観光列車「みまさかノスタルジー」で行く極上の足元湧出「奥津温泉」!~岡山駅「千屋牛カルビ重」(1,680円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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津山線・因美線(いんびせん)・姫新線(きしんせん)の3線が乗り入れる広い津山駅構内。
その中で国鉄時代から活躍を続ける「キハ47」形気動車が身を休めています。
一時はJRらしい新塗装を身にまとった時期もありましたが、最近は国鉄時代を彷彿とさせるカラーリングになる車両も増加。
特に左側の車両のような「朱色にクリーム色」のツートンカラーは、昭和30~40年代に全国のローカル線で見られたものです。
現在走っている国鉄形気動車の多くは、昭和50年代生まれなのでリバイバル塗装ではありませんが、違和感なく馴染んでいます。

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この懐かしいカラーリングの車両は、4月から運行を始めた観光列車「みまさかノスタルジー」。
岡山~津山間を運行している快速「ことぶき」の2往復を、週末のみこの車両で運行しています。
岡山発は9:42(2号)、13:05(4号)、津山発は11:31(1号)、15:54(3号)。
新幹線からでは、東京6:16発「のぞみ3号」、9:30発「のぞみ21号」から接続。
特に1・2・4号には指定席も連結されており、着席保証もされています。
(画像提供:JR西日本岡山支社)

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車内は国鉄時代が懐かしい青モケットのボックスシートが並びます。
白いカバーが掛けられているので、国鉄というよりも3月のダイヤ改正までJR東海エリアで走っていた国鉄形気動車っぽい雰囲気。
ただ、従来のキハ47には無かった「ミニテーブル」が設けられ、昔の急行列車のような雰囲気を醸し出しています。
実際、津山線はJR最後の昼行急行列車「つやま」が2009年まで走っていた路線でもあります。
(画像提供:JR西日本岡山支社)

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今回のテーマは「みまさかノスタルジー」で行く極上の温泉旅!
温泉アクセスに使えそうな列車では、岡山13:05発の「みまさかノスタルジー4号」が便利そう。
少し遅めのお昼に「極上」の駅弁・・・ということで、今回は岡山駅弁・三好野本店の「千屋牛カルビ重」(1680円)。
もしも、駅弁の売り切れが心配な方は、西日本エリアではウェブから簡単に駅弁の予約が出来ます。(購入2日前まで)
「駅弁図鑑 西日本編」の「とりおき・宅配サービス」を活用すると、ある程度メジャーな駅弁であれば問題なく買えます。

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「千屋牛」のカルビ肉を自家製のたれに漬け込んで香ばしく焼き上げたという「千屋牛カルビ重」。
4月22日の駅弁膝栗毛でも紹介したように「千屋牛」は、岡山・新見が発祥とされる日本最古の蔓牛(つるうし)の血統を受け継ぐ黒毛和種。
一説には、松阪、近江、神戸といった全国の和牛ブランドのルーツともいわれています。
私自身も20~30代は「肉、肉、肉!」という感じでしたが、年齢を重ねると良質な脂の肉でないと胃がもたれやすくなってきました。
この「千屋牛」のカルビ駅弁は見た目こそ肉たっぷりですが、全く胃が疲れない、良質なお肉だと身をもって感じました。

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良質な肉というのは、ワサビがよく合う!
肉の味が良ければ、過剰な調味は要らないんですよね。
付添のねりワサビをちょびっと付けて、肉の脂と一緒にいただくと、体に溶けるように入っていくような気になります。
当然のように「冷めても柔らかい」を実現。
このあたりは肉のポテンシャルの高さと、三好野さんの技のハイブリッドなのでしょう。

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駅弁をボックスのミニテーブルに置くと、気付きそうなのが「センヌキ」の存在。
その昔、急行列車のテーブルには、当たり前のように「センヌキ」が付いていました。
昔は「センヌキ」が必要な瓶ジュースが多かったんでしょうね。
私自身、しばしば使っていた東海道線の急行「東海」や身延線の急行「富士川」の165系電車でよく見ていたもの。
ただ私は、既に王冠のある瓶ジュースが、だいぶ少なくなっていた世代なのが残念・・・。
(画像提供:JR西日本岡山支社)

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一方「みまさかノスタルジー」の運行に合わせて、津山駅のホームに設置されたのが懐かしい瓶コーラの自動販売機。
あの「センヌキ」を楽しんでもらおうというわけですね。
ちなみに「センヌキ&瓶コーラ&観光列車」の先駆けといえば、千葉県内を走る「いすみ鉄道」。
数年前から走らせているキハ52形気動車などで、同じように「センヌキ」を体験できます。
「いすみ鉄道」の沿線には瓶コーラと縁のある渡辺正行さんのご実家があるのも面白いところです。

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津山駅前の道1本挟んだ所にある「津山広域バスターミナル」でもノスタルジーなバスを発見!
津山エリアの路線バスを担う「中鉄北部バス」では、まだ1980年代のバスが活躍していました。
LEDの案内・低床バスが全盛にあって、幕式の行先表示に「岡22」ナンバーなど懐かしい雰囲気。
当たるといいなぁと思っていましたが、この車両は車庫へ回送・・・。
でも、地域に暮らす人の様子がよく分かるので、鉄道と路線バスを乗り継ぐ旅って、すごく楽しいんですよね!

