剣が人生を切り開く!『こころに剣士を』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第123回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、『こころに剣士を』を掘り起こします。

元フェンシング選手と子どもたちが希望を取り戻すまでを描いた感動ドラマ

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スポーツをテーマにした名作映画は数多くありますが、フェンシングがテーマとなっている作品は珍しいのではないでしょうか。
フェンシングの元スター選手と子どもたちの絆を、実話を元に描いたヒューマンドラマ『こころに剣士を』は、フィンランド、エストニア、ドイツの合作映画。
今年はじめに行われた第73回ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞にノミネート。
第88回アカデミー賞外国語映画賞のフィンランド代表作にも選出され、世界各国で高い評価を受けている感動作です。

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1950年代初頭、ソ連占領下のエストニア。
元フェンシング選手のエンデルはソ連の秘密警察から逃れるため、田舎町のハープサルで小学校教師としてひっそりと暮らしていた。
スターリンの圧政によって鬱屈とした生活を強いられている子どもたちに、エンデルは課外授業としてフェンシングを教えることに。
実のところ子どもが苦手なエンデルだったが、学ぶ喜びに満ちた子どもたちの表情に、次第に心を動かされていく。

そんなある日、子どもたちはレニングラードで開催される全国大会に出場したいとエンデルに訴える。
一度は反対したエンデルだったが、秘密警察に見つかることを恐れながらも子どもたちの夢をかなえるべく、大会への出場を決意する…。

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メガホンを取ったのは、『ヤコブの手紙』のクラウス・ハロ監督。
彼が手がけた長編映画5本のうち本作を含む4本がアカデミー賞外国語映画賞のフィンランド代表に選ばれるなど、名実ともにフィンランドを代表する映画監督です。
主演はエストニアでは知らぬ者はいないスター俳優、マルト・アヴァンディ。
子どもたちとの交流を通じて、人間不信に陥った男が人を愛し信じる心を取り戻す過程を繊細に演じています。

さらに注目なのは、オーディションで選ばれた子役たちの生き生きとした演技。
個性豊かで情感あふれる演技は必見に値します。
またエストニア随一の演技派俳優レンビット・ウルフサクの説得力ある演技で、物語に深みを与えています。

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ヨーロッパ中世の騎士道の時代に「身を守る」「名誉を守る」ことを目的に発展した、フェンシング。
まっすぐに相手と対峙し、必要とあらば相手に立ち向かっていくこのスポーツは、戦争によって父親を奪われ、母親が働きに出てしまっために放ったらかしにされていた子どもたちにとって、人生を切り開く希望の一筋となりました。

いつの世も、戦争の犠牲になるのは子どもたち。
同時に、未来を信じる勇気をくれるのもまた子どもたちであることを、本作は教えてくれています。

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こころに剣士を
2016年12月24日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
監督:クラウス・ハロ
出演:マルト・アヴァンディ、ウルスラ・ラタセップ、レンビット・ウルフサク、リーサ・コッペル、ヨーナス・コッフ ほか
©2015 MAKING MOVIES/KICK FILM GmbH/ALLFILM
公式サイト http://kokoronikenshi.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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