「こんなに怖いトランプ大統領の経済政策」森永卓郎【垣花正あなたとハッピー!】

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1/25(水)放送のFM93AM1242ニッポン放送「垣花正とあなたとハッピー」9時のききどころでは森永卓郎さん、先週の土曜日に第45代アメリカ合衆国大統領に就任したトランプ大統領の政策について、日本にはどんな影響が出るのか解りやすく解説しました。

トランプの言うアメリカ人は白人!?

森永)トランプ大統領は「アメリカ製品を買え」「アメリカ人を雇え」と言っていますが、ここに彼の政策が凝縮されているのです。一応、演説ではアメリカ人と言っていたのですが、彼の言うアメリカ人というのは白人なのではないかという気が強くします。
オバマさんの時は有色人種がたくさんいましたが、就任式の時の中継映像を観ると、来ているのは白人ばかり。9割以上は白人です。
有色人種が就任式に来なかったのは、トランプ大統領が持っている差別主義のせいです。昔、アメリカというのはものすごい人種差別をしてきた国でした。私は小学校1年生の時にアメリカに住んでいたのですが、その時にはクラスの半分くらいから日本人だということだけでいじめられました。
それが少しずつ良くなってきて、ついにオバマさんの時に黒人の大統領が誕生するまで、アメリカは進歩したのだと思ったら、それが一気に戻ってしまった。

貿易赤字の大きいドイツがなぜ入らないのか?

森永)そこで、何が問題になるかというと、例えば、就任演説の前の記者会見で、トランプ大統領が言ったのは、「我々の貿易協定は災難だ。中国、日本、メキシコなどに対して数千億ドルの貿易赤字を抱えている」「日本は大量の車を大きな船に乗せてアメリカに輸出して雇用を奪っている」と。
私が注目したのは「中国、日本、メキシコ」と言っているところです。ところが、貿易赤字の大きい国を並べると、この中にドイツが入る。でも、トランプ大統領はあまりドイツと言わない。
それはなぜか。証拠はありませんが、ドイツは白人です。中国、日本、メキシコは全部有色人種なのです。こういう言葉の端々に私は差別的な気持ちがあるのではないかなという気がしてしかたがないのです。

垣花)あんなに反対のデモが起こるところを見ると、経済政策云々ではなくて、根本的なトランプの発言の中に、そういう差別的な意識というものを感じる人が多いからなんでしょうね。

森永)そうですね。それがあるとすると、今後、日本はけこうエゲツない要求を受けていく可能性が極めて高いと私は思う。

垣花)そもそも公平な考え方ではないわけだから、「お前たちは黄色人種なんだから俺たちの言うことを聞け」ということが根本にある可能性があることを危惧しているわけですよね。

アメリカがTPP離脱するということは、日本と1対1の戦いになる

森永)トランプ大統領自身が「アメリカ・ファースト」と言っているわけですから、これをどうするかということが、これから大きな問題です。とりあえず、TPPは永久離脱だ。ただ、同時に日米FTAを結ぶぞと言っているわけです。
これはタイマン勝負に出るということなのです。
「TPPやめてよかったね」ではすまない。こんどは「お前出てこい」ということになる。

垣花)つまり、トランプ対日本ですよね? 1対1の交渉の仕方を森永さんは危惧しているということですね?

森永)TPPは12か国だったので、アメリカとは1対11で戦っていたわけです。それが1対1になるわけです。そうなると日本は弱いです。
阿部総理はさっそく会いに行くと言っているのですが、私はいじめられてきた経験から言うと、いじめっ子への対処の仕方っていうのは、毅然として距離を置く。なるべく会わないようにするということが、身を守るいい方法です。懐に飛び込んでいくとボコボコにやられる可能性が高いのではないかと思うのです。

トランプの交渉と取引は恫喝と強要?!