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津山広域バスターミナル15:05発・石越行の路線バスに揺られること1時間あまり。
やって来たのは、岡山県鏡野町の「奥津温泉」。
岡山県の内陸部には「湯郷、湯原、奥津」の3つの温泉郷があり「美作三湯」と呼ばれています。
この日の宿は「奥津温泉」バス停の目の前にある老舗旅館「奥津荘」。
長年行きたいと思っていた宿だったのですが、ようやく今回、宿泊する機会に恵まれました。

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1927(昭和2)年建築、趣ある木造旅館に足を踏み入れれば、そこはモダンな空間。
2004(平成16)年にリニューアルされ、今どきのアメニティを兼ね備えた宿になったそう。
ラウンジで抹茶とお茶菓子のもてなしを受けて、通されたのはツインベッドのある洋室。
和の雰囲気を活かしながら、今風のフローリングの室内が広がるギャップがいいですね。
もちろん館内には、無料Wi-fiが飛んでおり、スマホやPC利用にも対応しています。

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今回、駅弁よりも「極上」なのは間違いなく「温泉」!
奥津荘」に来たら、何はともあれ入りたいのが「鍵湯」です。
「鍵湯」の名は、江戸時代の津山藩初代藩主・森忠政(森蘭丸の弟)に由来します。
忠政はこの温泉を気に入り、湯治場として利用するために「鍵をかけ」他の人たちが利用できないようにしたのだそう・・・。
そこから「鍵湯(かぎゆ)」と呼ばれるようになったというのですが、なぜ「鍵をかけたく」なっちゃったのか???

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それは「足元湧出」の極上の温泉だったからです!
「足元湧出」というのは浴槽の底から温泉が湧くことで、空気に触れず劣化しないピュアなお湯が楽しめる風呂のコト。
しかも「鍵湯」は、宿の横を流れる吉井川の川底に作られていて、今も浴槽の底はごつごつした岩のまま。
ph9.1、溶存物質合計150mg/kgのアルカリ性単純温泉が、毎分247リットル湧出していますが、特筆すべきは「42℃」という湯温!
川底からぷくぷく湧き上がる絶妙な湯加減の温泉に一度身を委ねたのなら、殿様も「鍵」の1つもかけたくなるというものです。

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1階の食事処で夕食をいただきます。
「晴れの国おかやまデスティネーションキャンペーン」の一環で、岡山県内の宿で行われているのが「岡山の地酒 三種呑み比べセット」。
奥津荘」では宿オリジナル・辛口の「鍵湯」と、ご当地鏡野町の炭酸のようなにごり酒「五十鈴」、のみ口のいい「赤磐雄町 純米大吟醸」の3つ。
最近、旅先でいただく酒は、専ら地酒になりました。
地のものをいただきながら地の酒を味わうのが、最も料理にも合うし一番の贅沢!

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翌朝は「鍵湯」のほかにもう一つ川底に作られた風呂「立湯」へ。
吉井川の流れによって造られた岩のくぼみを活かして、立ったまま入浴できる「深い」風呂です。
深い所で120センチほど、「鍵湯」ほどではないですが、時々ぷくぷく~っと湧き上がってくるお湯が感じられます。
絶妙のお湯をぷくぷく湧き出す地球の営みが、きっと元気を与えてくれる筈・・・。
なお「鍵湯」と「立湯」は時間で男女入替制になっており、朝夕の「8時」で入れ替わります。
奥津荘」にはこのほか2つの貸切風呂があり、コチラは空いていれば宿泊客は貸し切ることが出来ます。

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シンプルな朝ごはんながら、お椀のふたを開けた瞬間、立ち上る湯気と味噌の匂いに、食欲をかきたてられます。
私は年間最大50軒くらいしか温泉宿に泊れませんが、私が思うにいい宿って朝も夕も「攻めのご飯」なんです。
おかずが多すぎず、少なすぎず、茶碗に盛る(お櫃に入ってくる)ご飯の量まで「ちょうどいい」くらいで来て、しかも美味い!
一歩間違うと不満の原因にもなりそうな所を恐れず果敢に攻めて、客は満足、宿は無駄を最小限に・・・。
奥津荘」の「攻めのご飯」に胸がキュンキュンでした。

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10時のチェックアウトまでのんびり、1時間ほど「奥津温泉」の小さな温泉街をぶらりして11時半の路線バスで津山へ戻ります。
津山駅~奥津温泉間の路線バス(片道990円)は2~3時間に1本程度になることもあるので、予め「中鉄北部バス」のHPでチェックを・・・。
岡山駅から、レトロな観光列車「みまさかノスタルジー」の旅を楽しみながら津山へ。
バス(列車)待ちの時間は、駅近くの「津山まなびの鉄道館」で”鉄分補給”。
そして極上の足元湧出の温泉で、明日への活力をチャージ出来る、岡山の「鉄道温泉旅」なのです。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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