ライター望月の駅弁膝栗毛

水戸駅「いばらきいいものとりあい弁当」(1,100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.3しまだフーズ編④)【ライター望月の駅弁膝栗毛】

bl170223-1(E501系)

常磐線E501系電車

かつて、常磐線の通勤電車として、上野にも顔を出していたE501系電車。
常磐線快速を通勤に使っていた方には、懐かしい顔かもしれません。
今は常磐線・土浦以北、水戸線などのローカル列車として活躍しています。
デビューは平成7(1995)年ですので、早くも登場から22年になるんですね。
この年は、阪神・淡路大震災があった年・・・月日が経つのは早いものです。

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「しまだフーズ」島田拓郎社長

2000年代、10年で3軒の駅弁屋さんが消滅した水戸駅。
この苦境に、悩みながらも平成23(2011)年、新たに「駅弁」に参入したのが「しまだフーズ」です。
島田拓郎(しまだ・たくろう)社長も、最初は「もう、駅弁ってダメじゃないのか?」という先入観があったといいます。

駅弁参入前日、東日本大震災発生、「震度6弱」の揺れが襲った!!

●NREさんからお話があって1年、駅弁に参入された時のことは憶えていますか?

駅弁を受けることになって、NRE(日本レストランエンタプライズ)の水戸支店長(当時)との話し合いで、「平成23(2011)年3月12日」から、水戸駅で駅弁を販売することが決まりました。
ちょうどダイヤ改正などが行われる日でしたから、JRとしてもタイミングが良かったんでしょうね。
そこで、前日の3月11日に、水戸の弁当売店で「牛べん」「豚べん」「常陸之國美味紀行(幕の内弁当)」「昔おにぎり」の4種類の試験販売を行いました。

午後1時からJR水戸支社で最終プレゼンを行い、「頑張ってください!」というお墨付きをいただいて、水戸駅の売店に戻ると、ものの1時間で、見事に弁当が売れて無くなっていたんです。
スタッフと「よかったね!!」という声を掛け合いながら、意気揚々と「さあ、明日から頑張ろう!」と工場で準備に取り掛かろうとした時でした。
時計の針は、午後2時46分・・・、揺れたんです!
もう、電話が繋がらなくなりました。
ようやく繋がった最初の電話が、NREからでした。
「しばらく(駅弁は)中止!」という声が聞こえてきました。

シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」
(vol.3しまだフーズ編①)水戸駅「常陸牛 牛べん」(1,050円)
(vol.3しまだフーズ編②) 水戸駅「ローズポーク 豚べん」(1,000円)
(vol.3しまだフーズ編③)水戸駅「昔おにぎり」(550円)

●東日本大震災では、水戸も大きな被害を受けてしまいました・・・。

水戸の街も地割れが起こり、地面がだいぶ凸凹していました。
そして、私の会社(しまだフーズ)の工場もダメになってしまったんです。
最初はだましだまし屋根を直しながら使っていたんですが、どうしても雨漏りが止まらないということで、最終的に、「移るしかない」ということになりました。
だから今も、「北のしまだ」南町店で、駅弁作りを行っているんです。
実は震災直後の印象が強すぎて、駅弁を販売したのがいつか、私自身よく憶えていません。
一応、公式ホームページでは、2011年5月からということになっていますが・・・。

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グループの居酒屋「北のしまだ」南町店で調製が行われている「しまだフーズ」の駅弁

人気の駅ナカ・・・、「駅弁」と「惣菜弁当」の見分け方!

●駅弁をゼロから開発していくには、ご苦労もありましたよね?

最初の4品は、開発に4~5カ月近くかけました。
ウチは板前さんがたくさんいるので、衛生面云々より「まずは美味しいものを作ってほしい!」と、いっぱいアイディアを出してもらいました。
それをいかにして、「駅弁」へ落とし込んでいくかという方法で作っていきました。
まずは、よく火を入れたり、冷やしたりすることだけで対応していきました。
最初は検査で18時間しか消費期限が無いものしか作れなかったのですが、段々と知恵を付けていって、今では消費期限が48時間ある駅弁も作れるようになりました。

●今では駅ナカの惣菜屋さんも増えて、弁当を売っているお店もたくさんあります。
惣菜を経験された立場として、「駅弁」と「惣菜弁当」の違いって、何ですか?

