CIAがユリ・ゲラーをホンモノの超能力者だと認めていた?!【ひでたけのやじうま好奇心】

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自称“超能力者”、ユリ・ゲラーという男を覚えておいででしょうか?
そう… 70年代、「超能力ブーム」「スプーン曲げブーム」を巻き起こした、あのユリ・ゲラーです!

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Schwabinger Basar (TV-Show, BRD, BR, 1980) Uri Geller und Uschi Glas ; Magier, Zauberer, Personen 写真提供:時事通信

振り返りますれば1974年3月7日。
日本テレビ系列において、いまも語り草のテレビ特番、『木曜スペシャル/脅威の超能力!世紀の念力男ユリ・ゲラーが奇跡を起こす!』が放映されました。
そしてこの番組の中で、“世紀の念力男”ユリ・ゲラーが封筒の中身を片っ端から当てる“透視術”や、スプーンをクイクイと曲げてしまう“スプーン曲げ”なるワザが、ドカンドカンと紹介され、しかして、この特番は、30%近い高視聴率をマーク!
列島は、時ならぬスプーン曲げブームに沸き、ユリ・ゲラーは、一躍、時代の寵児となりました。
あれから43年の歳月が流れましたが…実は… いま再び、ユリ・ゲラーが、世界的な話題の中心となりつつあります。

きっかけは、アメリカ中央情報局(CIA)にまつわるニュース。
今年の1月、CIAが、約1,300万ページに及ぶ膨大な“機密文書”を、オンライン上で一般公開しました。
すると、その中に…かつて、CIAがユリ・ゲラーに対して行なった、「遠隔透視(リモート・ビューア)実験」に関する報告文書が含まれていたことが分かったのです!

この報告書の中で、CIAは、こう結論付けています。
「ユリ・ゲラー氏は、(一連の遠隔透視実験により)超常的な認識能力を、明確かつ説得力のあるかたちで示したように見える。」
… 要するに、天下のCIAが、ユリ・ゲラーの超能力をホンモノだと認めていた… ということです!
さぁ、このニュースで、またしても、日本の一部のメディア、某ワイドショーなどが大騒ぎ!
「ユリ・ゲラーの超能力は、やっぱりホンモノだった~~!」
「あのCIAが虎の子の国家機密文書を公開したのだから、インチキの筈がない!」ってわけで、現在、母国のイスラエルに住んでいるユリ・ゲラー本人に、直撃インタビューを慣行!
はるばるやってきたマスコミからインタビューを受けたユリ・ゲラーはご満悦でした。
要するに、いま、ニッポンの一部のマスメディア、ネット上では、「あのユリ・ゲラーが真の超能力者として科学的に認められた」かのように捉えられている… というワケです!

さ、ところが… ちょっと、待ってください。
問題は、ここから。
実は、今回の、CIAとユリ・ゲラーにまつわるニュース。
よくよく調べてみますと、「それほど驚くべきニュースではない」ということが分かってきます。

まず、ユリ・ゲラーの「遠隔透視(リモート・ビューア)実験」に関する、この報告文書。
別に、これまで、ひた隠しに隠されていたわけではないのです。

最近まで、この文書を閲覧するには、メリーランド州にある国立公文書館に行って、4台しかないパソコンの端末でアクセスするしか、方法がありませんでした。
でも、見ようと思えば、誰でも、見ることができたわけです。
「機密扱い」は、何十年も前から、とっくに、解除されていたのです。
今回は、それが初めて、ネット上で一般公開された… ということに過ぎないわけです。

さらに言えば、CIAは別に、ユリ・ゲラーの“遠隔透視能力”なるものを、なんの疑念もなく諸手を挙げて認めているわけではありません。
「実験した結果、トリックと断じる証拠はない」──
「“一見”、ユリ・ゲラー氏の能力は、超常的なものに見える」としているに過ぎないのです。

そして、この実験が行われた時期が、東西冷戦のさなかだった…というところも大きなポイント。
ソ連も、人間兵器として利用するべく超能力の実験を本気でやっていましたから、アメリカCIAとしても、せっかく大金をかけて実験をやった以上、少しは“成果”のようなものを見せたかった… という心理が働いていた、とも言われています。
要するに、ソ連への“示威行為”という性格もあったというワケです。

さて、さきほども言いましたように、この報告文書、「見ようと思えばだれでも見ることができた」わけですから、くだんの「遠隔透視能力実験」を考察した本も世界中で出版されています。
では、いったい、この「遠隔透視能力実験」とは、実際には、どのようなものだったのでしょうか?
この機会に、つぶさに振り返ってみましょう!

