「津山まなびの鉄道館」へ行ってみた~岡山駅「岡山名物 えびめしとデミカツ丼」(880円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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JR岡山駅・9番のりばで発車を待つのは、津山線の快速「ことぶき」津山行。
キハ47形気動車の2両編成で、車掌さんのいないワンマン運転です。
津山線は岡山県の県庁所在地・岡山市と内陸部の津山市を結ぶ路線で、昔は岡山と鳥取を結ぶ陰陽連絡ルートの1つでした。
現在はその役目を第3セクターの智頭急行線に譲り、津山線は岡山と津山を結ぶのがメインの役割。
「ことぶき」という列車名はめでたい名前ですが、沿線にめでたい名前の駅が多いことが理由で公募で決まったといいます。

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岡山と津山のほぼ中間「福渡(ふくわたり)」という駅の近くで渡るのは「旭川(あさひがわ)」。
今はこの辺りも「岡山市」の一部となっているようです。
「旭川」という川は、中国山地を源に児島湾に注ぐまで全長140キロあまり。
岡山を代表する川の1つで、かつては高瀬舟の航路でもあったそうです。
訪れた日は桜が終わりかけでしたが、見ごろには鉄橋を渡る列車と一緒にカメラに収めたいもの。
(参考:岡山市建部町ホームページ)

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「亀甲(かめのこう)」は、駅舎が「カメの形」をしたユニークな駅。
亀の目は「時計」になっているようです。
駅から200mほどの所に亀に似た大きな岩「亀甲岩」があることが名前の由来とか。
(参考:岡山県美咲町ホームページ)

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岡山のユニークな駅名と車窓を眺めながら、ユニークなご当地グルメをいただいてみるのもよさそう。
今回は、岡山駅弁「三好野本店」の「岡山名物 えびめしとデミカツ丼」(880円)をいただいてみることに。
「えびめし」はカラメルソースとケチャップを合わせたものにスパイスをきかせたソースを使った独特の焼飯。
「デミカツ丼」(ドミカツ丼)は卵とじではなく、デミグラスソースをかけたもの。
歴史ある2つの岡山のご当地グルメを1度に味わえる駅弁として、今年2月に新発売されました。

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【お品書き】
えびめし : えびめし・錦糸玉子
デミカツ丼: 三元豚のロースとんかつ・デミグラスソース・キャベツコンソメ煮・白飯
小松菜とベーコンの炒めもの 、福神漬(漬物)

元々岡山駅には、2010年代初めごろから「えびめし&デミカツ」の組み合わせの駅弁がありました。
当初は「えびめし」の上にデミカツが載った形で、その後は加熱式駅弁となっていました。
今回は2つのご当地グルメを、ちゃんと「セパレート」してリニューアルしたのが特徴です。

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今は岡山のご当地グルメとなっている「えびめし」ですが、そのルーツは東京・渋谷なんだそう。
カレー店のドライカレーのメニューの1つだったものが暖簾分けされ、岡山で独自の進化を遂げたといいます。
一方の「デミカツ丼」は、東京のホテルで修業した人が岡山で80年あまり前に開いたお店が発祥。
その後、洋食の調理経験のある人がラーメン屋さんを開いた際に一緒に提供したことで広まったといいます。
(参考:岡山県観光連盟ホームページ)
実はどちらも少し懐かしい時代の「東京」とゆかりのある、岡山のご当地グルメだったという訳なんですね。

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岡山から快速「ことぶき」で1時間あまりで津山駅に到着。
駅から10分ほど歩いてやってきたのは「津山まなびの鉄道館」。
「晴れの国おかやまデスティネーションキャンペーン」に合わせて、今年4月2日にオープンしたばかり。
岡山地区における”ミニてっぱく”といった感じの場所です。
ただココ、なかなかイイものが見られるんです。

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まずは、入場券(300円)を購入。
入場券が昔懐かしい硬いきっぷ(硬券)のような感じで、パチンと鋏を入れてもらって入ります。
最近、都市部では専ら自動改札、ICカードになってしまいましたし、地方でもスタンプが主流。
その中にあって「硬いきっぷに鋏を入れてもらう経験」が出来るというのは、本当に嬉しいもの。
大人にとっては懐かしく、子供にとっては新鮮な経験かと思います。

