吉野口駅「柿の葉寿し」(980円)~今が旬!吉野に息づく「鯖文化」【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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bl161212-1(和歌山線105系)

和歌山線105系電車

JR和歌山線・吉野口(よしのぐち)駅にやって来ました。
和歌山線の主役は、国鉄末期に登場した2両編成の「105系」電車。
日中は毎時1本、和歌山線~桜井線を直通する奈良発着のワンマン列車が運行されています。
県庁所在地・奈良から吉野口までは1時間あまり、和歌山からは2時間弱。
まさに「のどかなローカル線」といった雰囲気です。

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吉野口駅前

吉野口駅があるのは、奈良県の御所市(ごせし)。
昔からの木造駅舎が健在で、訪れただけで懐かしい雰囲気がします。
この駅は、かつて吉野杉や吉野檜などの木材の集散地として栄えました。
今も駅周辺には木材関係とみられる工場があり、その名残を伝えています。
決して訪れる人は、多くない駅なんですが・・・。

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柳屋

なんと!吉野口には、駅弁屋さんがあるのです。
吉野口駅で明治44(1911)年から駅弁を手がけるのは「柳屋」。
しかも日本鉄道構内営業中央会加盟で、おなじみの「駅弁マーク」が付けられる駅弁屋さんです。
実は奈良県で「駅弁マーク入り」の駅弁が販売されるのはココだけ!
毎時1本の普通列車しか来ないのに、なぜ駅弁屋さんが頑張れるのかといいますと・・・?

bl161212-4(柿の葉寿し)

柿の葉寿し

押しも押されもせぬ看板駅弁「柿の葉寿し」(980円)があるからです。
吉野口駅だけでなく、大阪の天王寺駅や百貨店、東京駅などでも販売。
首都圏でも新幹線などに乗る前、買い求めたことがある人は多いと思います。
あの駅弁マーク入りの「柿の葉寿し」は、奈良・吉野の小さな駅前で作られているんです。
ただ、競合他社も多い商品ゆえ「柳屋」の営業努力も大きいことは想像に難くありません。

bl161212-5(柿の葉寿し)

柿の葉寿し

「柿の葉寿し」は何といっても独特の風味が命。
このために、押寿しとして四隅からいい塩梅で力がかかるゴム止めの容器を使っています。
掛け紙は、大和の娘が柿の葉を採っている様子をイメージした切り絵風のデザイン。
どこか懐かしさを憶える、30年以上変わらない伝統の包装です。
鯖8個入と鯖とサーモンのミックス8個入がありますが、やはりココはオーソドックスな鯖を!

bl161212-6(柿の葉寿し)

柿の葉寿し

お店の方曰く、柿の葉寿しには「まったり系」と「塩辛い系」があるのだそう。
柳屋の「柿の葉寿し」は、「まったり系」のファンがよく買っていくといいます。
確かに柿の葉を剥いで風味を愉しみながら口に頬張ると、寿司なのに不思議と口の中がトロ~ン・・・。
国産のマサバは勿論、主に滋賀県産のコシヒカリが使われた米の甘みまでも引き出されている感じ。
1個食べだしたらもうダメ、完食するまで手が止まらない「柿の葉寿し」です。

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魚富商店

お店の方に「普段から柿の葉寿しはよく食べるんですか?」と訊いてみますと、この辺りは「鯖文化だから、鯖だけでもよく食べるよ」とのお答えが。
吉野では「きずし」と呼んで、お遣い物にすることもあるといいます。
柳屋の方がお店を飛び出して、吉野口駅前の魚屋さん「魚富商店」のご主人に声をかけて下さいました。
「きずし、ある?見せてやって!」
何だか鶴瓶さんの「家族に乾杯」みたいな展開にちょっと嬉しくなっちゃいました。

bl161212-8(きずし)

きずし

ご主人曰く「いわゆる〆サバとはちょっと違う」という「きずし」。
使用するのは、国産の「マサバ」以外ダメなんだそう。
国産の多くはゴマサバで、ご主人のお目にかなうような「マサバ」は100匹中3匹くらいしか獲れないとか。
また輸入のマサバでも、国産とはエラやヒレ等の位置が微妙に違い、味わいも違うといいます。
コチラでは大阪の市場へマサバを仕入れに行って、手作りで作っているそう。

bl161212-9(きずし)

きずし

目の前で手際よく切り身にしていただいて「きずし」の出来上がり。
〆さばよりも〆方あまめで、表面から少しの部分まで白く変わったくらいでいただくのがイイそう。
早速いただくと、サバの脂で頭がトロけそう。
やはり秋~冬のサバが旬で、この時期のサバを使った「きずし」が最高なんだとか。
思わず「この”きずし”があるなら後醍醐天皇みたいに吉野に流されたい!」と思ってしまった鯖好きの私でした。

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吉野口駅

この吉野口駅はJR和歌山線と近鉄吉野線との共同使用駅。
大阪阿部野橋から吉野口までは近鉄特急で50分ですので、このエリアも大阪との結びつきのほうが強いんでしょうね。
「柳屋」の吉野口駅ホームの売店も、近鉄の大阪方面行とJRの和歌山方面行の列車が停まる2・3番線にあります。
昔も今も吉野の玄関口で育まれる鯖文化、そして駅弁文化。
旬の今こそ頬張りたい、駅弁マーク入りの「柿の葉寿し」です。

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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