伝説の遠隔透視能力実験は1972年11月12日から、カリフォルニア州のスタンフォード研究所で、8日間に渡って行われました。

このとき、CIAの要請を受けた科学者たちは、ユリ・ゲラーを窓のない密室に入れ、その隣の部屋に、CIAの局員を入れました。
CIA局員は、アタマに思い浮かぶ絵を、自由に描きます。
それが終わると、科学者は、隣の部屋にいたユリ・ゲラーに、こう尋ねます。
「さて… となりで、CIAの局員が描いた絵が、どんなものだったのか、キミには分かるかね?」

ユリ・ゲラーは、スケッチブックに、絵を描きます。
二枚の絵の内容が、ピタリと合えば、遠隔透視能力実験は大成功… というわけです。

果たして、結果やいかに… ?
結論から言いますと、「めざましい」のひとことに尽きる、恐るべき結果となったのです。
CIA職員が「ぶどう」の絵を描くと、ユリ・ゲラーも「ぶどう」の絵を描いた…。
CIA職員が「鳥」の絵を描くと、ユリ・ゲラーも、たちどころに、「鳥」の絵をスラスラと描いたんです!

この実験で、ユリ・ゲラーは、「頭の中に、絵のイメージが浮かんでくるんだ」と語っています。
たとえば、ぶどうの時には、「絵から水が滴っている…」「円がいくつも見える…」とつぶやきました。

さぁ、いかがでしょうか?
この結果だけをみると、どう考えても、ユリ・ゲラーには、超能力があるのだ…と思うでしょう?

ところが… ところが… !
ジェームズ・ランディという、アメリカの有名な一流マジシャンが、「ユリ・ゲラーの秘密」という本を出しているのですが… この本の中でランディは、ユリ・ゲラーの遠隔透視能力なるものは、ズバリ、トリックの産物だと断言しているんです!

いったい、どういうトリックだったというのか?
この実験には、ユリ・ゲラーの親友、シンプソン・シュトラングという男が立ち会っていました。
そして、このシンプソンという相棒が、ひそかに「ぶどう」なら「ぶどう」… というふうに、ユリ・ゲラーが絵を描く際に、手真似やジェスチュアでサインを送っていた… というのです。

実に面白い、「根拠」があります。
まず、CIAの職員が、橋の絵を描きました。

このあと、ユリ・ゲラーが書いたのも、確かに、橋の絵でした。

…でも、ランディは、この絵こそが、まさしく、トリックの証拠だと主張したのです。
なぜなら、ユリ・ゲラーが書いた「橋」の絵は、CIAが描いた橋とは、全く違う種類の橋だったからです。
CIA職員が描いた橋は、橋は橋でも、「釣り橋」でした。
いっぽう、ユリ・ゲラーが描いた橋は、同じ橋でも、まったく見かけが違う橋──すなわち、「架け橋」だったのです。

ランディの推理は、こうです。
「アメリカでは、橋のイメージは、ゴールデンゲート・ブリッジや、ブルックリン橋などの“吊り橋”だ。いっぽう、ヨーロッパ大陸出身のユリ・ゲラーの橋のイメージは、石造りの“架け橋”だ。」

「もしもユリ・ゲラーのテレパシーがホンモノであれば、吊り橋に似た絵になるはすだ。ところが、彼が描いた橋の絵は、どうみても、“架け橋”だ。」

「なぜか? それは、相棒から、橋(bridge)という“言葉”だけを伝えられたに過ぎないからだ!アタマの中に、橋の情景が浮かんだのではない──つまり、すべてはトリックなのだ!」

… ちなみに、こうしたジェームズ・ランディの主張に対し、ユリ・ゲラーは、いまだに、説得力のある反論をおこなってはいません…。

伝説の「スタンフォード研究所による遠隔透視能力実験」。
CIAがお墨付きを与えたかのような報道がなされてはいますが…少なくとも、明快かつ論理的な疑義をさしはさんでいる専門家が存在するのは「事実」です!
果たして、ユリ・ゲラーの超能力とは、ホンモノなのか否か?
アナタご自身で、判断してみてください。

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超能力のトリック

参考文献:『超能力のトリック』松田道弘 (講談社現代新書)

3月15日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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