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鉄道館に一歩、足を踏み入れると見えてくるのは、国内では貴重な存在となった扇形車庫!
これは、今から80年前の1936年に津山駅に造られた「旧津山扇形機関車庫」。
大正時代に造られた京都の「梅小路蒸気機関車庫」に次ぐ、日本で二番目に大きい機関車庫とも言われています。
その希少性ゆえ、現在は経済産業省の「近代化産業遺産」にも選定。
17両を収容できる車庫で、手前からキハ33、キハ181、キハ58・28と並んで、その奥には機関車が並びます。

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センターにはやっぱり「デゴイチ」!
「旧津山扇形機関車庫」の誕生と同じ1936年生まれなので今年で80歳!
「D51」形蒸気機関車の2号機は、元々、大阪の交通科学博物館に展示されていました。
大阪の博物館を閉館し「京都鉄道博物館」へ移転する過程で、デゴイチは津山へやってくることに・・・。
「2号機」と聞いて「アレ」をチェックしなくちゃと思った方は、相当「鉄分」が濃い方では!?

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やっぱり「ナメクジ」でした。
「D51」形蒸気機関車は、戦前~戦中にかけて1,115両が作られた大所帯。
その中で初期の車両は、ボイラーの上にあるドーム型の部分が長く作られていました。
首都圏などでも見られる「普通のデゴイチ」ですと、このドームは、車体の上部だけにあります。
でも、初期の車両は、車体の真ん中から煙突の直後まで伸びていたことから「ナメクジ」と俗に呼ばれています。

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一方、蒸気機関車の後を継いだのがディーゼル機関車。
中でも「DD51」形ディーゼル機関車は、先日まで北海道~本州を結ぶ寝台特急・急行列車の機関車としても活躍。
この「DD51」も博物館に入ってしまう時代になったという訳ですね。
中国地方でも、山陰を中心に特急列車などをけん引して活躍しました。
画像の「DD51」形1187号機・・・現役時代を私自身もカメラに収めていました。

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今から10年前の2006年2月、山陰本線・出雲市駅で寝台特急「出雲」のけん引機だった時の画像です。
寝台特急「出雲」は2006年3月まで、東京から東海道・山陰本線経由で出雲市まで結んでいました。
山陰本線は城崎温泉~伯耆大山(ほうき・だいせん)間が非電化のため、ディーゼル機関車が必要だったんですね。
廃止1か月ほど前、たまたまB寝台の寝台券が取れたため、お名残乗車をした時のものと記憶しています。
今も走る「サンライズ出雲」は電化された伯備線経由なので「電車」で出雲市まで来ることが出来るわけです。

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「津山まなびの鉄道館」には車両のほか、この地域ならではの展示があります。
懐かしい急行列車の名前や行先を書いた板、「サボ」と呼ばれるものも・・・。
中でも「砂丘」は、岡山から津山を経由して鳥取まで結んでいた急行列車。
現在、岡山から鳥取まで行く列車は、智頭急行線経由の特急「スーパーいなば」に。
津山線内の速達ニーズに応えているのが、冒頭の快速「ことぶき」となっています。

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そんな急行「砂丘」が走っていた因美線(いんびせん・東津山~鳥取間)は、JR西日本エリアで最後まで「タブレット閉塞」を用いていた路線。
「タブレット閉塞」とは同じ線路に2つ以上の列車が走って衝突する事を防ぐために、金属製の円盤(タブレット)を持った列車だけが線路を走る仕組みです。
つまり「タブレット」とは「通行手形」のようなものと考えると分かりやすいかもしれません。
当時の因美線、実際に使われていた「タブレット閉塞」の機械が「津山まなびの鉄道館」には展示されています。
館内ではJRのOBの方がボランティアとして丁寧に説明してくれることもあり、鉄道の仕組みと共に昔のご苦労なども伺えることも・・・。

次回は津山へのアクセスにピッタリな新しい観光列車と、ぜひ足を伸ばしたい温泉の話題も・・・。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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