ジャーナリスト山路徹レポート~福島県浪江町の今【垣花正あなたとハッピー!】

FM93AM1242ニッポン放送「垣花正とあなたとハッピー」月~金 8:00~11:30
3/10(金)の放送に明日で東日本大震災から6年、東北福島の現在の状況とは?人々の思い、そして希望とは?現地取材を行ったジャーナリスト・山路徹さんが登場!

今月3月31日に避難指示を解除する政府案を受け入れた福島県・浪江町。

避難指示解除を前に浪江駅に到着したJR常磐線の試運転列車=20170307午前福島県浪江町 写真提供:時事通信

避難指示解除を前に浪江駅に到着したJR常磐線の試運転列車=20170307午前福島県浪江町 写真提供:時事通信

垣花)明日3月11日で東日本大震災から6年ということになります。山路さんは東北、主に福島を中心に取材をしておりまして、今回も福島を取材されたのですが、福島の中のどちらを取材されたのでしょうか?

山路)今回は、丁度取材の直前に決定した、3月31日に避難指示解除がされる浪江町と、僕らがライフワークにしている南相馬市です。

垣花)浪江町もそうですけど、福島の町というのは今月“避難指示解除”という大きなターニングポイントを迎えるのですね。

山路)飯館村もそうですし、富岡町もそうですし、ある意味ではここに来て一斉に避難指示解除に向かって動いている。ただ実際にそこに戻ろうかということになると、なかなか現地の人たちにとっては難しい問題が多々あります。

垣花)実際に浪江町は避難指示をめぐり帰還困難区域を除いて避難指示を解除するという政府案を受け入れるという意向を示しました。その対象の人数は町の人口の8割を占めると。1万5,327人で、これまでの避難自治体で最も多い数になっているということです。

山路)ただ、馬場町長の話だと「今この時期に避難指示を解除して戻らなければ、町が無くなってしまう」という、そういう危機感の下に今回の帰還を決めたということがあると思うのですが。今回インタビューの話を聞いていただくのは、浪江町の消防団の団長で、佐々木保彦さんという方で、これまで立場上浪江町民の方々と接しながらこの6年間避難生活を送ってこられた方です。今回の避難指示解除について、率直にどう思っているのか訊いてきましたので、お聴き下さい。

浪江町消防団団長・佐々木保彦氏インタビュー  戻っても生活できる環境が無いという現実

山路)3月31日に避難指示が解除ということを浪江町の方で決定した訳ですけど、率直にご感想はいかがですか?

佐々木)帰りたい気持ちは私もありますけど、まあ放射線の線量が一番心配だと思うのです。でも一回やってまだあちこちに(線量が)高い所がありますから、(避難指示解除を)やるということを言っていますけど、やはり数字で言ってしまうと心配なのですよね。田んぼを除染しても、まだ試験、試験、試験……って、本当に米を作って売れるのかというと、買う人はいないですよね。帰るのはちょっとって、考えてしまうよね。

山路)昨日、浪江の駅の方で取材してきましたけど、まだまだ商店街とかも崩れている所があって。

佐々木)ありますね。駅前は特にひどいですね。町長の話だと、上下水道も完備したと。診療所も3月下旬にはオープンする。しかし商店街の、これといったものはまだ無いのですよ。町に戻っても、不便なことばかりだと思います。

山路)つまり、戻っても生活できる環境が無いということじゃないですかね。

佐々木)だと思いますよ。だから帰りたい人はある程度歳のいった人なのですけど、そっちだって浪江に帰ってもお医者さんが日中はいますけど、夜の救急になったらどうしようかとか、そういう心配がありますよね。皆が皆帰りたいという訳ではないのですよ。もうこの近くに土地を買って。内作って6年ですからね、そこで生活もできていますし。

3月31日はゴールではなく、新たなスタート

垣花)浪江町消防団団長の佐々木保彦さんの言葉は、本音ですね。帰って良いと言われてもねえ、帰れないですよっていう。

山路)もちろん中には戻ろうとしている人たちもいるのですよ。そういう人たちは「なるようにしかならないから戻るんだ」と。それは投げやりに言っているのではなくて「なるようになる」それを受け止めていくしかないという意味合いで言っているのですけれども。

垣花)まあ、当事者にしか分からない絶望も含まれているし、また希望ももちろん含まれていますし。

山路)もう少し平たく言うと、いろんな専門家たちに自分の町の将来を決めてもらいたくないという思いもある訳ですよ。だから戻る人は戻れば良いし、子供たちなんかむしろ戻る必要は無いし、とおっしゃっている方もいるのですよね。

垣花)実際山路さんから見て浪江町の様子ってどのような感じだったのですか?

山路)やっぱり沿岸部の請戸地区なんかに行くと、確かに津波で流された場所の瓦礫とかは綺麗に片づけられていますけど、そこに町があったのだろうなというような所には白い大きな壁で……要するに除染のゴミが積み上がっている訳ですよ。だからそこはもう6年目の姿かなあと、ふと思いましたけどもね。それとやっぱり町の中を見てもまだまだ、それこそ本当にこれから取り壊さなければいけないような建物もいっぱいありますしね。だから逆に言うと3月31日はゴールというより、新たなスタートですね。

垣花)これ商店街は本当に残念ながらまだお店が……。

山路)まだ大型店舗も無いですしね。帰って生活できるかっていうね。

垣花)仕事ですよね。例えばお米を作ったとしてもそれも買ってもらえるのですか、働く企業はあるのですかという所ですね。

山路)そうですね。それで一足先に避難指示解除をした楢葉町なんかも、結局企業誘致をしながらそこに人を戻そうというような活動もしてきているのですけど、そこもなかなか上手くいっていないという状況でね。

