の素晴らしいところは、光線の具合でエメラルドに輝く時があること。
特に入口から近い「下の湯」のほうが、“いいエメラルド”になることが多いように感じます。
コチラは湯川内2号泉、36.3℃、ph9.6、成分総計159mg/kgのアルカリ性単純温泉。
成分があまり「濃い」お湯ではなく、ぬるめのお湯なので、長湯しても疲れにくいのが嬉しい!
のんびり入って、気づいた時には、体じゅうに付着した気泡で真っ白に見えるのが至福の時です。

竹灯籠弁当

竹灯籠弁当

出水の渋い魅力のある温泉に入ったら、出水の渋めの(?)駅弁で腹ごしらえ。
今回は、出水駅弁「松栄軒」の「竹灯籠弁当」(1,080円)をご紹介しましょう。
実は鹿児島・出水市、平成28(2016)年10月30日に「いずみマチ・テラス」というイベントで、「竹灯籠」の世界一に挑戦し、29,305本で見事「世界一」になりました。
このイベントを盛り上げるべく、記念駅弁として登場したのが「竹灯籠弁当」なんですね。

竹灯籠弁当

竹灯籠弁当

【お品書き】
味付けご飯
煮物(筍、椎茸、蓮根、人参、三角揚げ)
鮭西京焼き
肉団子
錦糸玉子
玉子焼き
おひたし
山菜
栗甘露煮
はじかみ
もみじ麩
酢蓮根

出水駅弁の中では新顔の駅弁で、去年(2016年)10月28日から発売を開始。
発売初日には、即完売となった人気ぶりだったようです。
(参考:出水駅観光特産品館「飛来里」公式FB)

竹灯籠弁当

竹灯籠弁当

掛け紙を外すと、懐かしい雰囲気の笹の籠から、華やかな弁当が現れました。
薄めのだしで炊かれた味付けご飯の上には、松栄軒自慢の「筍」の煮物が三つ!
「松栄軒」は煮物も十八番なので、肉系が重く感じる時は、煮物の入った駅弁が狙い目です。
全国向けの黒豚駅弁を大量生産する一方で、地元・出水に寄り添った新作駅弁を作り、継続的に販売しているのも、駅弁好きにとっては、何となく温かい気持ちになれるもの。
まさに竹灯籠のように、ポッと心に小さな灯が灯ったような気分になりました。

肥薩おれんじ鉄道の夕景

肥薩おれんじ鉄道の夕景

八代~川内間は、元々の鹿児島本線でも海の景色が楽しめる区間でした。
海が楽しめるということは、それだけ線路が海岸線に沿っていて、カーブが多いということ。
それゆえ九州新幹線は、景色を犠牲にして時間を優先、トンネルが多くなっているんですね。
だからこそ、不知火海~東シナ海の景色を楽しむなら「肥薩おれんじ鉄道」。
新幹線でサッと出水まで来て、駅弁を買いこみ、ボックスシートの海側席へ・・・。
せっかく九州を旅するなら、新幹線1駅分だけでも、3セクのローカル線旅を楽しんでみては!?

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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