森永)彼は「ネゴシエーション&ディール」と言っているのですが、交渉と取引。ところがやっていることは恫喝と強要という、ほとんど犯罪に近いようなやり口をする。

垣花)具体的にはどういうところに感じますか、恫喝であり、強要であると。

森永)例えば、今年、ツイッターでトヨタに文句をつけました。トヨタがメキシコにカローラの工場を作るということに対してトランプ大統領は「とんでもない! アメリカに工場を作れ。さもないと高い国境税を課すぞ」と言ったわけです。
これ、実は最初は新聞では高い関税を払えと翻訳して報道していましたが、私は当初から誤訳だと言ってきました。関税というのは「インポートデューティ」とか「タリフ」とかって言うのですが、それはWTOという国際機関で関税を取り決めることになっていて、これは、公平でないとダメなんです。勝手に大統領が関税を上げるなんてことは国際的に許されない。
だから「ボーダータックス」というのは関税ではないのです。1980年代末にアメリカが包括通商法の中にスーパー301条というのを作りました。これは何かというとアメリカの通商代表部が気に入らない輸入規制や非関税障壁に「これ直せ!」と言うわけです。言うことを聞かないと、「じゃあ、お前のところの一番大切にしている自動車に思いっきり関税かけてやるぞ!」というのがスーパー301条なんです。
これがまさに恫喝方式なんです。実際に報復関税とか課徴金などという、これがたぶんトランプ大統領が言っているボーダータックスの正体なんです。日本にとっては自動車とか電化製品とかというのは大切な輸出商品なのです。今後、農産物とかいろいろ言ってくるのですが、「言うこと聞かないと自動車どうなってもいいのか」と、これは凶悪犯がよく使う手口と一緒なんです(笑)。
トランプはずーっとその手法で不動産業をやっている時代からやってきたわけです。

垣花)これは自動車に限らず、なのですね?

トランプ氏日本車攻撃-国内対策に見せしめも- 大統領令の署名に臨むトランプ米大統領=23日、ホワイトハウス(UPI=共同)

トランプ氏日本車攻撃-国内対策に見せしめも-大統領令の署名に臨むトランプ米大統領=23日ホワイトハウス(UPI=共同)

森永)その後、金利が上がってドル高になっていくので、それを防ぐためにまた、言ってくるんですよ。「お前、自動車どうなってもいいのか? 自ら円高誘導しろ!」と。
それに対してどう対処するのか。ここで阿部総理の腕の見せ所というか、踏ん張らないとやられてしまう。今から4年ちょっと前の民主党政権末期の1ドル79円で日本が悲惨な目にあった時と同じことが起こってしまいます。

日本がとるべきは「我慢外交」

森永)まず、向こうに偉い人は行かないこと。例えばですよ、私のような者を派遣してそこがサンドバッグになる。ボコボコに叩かれても、私は叩かれるのは得意なので(笑)。

垣花)向こうからしたら叩くだけ叩いたても全然こたえないから話も進まないし、「おい、話が通らないから変えろよ」と言われても、変えない・・・。

森永)そう(笑)。これからは我慢の外交が始まると思います。そこで大将が出て行っちゃうと不利なので、まずサンドバッグを出す。

垣花)何枚も何枚もサンドバッグを用意して、日本は遅々として話が進まない国だという印象すら与えてもいいわけですね。

森永)ずーと長い目で見れば、トランプ大統領が病気になるかもしれないし、スキャンダルが発覚するかもしれないし…。

垣花)徳川家康的な戦法ですね?

森永)私、サラリーマン、37年やってきましたけれども、人事異動で嫌な上司が来るわけですよ。そこで殴り合いの喧嘩をしても上司に勝てるはずがないわけです。どうするかというと、じっと頭を垂れて風が吹くのを待つのです。そうすると、その上司に事例が降りてご栄転してくれる(笑)。

垣花)まあ、でもそういうことなんですね。「鳴かぬなら、鳴くまでまとうホトトギス」。
とにかく、我慢外交ですね。ここで打つ手を間違えると大変な目にあうということは真剣に考えなくてはいけないですね。

森永)キレてはいけません。我慢です。

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垣花正のあなたとハッピー!
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