ティム・バートンが追求する“異形への愛”『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第145回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、2月3日から全国ロードショーとなるティム・バートン監督最新作『ミス・ペレグレンと奇妙なこどもたち』を掘り起こします。

ティム・バートン的原作小説を、ティム・バートンが実写映画化したら…。

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フロリダで生まれ育ったジェイクは、周囲に馴染めない孤独な少年。
彼の唯一の理解者は痴呆気味の祖父のみだったが、謎めいた死を遂げてしまった。
祖父の遺言に従い、ウェールズの小さな島を訪れたジェイクは、森の奥で古びた屋敷を発見。
そこにはミス・ペレグリンと呼ばれる美しく厳格な女性と、奇妙なこどもたちが暮らしていた。

この屋敷にいるこどもたちは、世にも奇妙な特殊能力の持ち主ばかり。
風船のように体が宙に浮かんだり、体内にハチを飼っていたり、後頭部にある大きな口から食事をしたり、体が透明だったり…。
さらには、こどもたちを庇護する立場にあるミス・ペレグリン自身もハヤブサに変身するなど、奇々怪々な雰囲気。
世にも奇妙な能力を持つこどもたちと交流を深めるうちに、ジェイクはあることに気付く。

それは彼らは毎日、1940年の9月3日を繰り返していたのだ。
彼らは何故、永遠に続く1日を送っているのだろうか。
そして、ジェイクがこの「ミス・ペレグリン(はやぶさ)の家」に導かれた理由とは…。

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原作は、ランサム・リグズによる小説「ハヤブサが守る家」。
ニューヨークタイムズ・ベストセラーにも選ばれた摩訶不思議な冒険ストーリーを、著者が集めた本物の写真を挿絵代わりに使用して物語を展開する…というユニークな手法で書かれていることでも有名です。
この原作を紡ぐ50枚の写真にインスパイアされた鬼才ティム・バートン監督が、完全実写化。
お得意のダーク・ファンタジーとして新たな息吹を与えました。

主人公のジェイクを演じるのは、エイサ・バターフィールド。
『ヒューゴの不思議な発明』の時に無垢で可愛らしい少年という印象が強かった彼も、いまや180cmに届く長身のイケメンに成長。
ミス・ペレグリンを演じるのは、『007 カジノ・ロワイヤル』『ダークシャドウ』のエバ・グリーン。
さらに、主人公たちと対立する悪役バロンにはサミュエル・L.ジャクソンが扮し、ティム・バートン監督が描く“キョミかわいい”世界に息づいています。

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近年公開された作品の中でも特に、“ティム・バートンらしさ”が随所に見られる本作。
それは作品が放つ“奇妙な”世界観ももちろんなのですが、私がいちばん強く感じるのは、ティム・バートン監督ならではの“異形への愛”。
本作に登場するこどもたちについて「彼らの能力はスーパーヒーローのように人々を救える能力とは真逆で、むしろ苦悩を抱えているとも言えるもの。そこがとても魅力的だ」と、監督自身がオフィシャルインタビューで語っているように、こどもたちの持つ特異性にのみフォーカスすることで、「“奇妙”とはなにを以て“奇妙”なのか」、引いては「人々が一般的に口にする“普通”って何???」というティム・バートン作品に共通するテーマへとリンクしていくのです。

…とアレコレ言いましたが、楽しい映画であることは間違いなし。
毒っ気と茶目っ気にあふれたダークファンタジーの世界へ、是非。

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ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち
2017年2月3日から全国ロードショー
監督:ティム・バートン
出演:エバ・グリーン、エイサ・バターフィールド、サミュエル・L.ジャクソン、エラ・パーネル、ジュディ・デンチ、テレンス・スタンプ ほか
© 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation.
公式サイト http://www.foxmovies-jp.com/staypeculiar/index.html

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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