番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

今日は、主婦をしながら受験勉強に励み、50歳で東京大学に合格。
フランス留学も果たした女性の、グッとストーリーです。

2012年3月、東京大学の合格発表。合格者のほとんどは10代でしたが、その中に一人、50歳の女性がいました。兵庫県姫路市の主婦、安政真弓（やすまさ・まゆみ）さん。

「当時は自宅で小・中学生相手に塾講師をしながら、普通に主婦をやっていました」という真弓さん。
実は18歳のときに京都大学と早稲田大学、19歳と20歳のときに東京大学を受験しましたが、いずれも不合格。結局二浪の形で、早稲田大学に進学した過去がありました。
つまり30年ぶり、3度目の受験で、ついに夢を叶えたのです。

安政さんのfacebookより

真弓さんが再び東大を目指したきっかけは、二つありました。子育て中、ママ友とのトラブルから「自分は、何の価値もない人間じゃないか？」と悩み、軽いうつ病にかかった真弓さん。
このとき、ただ落ち込んでいても時間の無駄、と始めたのが、資格試験を受けることでした。

まずは、以前不合格になり諦めていた「フランス語検定2級」に再挑戦。勉強に集中するうちに、自然と気持ちが落ち着き、真弓さんは35歳で合格を果たします。

「これで『自分にも何かができるんだ！』という自信につながりました」

それから14年後の、2011年…49歳になった真弓さんは、受験生の母になっていました。
次男が東大を受験しましたが、残念ながら不合格に…。そのときふと、自分の受験生時代を思い出した安政さん。20歳で東大に落ち、35歳でフランス語検定に合格。来年は50歳…
「合格・不合格がすべて節目の年だったことに、何か運命を感じました」という真弓さん。

次男の予備校の面談に付き添った際、さりげなく「私も受験してみたいんですが…」と相談すると、返ってきた答えは「いいんじゃないですか」。
志望校が東大とは言いませんでしたが、背中を押され、久しぶりに受験勉強を再開した真弓さん。長いブランクで、受験知識はゼロになっていましたが、自分がどこまでやれるのか試してみようと、6月の末に、30年ぶりの東大再受験を決意します。

親子で東大に再挑戦することになりましたが、「私は文系、息子は理系だったので、ライバルではなく“受験仲間”として励まし合えたのは良かったですね」

安政さんのfacebookより

入試本番まで8ヵ月。真弓さんはまず、合格のためのスケジュール作りから始めました。
このとき役に立ったのが、学生時代から愛用している、ポケットサイズの普通の手帳です。
「手帳は、登山における地図のようなものです。自分が今どの地点にいて、どんなスケジュールで登れば頂上に行けるのかを把握することが、目標達成の第一歩です」

真弓さんは3ヵ月のスパンで「大まかな長期計画」と、1週間のスパンで「具体的な短期計画」の両方を手帳に書き込んでいきました。ポイントは、これからやることは鉛筆、やり終えたことはボールペンで記入すること。
「あまり厳しめに予定を立てると、かえってやる気をなくします。それより、何を達成できたかを日々しっかり記録することが大切なんです」

真弓さんのように、社会人になってから大学を受験する場合、励まし合える同世代の仲間が周りにはいませんが、真弓さんは、様々な分野で頑張っている同世代の人を思い浮かべました。
その一人が、同じ1962年生まれの松田聖子さんでした。

「あの若々しさ、生き方は本当に凄いし、常に何かに挑戦しているバイタリティーには感銘を受けました」という真弓さん。2012年春、真弓さんはみごと東大に合格。

次男は残念ながら不合格でしたが、早稲田大学に合格し、親子そろって大学1年生になりました。
真弓さんは単身上京、東大の寮に住み、教養学部に進むと、1日15時間の猛勉強で、在学中にかねてからの夢だったフランス留学も実現。卒論の審査も通って、今年3月、東大を卒業します。

安政さんのfacebookより

真弓さんからのメッセージです。

「何かを始めるのに、遅すぎるということはありません。挑戦しようかどうか迷っていないで、とにかく始めてみてください。年齢や性別は関係ありません。やりたいことに思い切ってチャレンジしましょう！」

真弓さんは東大合格後、その過程をまとめた『普通の主婦だった私が50歳で東大に合格した 夢をかなえる勉強法』を朝日出版社から出版。一緒に東大を受けた次男もコメントを寄せています。

「母は昔から面白い人だった。東大を受験すると聞いたときも驚かなかった」
「母は自分の時間を大切にする人なので、あまり細かいことも言わず、おかげで自立心が芽生えました」と、真弓さんに感謝しています。

真弓さんの夫は建築士で、結婚してからも、お互いのやりたいことを尊重するという夫婦生活を送ってきたので、受験も、東大に通うことも黙って応援してくれたそうです。
卒業後は一旦、姫路に戻って夫婦で暮らす予定ですが、また新たな目標に挑戦するそうで、「挑戦し、学ぶことで人生は豊かになります」とのことでした。