日本人はなぜ百選が好きなのか?~こんなにある○○百選!【ひでたけのやじうま好奇心】

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日本人は『○○百選』が大好きです。
海外にも「なんとかベスト100」というのがありますが、日本ほど多岐にわたってはいません。

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その昔は…
100人の歌人の和歌を選んだ「百人一首」。
江戸時代には100種類の豆腐料理の調理方法を解説した「豆腐百珍」(とうふひゃくちん)。戦後は、登山ブームをけん引した名著「日本百名山」(にほんひゃくめいざん)。
和歌に料理、山、と実にバラエティ豊かなベスト100は、今も生活に根差しています。

そして現代。この「百選」が、何がなんだか分からないくらい、やたらにあるのです。
特に多いのは自然環境の分野。中でも「水」です。

そのきっかけとなったのは、環境庁が1985年=昭和60年に選定した全国各地の「名水百選」。
湧き水、河川、地下水など、全国に存在する清らかな水を再発見するとともに、これを広く国民に紹介することを目的として選ばれました。

それから20年以上たった2008年=平成20年、
水環境にもう一度目を向けてほしいと、今度は「平成の名水百選」を選定。両者とも重複はなくて、合わせて200選ということになります。名水といえども「そのまま飲める美味しい水」という意味ではなくて、「地域住民による保全活動」があって、そのまま飲めるものもあれば、飲用には煮沸が必要とされているものもあります。

ただし、名水百選に選ばれている水が日本で百番以内に入る美味しい水、というわけではありません。なぜなら、全国まんべんなく、地域が偏らないように配慮されているからです。

しかし、こうした「水」を扱っているのは環境省だけではありません。
国土交通省は「水の郷百選」。名水と何が違うのか?と言うと…
河川や湖、森林、湧き水、水田、用水路など、ちょっと規模が大きく、「水を活かした地域づくり」をしているという点。応募のあった自治体の中から有識者が選ぶ、という方式で、百選と言いながら、107選となっています。ちなみに東京で選ばれているのは、墨田区。墨田区全体で“防災対策としての雨水の利用”が評価されています。

さらに国土交通省は、「甦る(よみがえる)水百選」も選定。
“甦る水”とは下水道事業で水がきれいになった場所を選んだ、というもの。
ちなみに、東京はここでも墨田区、場所としては隅田川が選ばれていますが、その理由は…戦後、有毒ガスの発生する死の川だったのが、東京都が下水道整備を総力挙げて進めた結果、 水質が大幅に改善。昭和53年には、長い間休止されていた花火大会と早慶レガッタが復活するまでなった…とのこと。
「名水」と聞くと観光で行きたくなりますが、国土交通省の「甦る水」だと“よく甦らせたね”というご褒美の百選と言った意味合いでしょうか。観光とはまた別物です。
他の省庁の水関係の百選ですと…
農林水産省はさすがに農業に関係する水ということで、日本を支えてきた用水路を選ぶ「疏水(そすい)百選」。そのほかにも、「ため池百選」というのもあります。

もしあなたが、本当に旨い名水だけを知りたい、ということでしたら、世界最大の旅行口コミサイト『トリップアドバイザー』が旅人の口コミを集計して、おととし発表した「目にも涼しい!口コミで選ぶ日本の湧水・名水ランキング」TOP10がネット上に載っています。
結局のところ一般の人が参考にするのは、こうしたランキングトップ10ということになるのかもしれません。
ちなみにランキングは“全国からまんべんなく選ばれている”ということはなく…
1位2位が熊本、3位4位が北海道、と思い切り偏っているのが面白い。
(※4カ所とも環境省の名水百選にも入っていますが…)

さて、水だけに限らず、省庁というのは百選が大好きでして…
農林水産省は「ふるさとおにぎり百選」「日本の棚田百選」。
文化庁は「お雑煮100選」「日本のメディア芸術100選」。

これだけあるなら、選ぶのも大変だろうと思ったら、案の定、苦労している百選が…
文化庁の「歴史の道百選」。百選といいつつ、78選。
歴史の道とは、いにしえの人々に用いられた古道がそのまま残っていることが条件。開発が進んで、原形をとどめる道がなかなかなかったというのが実情でしょう。しかし、とても美しい道ばかりです。

かと思えば…お役所の政治的な百選とは違って、あまたある中から本当に百選を選んだ「百選」というのが、趣味の世界や学問の世界で、いろいろと出ています。

いま日本のみならず世界中で大変な人気となっているのが「けん玉」。けん玉は次々と新たな技が生み出されていて、技の数は2万とも3万とも言われています。
そこで、日本けん玉協会が2000年に代表的な技を選んだのが『けん玉の技百選』。
やさしい技から難しい技まで、いろんなバリエーションの技が網羅され、やり方が載った本はけん玉マスターを目指す子供たちのバイブルとなりました。

法学部の学生が必ずや手にするのが「○○判例百選」というシリーズの本。
たとえば「著作権判例百選」や「会社法判例百選」など、各裁判ごとに解説が展開されています。司法試験を志す者は、少なくとも『憲法判例百選』と『刑事訴訟法判例百選』は必ず目を通しているそうです。

「失敗百選」というのもあります。
歴史的事件・事故から、企業の不祥事―たとえばタイタニック号の沈没やチェルノブイリ原子力発電所の爆発、9.11や東日本大震災の津波被害に至るまで、失敗を例にとって学べることを見出すのが目的。

これまで主流だった百選ですが…
ネット時代の今後はもしかすると、10選に代わっていくかもしれません。
ネットで検索するとやたらと多いのが「○○の見どころ10選」「○○が美味しい店10選」「○○が素晴らしい理由 10選」。

百選か、10選か?
選ぶ側も考えを改める時期に来ているのかもしれません。

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1月24日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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