垣花)復興の見通しまであと何年ですかという新聞のアンケートによると、宮城とか岩手は割と「何年」と明確に答える首長さんが多いのですけど、福島だけは見通せないと答えることが多いですよね。

山路)そうですよね。はやり時間の経過と共にいろんな問題が出てきますからね。

垣花)そういう中で、山路さんもライフワークとおっしゃっていましたけど、この番組でも何度も電話でご出演して頂きました、南相馬市の桜井市長にもお会いしたのですよね。

山路)桜井市長は一方でどうやったらここに人が来てくれるのかということでは、桜井市長ならではの独自のセンスで、今一生懸命頑張っていまして、その辺りの話を少し訊いてきました。

南相馬市の桜井市長のインタビュー~企業誘致ではなく“夢”の誘致をしなくてはならない

山路)これから南相馬市が向かおうとしている道、今歩き出したその道というのはどういう道なのですか?

桜井市長)結局新しいことに挑戦していかないと、今のままを復旧するだけでは人が戻ったり、人がそこに魅力を感じたりしないのですよ。「放射能で汚染された町」「ここで暮らすのが厳しい街」みたいな報道があるけど、放射能レベルだって目標の除染レベルをクリアしているし、健康上問題のあるようなレベルではない。

山路)地方といえばよく無いものねだりで企業誘致だとかいろんなことを考える訳ですけど、桜井さんの場合はどうなのでしょうか?

桜井市長)企業誘致をやるのは単純な訳ですよ。でも“夢”をこの地域に誘致することによって、あらゆる“夢”に魅せられた人たちがやってくるじゃないですか。だから最も大きい夢がここに来れば実現できるかもしれないと思わせることが我々の仕事ですね。

山路)“企業誘致”ではなくて、“夢”誘致と。

桜井市長)そう。市民の立て直しに関わる問題については我々が責任を持って手当をし、また新しい夢については、子供たちが夢を見られるような地域を作り出す為に。
例えばイノベーションコストに基づくロボットテストフィールドだったり、国際産学官の共同利用施設といって研究施設だったり、そういうものを作りながら、新たな実証実験としての空飛ぶ自動車、自動走行の自動車、災害ドローンによる計測、自動飛行のコントロールなどの実験をやりながら「この地域って何か変わったことをやっていて、何かありそうだな」と、世界の技術者たちが来て確かめられるような所にしていけば、今の高校生たちも大学に行って「こっちで研究したいな」と思うようになる。そう思わせるようにしていかなければならない。「自分たちがここに来てチャレンジできるということは自分の夢の実現でもあるな」と思えれば、彼らだって「ここに生まれて良かった」と思うようになる。
一方で高齢者には在宅で医療を提供しましょうかとか、遠隔診療をしましょうかとか、全く新しい試みをやる訳ですよ。
なぜそうやるかというと、この地域が安心して暮らせるということが必要だし、希望を持てるということが必要だから。皆から見れば変わった取り組みだと思われるかもしれないけど、私からすると当たり前の取り組みをやっている訳ですよ。

山路)極端な話をすると、一度震災によって壊れた訳ですよね。それを元通りに直すのは復興ではないと。生まれ変わることだということを市長が常々言っていたのはこういうことですね。

桜井市長)結果として少しずつ見えてきているのではないかな。だから多分来年はもっと変わっていると思うし。

夢と希望が無い限り人は戻って来ない

垣花)いやあ、桜井市長は全く違う視点で見ているのですね。

山路)そうですね。そこに夢と希望が無い限り人は戻って来ないと。

垣花)ある意味すごくドライですよね。確かに健康上放射線量に問題無いですよと言っても戻って来ないでしょうと、それはもう分かっている訳ですよね。

山路)他の市町村と違って住民の背中を押すのではなくて、住民を手繰り寄せていくような。放っておいても人がやってくるような仕組みとして、そこに夢の場を実現しようと。

垣花)企業誘致ではなくて“夢”誘致。

山路)これがまたすごいのが、空飛ぶ自動車実験を今後予定していたり、この間も世界初のドローンによる完全自立飛行による配達の訓練をやったり、あとは無人シャトルバスを走らせようとか。

垣花)そこに出てくるワードは全て未来型ですね。

山路)そうなのですね。そこに若い世代なんかも夢や未来、面白さを感じて「戻っていこうかな」という気にさせる。我々は被災地というとつい復興といって元の町に戻して、という風に思ってしまう。

復興ではなく人々を惹きつける“夢”の街づくりを

垣花)被災者のためにと考えがちですけど、誰々の為にと思っているボランティアスピリッツには限界がある訳ですよね。

山路)市長が言っていた言葉で私が印象的だったのは「俺はかっこいい南相馬を作りたいんだよ。そこに人が集まるはずなんだよ」という言葉でした。

垣花)かっこいい街になったら来てくれと言わなくたってやってくると。

山路)今も外国からどんどん来ているのですよ。研究者や学生が。

垣花)なるほど。そうやって南相馬市が全く新しい街として復活すれば、南相馬市だけの問題ではなくなるということですよね。

山路)そうなのですよ。市長は、地域のリーダーシップを執っていかなければならない、自分たちだけが先に進むのではなくて、それによって浪江町や双葉町や大熊町や富岡町も含めて、全体が復興に向かっていく、そのきっかけを作っていかなければいけないという風に言っていましたね。

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