やじうま好奇心

プロ野球だけじゃない!スポーツ界・涙の“戦力外通告”【やじうま好奇心】

次期アメリカ大統領、ドナルド・トランプ氏がホストを務めるアメリカのテレビ番組では、毎回のように彼が、こんな決めゼリフを言い放つそうです。

「You’re fired !(おまえはクビだ!)」

実にイヤ~なセリフですけれども…
ニッポンのほうでも、この時期、毎年のように放送される“クビにまつわるテレビ番組”があります。
それが、『プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男達』。
ここ数年、いつも12/30に放送されていまして、今やすっかり、年末の風物詩となっています。
そこで今日は、プロ野球以外のスポーツにおける「戦力外通告事情」──すなわち「クビ事情」に、いろいろと「クビ」を突っ込んでみました!
すると、意外なことに… ある意味、プロ野球以上にキビしく、世知辛いことが分かったんです!

■サッカー(Jリーグ)

まずは、サッカーのJリーグからいきましょう。
「戦力外通告」とは、フロントが所属選手に対し、「すでにアナタは、戦力構想から外れていますよ」と通告することです。
ひらたくいえば「クビ」ということなんですが…
サッカーのJリーグでは、クビのことを、「戦力外通告」とは言いません。
じゃあ、なんて言うのか?
実は… 「ゼロ円提示」と言うんだそうですよ!

この「ゼロ円」というのは、来シーズンの年俸の額のこと。
つまり、「ゼロ円提示」とは、文字通り、「来シーズンのアナタの年俸は、ゼロですよ!」「タダですよ!」… という意味なんです。
じゃあ、仮に、この「ゼロ円提示」を、選手が受け入れたとしましょう。

「オレは、このクラブチームを、愛しているんです!」
「年俸ゼロでもかまいません!貯金で食いつなぎます!来シーズンも、残してください!」

…コレ、哀しいことに、認められません。
選手が、年俸ゼロ円でクラブに残留することは出来ません!
「必ず」移籍、または現役引退を選択しなければならないのだそうです。

あの“キングカズ”こと三浦知良選手ですら、実に2回に渡って、「ゼロ円提示」を受けています。
一度目は1998年、「ヴェルディ川崎」(※当時/現「東京ヴェルディ1969」)から、ゼロ円提示。
そして二度目は2000年、「京都パープルサンガ」から、またもやゼロ円提示…。
三浦選手はJリーグの初期年俸「約2億円」でしたから「ゼロ円」を提示されたら、普通ならプライドはズタボロでしょう。それでも、そのたびに他のクラブチームに移籍してサッカーを続けているのですから、逆にスゴイ!

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サッカー 2000年11月30日 交渉で「戦力外通告」をうけ報道陣に胸中を語る三浦知良(京都) 写真提供:産経新聞社

…かくもゾッとするネーミングの「ゼロ円提示」。
では、なぜ、このような残酷な(?)名称なのでしょうか?
実はコレ「残酷」なのではなくて、フロントサイドの「温情」なのだそうですよ。

通常の場合、選手が移籍すると、移籍先のクラブから、「移籍金」が、移籍元のクラブに支払われます。
ところが、「ゼロ円提示」の場合は、この「移籍金」が不要になる… という決まりがあるんです。
つまり、「ゼロ円を提示しますが、今後アナタは、どこのクラブチームに行ってもいいですよ」…
「クビにした上に移籍金を貰おうなんてあくどいことは、考えていませんよ」という意味なんです。

■プロボクシング

さてお次は、「プロボクシング」。
スポーツ医学の進歩、あるいはトレーニング法の進歩も手伝いまして、最近では30代、40代の世界チャンピオンというのが、珍しくありません。
たとえば、私の大好きな「フィリピンの英雄」マニー・パッキャオ。
37歳の誕生日直前の11/5にWBO世界ウェルター級王者ジェシー・バルガスと対戦、判定ではありましたが、みごと、チャンピオンの座につきました。

マニー・パッキャオ

2016年11月6日 判定勝ちで復帰戦を飾り、肩からベルトを掛け笑顔のマニー・パッキャオ=ラスベガス(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

で、いまだに意気軒昂、カクシャクとしています。
ジョージ・フォアマンなんかは、45歳のときに、世界ヘビー級チャンピオンの座に君臨していました。

ところが… 日本のボクシング界には、世界に例をみない「鉄の掟」があるんです。
それが… ズバリ、「37歳定年制」!
JBC(日本ボクシングコミッション)のルールによると…
「37歳の誕生日を迎えた選手は、自動的にライセンスを失効する」ことになっています。
(※ただし、日本タイトル以上の王者、新人王戦などトーナメント戦で勝ちあがっている選手を除く。)

どんなに強くて、現役への未練があっても「37歳」になったとたん、強制的に「クビ」です!
ある日とつぜん、「プロ」ではなくなってしまうんです!