1つは、「消費期限」でしょうか。
惣菜弁当って、お店に売ってる惣菜を適当に詰め合わせて、消費期限が大体8時間程度あれば、簡単にできちゃうんです。
でも、「駅弁」には、「○○時間程度の消費期限が無いと売れない」というNREさんからの要請があるので、まずはそこから始まるんです。
もう1つは、「地域性」ですね。
地元の惣菜屋さんであっても、必ず地元食材を使っているかといったら、そうではない。
今は煮物を煮ない、魚はさばかないという若い方が増えていますが、そういう人の“家では作りにくいもの”を作ることで、痒い所に手が届くサービスをしているのが惣菜屋さん(の弁当)なんです。
一方で、「駅弁」には、地域によって色があると思うんです。
神戸だったら「牛肉」、青森だったら「ほたて」といった具合に、地域性が入ってこその「駅弁」ではないかと思います。

bl170223-4(しまだフーズ)

消費期限が明記されたステッカーを貼って、駅弁の完成。

●「しまだフーズ」の駅弁は、「駅弁マーク」も付いていて、分かりやすいですよね?

NREの水戸支店長さん(当時)から、「せっかく駅弁売るなら、駅弁マーク(注)がないと・・・」と仰っていただきました。
茨城に新たな駅弁屋が出来たということで紹介をいただいて、駅弁屋さんの団体である「日本鉄道構内営業中央会」に入ることになりました。

(注)駅弁マーク・・・「日本鉄道構内営業中央会」に入っている駅弁屋さんが付けることが出来る。
現在では、「駅弁」のシンボルマークとして、広く認知されている。

●“中央会”の駅弁屋さんって、明治時代からあるような老舗の弁当屋さんが多いですよね?

みんな創業100年以上の弁当屋さんばかりで、ウチは3~4年といったところなんです。
その分、逆に人に訊くことも恥ずかしくないので、中央会の皆さんには、駅弁作りをはじめとしたいろんなこと(ノウハウ)をドンドン訊くようにしています。
(インタビューは次回に続く)

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いばらきいいものとりあい弁当

「しまだフーズ」の駅弁は、茨城の“地域性”を前面に押し出したものが多いのも特徴です。
その1つが、「いばらきいいものとりあい弁当」(1,100円)。
島田社長曰く、茨城は海の物があり、山の物があり、農業が盛んということもあって、駅弁にしたいテーマが多すぎて、絞るのが大変なくらいとのこと。
そんな思いをギュッと1つの箱に詰め込んだのが、この駅弁です。
掛け紙の左下には、しっかり「駅弁マーク」が輝いていますね!

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いばらきいいものとりあい弁当

【お品書き】・・・カッコ内は産地
つくば鶏照焼き(つくば)
鶏そぼろ(つくば)
錦糸玉子(笠間)
金平牛蒡(奥久慈)
玉子焼き(笠間)
梅干し(大洗)
栗甘露煮(笠間)
椎茸煮(奥久慈)
花蓮根(土浦)
ピーマン素揚げ(神栖)
御飯(奥久慈)

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いばらきいいものとりあい弁当

茨城県内各地域で採れた9つの食材を使った、超ローカルな「鶏めし」です。
食べやすさ、買いやすさなど、様々な条件を勘案して、鶏肉には「つくば鶏」を使っています。
食材的にも常磐線・水戸線・水郡線・大洗鹿島線など、茨城の鉄道沿線をほぼ網羅。
完食すれば、茨城を旅した気分になれるありがたい駅弁でもあります。
関東平野の肥沃な大地に育まれた茨城県。
農業産出額6年連続全国2位の実力を、ぜひ自分自身の舌で感じたいものです。

さあ、次回はいよいよ、この春出たばかり、新作駅弁の登場です。

(取材・文:望月崇史)

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