生きていく、前を向いて…。『サンマとカタール 女川つながる人々』 しゃベルシネマ【第7回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
今月からスタートしました、「しゃベルシネマ」。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介していきます。

4月中旬に発生した熊本地震。
九州地方ではいまなお、不安な日々を送っている方が多くいらっしゃることと思います。
そして東北地方では東日本大震災から5年が経ったいま、まだまだ困難な状況の中、復興への長い道のりを覚悟しながらも必死に頑張っている人が沢山いらっしゃいます。

そこで今回の「しゃベルシネマ」は、宮城県女川町の復興の軌跡をたどったドキュメンタリー映画サンマとカタール 女川つながる人々を掘り起こします。

復興の手を差し伸べたのは、中東の国、カタールだった!

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太平洋沿岸に位置する宮城県牡鹿郡女川町は三陸復興国立公園地域に指定されており、かつては世界有数の漁場として有名な港町。
中でもサンマは本州で一、二を争う水揚げ量を誇っていた。

2011年3月11日、東日本大震災。

女川町は津波による被害で住民の1割近くが犠牲となり、8割以上が住まいを失った。
絶望の淵に立たされた女川の人々。
しかし希望の光は、かつて漁業で栄えた中東の国カタールによってもたらされた。
カタールでは、震災直後に復興支援のための大型基金を設置。
最初の支援として、津波対策を完備した大型冷蔵冷凍施設「マスカー」の建設に乗り出したのだ…。

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映画「サンマとカタール 女川つながる人々」は、女川で復興にかける人々を追いながら、国境を越えた人々の絆、生きる力を描いたドキュメンタリー映画。
2年間にわたって定点カメラで町の風景を撮り続け、刻々と変化していく女川の様子を映し出しています。
同時に、耐え難い悲しみを経験しながらも復興にすべてをかけて奔走する住民たちの姿を通し、人間の持つ底力が生き生きと描かれています。
監督は、「池上彰の学べるニュース」や「しくじり先生 俺みたいになるな!!」(テレビ朝日系)などを手がけるプロデューサーの乾弘明さん。
ナレーションは中井貴一さんが担当しています。

震災の記憶を風化させないために…

先日、日本記者クラブで開催された上映会に足を運んだ際、乾弘明監督にお会いし、お話を伺うことが出来ました。

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八雲ふみね(以下、八雲):震災復興をテーマとする中で、どういった経緯から女川町に焦点を当てることになったんですか?

乾弘明監督(以下、乾):最初の興味の対象は大型冷蔵冷凍施設のマスカーでした。
まだ瓦礫の山が積み重なっている女川の町に、津波対策も万全の巨大なマスカーが完成するということは、女川の水産業、ひいては町の復興の大きなきっかけになる。
しかも支援の手を差し伸べているのが中東のカタール。
これはスゴい話だぞ、と。
そんな思いから撮影を進めるうちに、取材先で出会う若者たちのエネルギーに魅力を感じるようになりました。
そこで若者に焦点を当てた映画をしたい、と。
マスカーが完成してから町がどのように復興していくか。
そして、地元の人々がどう変化していくか。
その過程を追いかけたいと思ったんです。

八雲:映画を拝見すると、定点カメラで撮影された映像から女川の町が刻一刻と変化していく様子が見て取れるのが印象的でした。
定点カメラは何カ所ぐらい設置したのでしょうか?

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乾:6カ所ほどでしょうか。
建設工事の進行具合によって途中で取り外したり、設置場所を微妙に変えたりすることもありましたね。

八雲:女川駅再開から新たに一歩踏み出した「まちびらき」。
今後もしも津波に襲われた場合、被害を最小限にするために土地の高さをかさ上げした更地の上に、新たに町が作られていく様子は、町の人々がある種の“理想郷”を作り上げていくようにも見えました。

乾:そうですね。
津波で何もかも流されてしまったわけですから。
何もない場所に一から作り上げていくというスタイルは、災害からの復興の中でも珍しいケースかも。
そういった意味では、今後の街づくりにおいて女川町がモデルケースになる可能性もあるかもしれませんね。
町の人たちの話を聞いていると「これからも女川で生きていくんだ。俺たちで町を盛り上げていくんだ」という覚悟が伝わってきます。

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八雲:現在だけでなく未来まで視野に入れた町づくり、ということですね。
映画をご覧になった人に、本作をどんな風に受け止めてほしいですか?

乾:まだ復興は終わっていないということです。
むしろ、始まったばかり。
この映画のエンディングが、町にとってはスタートラインなんだと思います。
東日本大震災の記憶を決して風化させてはいけない、ということを届けたいです。

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私は震災以前から宮城県にはご縁があり、女川にも度々訪れていました。
静かな港町といった印象で、町の人々も素朴で穏やか。
女川港のすぐそばにある定食屋さんで食べる海鮮丼、絶品だったなぁ〜。
いまでは、私が実際に降り立った女川の町とは姿が変わってしまったけれど、町の人の心意気は変わらず。
この映画を観て、人々がようやく復興に向けて動き出せる環境が生まれてきたことを実感しました。
東日本大震災で被害に遭われた皆々様が安寧の日々を送れることを改めて祈念し、今回は筆をおくことにします。

生きるエネルギーにあふれた映画『サンマとカタール 女川つながる人々』は、2016年5月7日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開です。

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サンマとカタール 女川つながる人々
監督:乾 弘明
ナレーション:中井 貴一
出演:阿部淳、石森洋悦、阿部由理、阿部美奈、須田善明、他女川町民約 30 名
©2016 Japan-Qatar Partners
公式サイト  http://onagawamovie.com/

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