10時のグッとストーリー

「チーム道下」で獲った銀メダル。選手とガイドランナーの42.195キロ【10時のグッとストーリー】

番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

今日は、今年9月に行われたリオデジャネイロ・パラリンピックの視覚障がい者女子マラソンで、銀メダルに輝いた日本人選手と、その目の代わりとなった二人のガイドランナーの、グッとストーリーです。

4年に一度行われる、障がい者スポーツ最大の祭典・パラリンピック。その正式種目の一つに「視覚障がい者マラソン」があります。視覚に障がいを持つランナーが、42.195キロを走りますが、その横には、一緒にロープを持って走る、健常者のランナーがいます。

「あと30mで右に曲がります。右90度!」「ここからはデコボコ道が続きます。足下に注意して!」など、まさに目の代わりとなるだけでなく、時にはペース配分や戦略まで指示する重要な役割。それが「ガイドランナー」と呼ばれる伴走者で、視覚障がい者マラソンには欠かせない存在です。

パラリンピックの視覚障がい者マラソンは、これまで男子だけで行われていましたが、リオから女子も正式種目となりました。今年ついに、長年の夢だったパラリンピック出場を果たしたのが、道下美里(みちした・みさと)選手・39歳。

道下美里選手

女子マラソンで銀メダルを獲得し、声援に応える道下美里選手=2016年9月18日、リオデジャネイロ(共同) 写真提供:共同通信社

道下選手は、中学生のとき角膜の難病を患い、右目を失明。25歳のとき、左目にも発症し、かすかにしか見えない状態になりました。家でふさぎ込む日が続きましたが、そんなときに始めたのが「走ること」でした。
ガイドランナーと一緒に走ったときの爽快感が忘れられず、2008年、30代でフルマラソンに挑戦。6年後の2014年、故郷・山口県で行われた国際大会で、当時の世界記録を樹立。今年、晴れてリオパラリンピック代表に選ばれました。

そんな道下選手をサポートする、ランナーたちの集団があります。その名も「チーム道下」。20代から70代まで、幅広いメンバーがシフトを組んで、道下選手のガイド役を務めています。
その中から、リオでは2人のランナーが伴走者を務めることになりました。前半が、神奈川の女性ランナー・青山由佳(あおやま・ゆか)さん。後半が、福岡の堀内規生(ほりうち・のりたか)さんです。

道下選手によると「青山さんはポーカーフェイスで、リオの暑い気候の中でも冷静沈着に走れる方。堀内さんは、とにかく熱い男で、引っ張っていってくれる、本当に頼れる存在です」

迎えた、リオパラリンピック本番。目指すは「金メダル」…それが3人の合言葉でした。
前半、青山さんは持ち前の落ち着いた走りで、道下選手の体力を消耗しないようリード。20キロ地点で、青山さんは涙を流しながら、堀内さんにロープを渡しました。

道下美里選手

女子マラソン(視覚障害) 力走する道下美里(左)=2016年9月18日、リオデジャネイロ(共同) 写真提供:共同通信社

道下選手は「リオではあのシーンがいちばん印象に残っていますね。3人がレース中、唯一、一緒にいられて、ロープでつながれる場所があの20キロ地点なんです」。

青山さんに涙の理由を聞くと「設定タイムに届かなくて、いいリズムでバトンタッチできなくてゴメン、後半は堀内さんといい走りを見せてね…そんな気持ちでした」

その思いを受け止めた道下選手と堀内さん。ロープを受け取った時点では3位でしたが、堀内さんは2位のブラジルの選手に照準を合わせ、30キロ地点手前のカーブで道下選手に「行くぞ!」と合図すると、一気に突き放しました。

「視覚障がい者マラソンは、テニスのダブルスだと思っています」という堀内さん。
道下選手も、その判断には全幅の信頼を置いています。しかしトップの選手には追いつけず、堀内さんはゴール地点で涙をこぼしました。

道下美里選手

パラリンピックの女子マラソン(視覚障害)でゴールする道下美里(右)。銀メダルを獲得した=2016年9月18日、リオデジャネイロ(共同) 写真提供:共同通信社

「みんなに誤解されましたが、あれは嬉し泣きじゃないんです。3人で金メダルを獲るつもりで走っていたので、もう、悔しさしかなかったですね」

パラリンピック初出場で、銀メダルを獲得した道下選手。視覚障がい者マラソンでは、ガイドランナーが複数いる場合、選手本人しかメダルがもらえない規定になっています。そのことが悔しいという道下選手。
この銀メダルは、3人でつかんだもの…そして普段、練習を手伝ってくれる大勢のガイドランナーも含めて、みんなで獲った銀メダルなのです。

道下選手は言います。「大勢の方のサポートがないと、私は走れません。ならば将来は、私を通じて、人と人との出逢いがつながっていく…そんなランナーになりたいですね」

道下美里選手

パラリンピックの女子マラソン(視覚障害)で銀メダルを獲得し、ガイドと喜びを分かち合う道下美里(中央)=2016年9月18日、リオデジャネイロ(共同) 写真提供:共同通信社

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【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2016年12月24日(土) より

八木亜希子,LOVE&MELODY

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