沼津駅「幕の内弁当」(780円)~『逃げ恥』に出てきた”ムズキュン”駅弁!【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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185系特急「踊り子」、伊豆箱根鉄道・三島二日町~大場間

東海道線の三島と修善寺を結ぶ、伊豆箱根鉄道・駿豆線(すんずせん)にやってきました。
富士山をバックに駆け抜けるグリーンストライプの185系電車は、東京からの特急「踊り子」です。
「踊り子」には、熱海で伊豆急下田行と分かれ、修善寺まで直通する列車もあります。
実は、この”修善寺踊り子”こそ、歴史的には正統派の「踊り子」。
川端康成が旅した大正時代、東海道線は御殿場回りで、今の御殿場線・下土狩(しもとがり)駅が「三島駅」を名乗って駿豆線が発着、伊豆へのメインルートを形成していたんです。
「伊豆の踊子」の舞台が「天城」なのは、当時の鉄道事情というものもあるんですね。

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修善寺温泉・独鈷の湯

駿豆線の終点・修善寺は、中伊豆を代表する湯の町。
修善寺温泉のシンボルといえば、河原の温泉(足湯)「独鈷(とっこ)の湯」です。
伊豆箱根鉄道で修善寺へ・・・といえば、今季話題のドラマ”逃げ恥”こと「逃げるは恥だが役に立つ」の6話!
しかも、この放送回では「駅弁」も登場していました!
ドラマを形容するキーワードに「ムズキュン」という言葉が遣われていますが、実はドラマで登場した駅弁も、なかなかの”ムズキュン駅弁”なのです。

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幕の内弁当

ムズキュンポイント①「掛け紙ととじ紐」

登場していたのは、沼津(三島)駅弁「桃中軒(とうちゅうけん)」の「幕の内弁当」(780円)。
昔ながらの掛け紙に、大きな富士山と千本松原が描かれて「沼津らしさ」を強調。
その掛け紙に刷られた”ゆづりあい 旅を楽しく 明るい車内”の文言が旅情を誘います。
特に「ゆづりあい」の「づ」が、微妙にレトロで”ムズキュン”!
さらに、とじ紐を解こうとすると「桃中軒だけに桃色!」と気付いて、ますます”キュン!”とします。

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幕の内弁当

ムズキュンポイント②「経木の折詰」

掛け紙を外した瞬間、経木の折詰が現れました。
同時に漂う、木と白いご飯の香りが混じった匂いが、今すぐ食べたい気持ちと匂いを堪能したい気持ちがせめぎ合って、最強の”ムズキュン”!
加えて、木がご飯の水分を程よく吸ってくれるので、経木の折詰はふたが反り返るんです。
この水を吸ったふたの「曲線美」が、ガッキーに勝るとも劣らないくらい美しい!!
桃中軒の方も「この経木の折詰だけは変えない!」と仰って下さって、一層”キュンキュン”!

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【お品書き】

ご飯(国産米使用)
梅干
あしたか牛のうま煮
筍のうま煮
鯖の塩焼き
ホキフライ
玉子焼
蒲鉾
桜漬
割干大根漬
わさび漬け

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ムズキュンポイント③「豊富なおかずと貼り付く1粒1粒のご飯」

鯖の塩焼き、蒲鉾、玉子焼きの「三種の神器」が入った正統派の幕の内。
これに牛肉煮、鶏の唐揚げ、ホキフライまで入って「780円」なのです!
特に「桃中軒」の駅弁では人気の高いの地元ブランド「あしたか牛」が、幕の内でも味わえるのは嬉しいところで、これが実に白いご飯と合います。
しかも経木の折詰ですので、白いご飯はしっかり底にくっ付いてくれる!
これを1粒1粒剥がしていくのが、じれったいんだけど何だか愛おしくて、ホントに”ムズキュン”なのです。
ちなみにオンエア時は「丸い容器」のわさび漬けでしたが、11/18から「四角い容器」のわさび漬けに変わりました。
よりピリッとバージョンアップ、歴史ある駅弁でも「進化を止めない」のがロングセラー駅弁の法則・・・ココでもしっかり息づいていました。

桃中軒の方も、自社の駅弁がドラマに登場したのは、TV画面で知ったといいます。
”いずっぱこ(伊豆箱根鉄道の地元における愛称)”が出るから見ておこうとチャンネルを合わせておいたら「アレっ!ウチの駅弁が出てる!!」という感じだったそう。
ロケではスタッフの方がこの「幕の内弁当」と「鯛めし」を予約をして買っていったそう。
「ドラマで使われる認識も無くて、出てきてビックリした」と桃中軒の方も驚いていました。
前回ご紹介の「君の名は。」しかり、「逃げ恥」しかり、『ヒット作に駅弁あり!』なのです。

bl161219-7(伊豆箱根鉄道1300系)

伊豆箱根鉄道1300系

今、伊豆箱根鉄道で話題の車両といえば、12/10から運行を開始した「イエローパラダイストレイン」。
西武鉄道から譲渡された車両が、西武線でデビューした昭和54(1979)年当時のカラーリングになっているのです。
西武線沿線在住の鉄道好きがこの編成に当たったら、たまらないかも!?

90年前の人たちは「伊豆の踊子」に、今の人たちは「逃げ恥」に。
”ムズキュン”な気持ちは、時代が変わっても基本は変わらないもの。
桃中軒の「幕の内弁当」も、時代が変わっても基本は変わらないもの。
”ムズキュン駅弁”片手に、冬もちょっぴり温かい伊豆の旅を楽しんでみてはいかがでしょうか?
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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