出家したことを一度も後悔したことはない【瀬戸内寂聴「今日を生きるための言葉」】第155回

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わたしはただの一度も、一瞬も出家したことを後悔したことはないのです。
これはとうてい自分の力ではありません。どんなに好きあい一緒になった夫婦でも、十年もすれば別れたいと一度や二度は思うもので、倦怠期はさけようがないはずです。

なのに一瞬とも後悔せず三十年近くがすぎ、何か起こる度、ああ出家しておきてよかったと思うのは普通ではないでしょう。
これこそ仏の御利益、とわたしは解釈しています。
あるいは、ごほうび、というほうが分かりやすいでしょうか。

瀬戸内寂聴

撮影:斉藤ユーリ


出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫

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