とはいえ、「いくらなんでも厳しすぎるだろう」との内外の声を受けまして、今、次第に、条件が緩和されつつあります。
2003年に行われた改正では、日本タイトル以上の王座保持「経験者」(現役王者だけなく元王者も含める)、世界タイトルマッチ「経験者」、「現役世界ランカー(WBAとWBCの15位以内)」には、37歳以上であってもライセンスが認められることになりました。
さらに、去年12月の改正では、「現役の日本ランカー」も、対象となりました。
今後は、世界の趨勢に合わせ、更にルールが緩和されていく… と言われています。

■女子プロレス

お次は、女子プロレスです。
いまでは、たくさんの女子プロレス団体が乱立していますが、1980年代までは、女子プロレスといえば、「全日本女子プロレス」1本カブリでした。
「マッハ文朱」「ビューティペア」「クラッシュギャルズ」などなど、数々のスター選手が、この「全日本女子」から生まれましたが…
この団体の「鉄の掟」が、ズバリ!「25歳定年制」だったんです。

コレは、団体のオーナーでもあるフロントサイドの考えから生まれたルールだそうで…
女子プロレスラーは、いくら強いといっても、うら若き乙女。
もし引退しても、25歳くらいなら、結婚や他の仕事を探すなど、新しい生活が出来るだろう… という「親心」、というのが、理由のひとつ。
でも、それだけではありません。
「世代交代を潤滑におこなうため」という目論見もあったのだそうです。
上がつかえていると、下がスターになれません。
人気の落ちたベテラン選手には、「ポスターの扱いが小さくなる」など、有形無形のプレッシャーが掛けられます。
そして、「そういや私、もうすぐ25歳だな… 」と、無理なく、気付くように持っていく…。
これが、全女という団体が長く業界の頂点に君臨した秘訣と言われているのですが、1990年代に入りまして、このルールがなし崩しになり始めた途端、客足が鈍るようになりました。
やがて全日本女子プロレスは、2005年、倒産の憂き目に遭うことになったのです。

■将棋界

最後に、「盤面のスポーツ」、将棋の世界にスポットを当てましょう。
およそプロと名がつくモノの中で、将棋界ほど厳しい世界はない、とも言われています。

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まず、プロ棋士を志望する場合、日本将棋連盟主宰の「新進棋士奨励会」に入会しなくてはなりません。
これがまぁ、口でいうのはカンタンですが、入会するのがタイヘン!
奨励会に入会する為には、四段以上のプロ棋士から推薦を受けた上に、
入会試験を受けなければなりません。
(※連盟主催のアマチュア大会で好成績を収めている場合のみ、プロ棋士からの推薦が免除されます。)

奨励会を使わないもう一つのプロになる方法が、「プロ編入制度」を利用することですが、
これは、恐ろしく狭い穴でして、戦後3人しかいません。
(※元真剣師の花村元司氏/1944年にプロ入り)
(※瀬川晶司氏/2005年にプロ入り)
(※今泉健司氏/去年プロ入りを果たした史上初の「サラリーマン棋士」)

じゃあ、「奨励会に入ってしまえば必ずプロの道が約束されるのか」といいますと、そうは問屋が卸さない。
奨励会には、実に厳しい「年齢制限」がありまして…細かいことを言うと例外はあるものの、基本的には、

「満21歳の誕生日までに初段に昇格」
「満26歳の誕生日までに四段に昇格」

この条件が満たされなければ、即刻「退会処分」、すなわち「クビ」となるんです!
どの世界をとっても、やはり甘くはないようですね。
いろんな世界の「涙の戦力外通告」事情をご紹介しました!

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12月21日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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