没後25年にして初の映画化『マイルス・デイヴィス空白の5年間』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第114回】

By -  公開:  更新:

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、『マイルス・デイヴィス 空白の5年間』を掘り起こします。

いま明かされる、天才の狂気と真実

01(w680)

ジャズ界にとどまらず、すべてのミュージシャンのカリスマとして語り継がれるトランペッター、マイルス・デイヴィス。
マイルスの没後25年、生誕90周年にあたる今年、彼をテーマにした初めての映画が公開となります。

『マイルス・デイヴィス 空白の5年間』は1970年代の5年間、マイルスがミュージックシーンから完全に姿を消してしまった時期にフォーカス。
謎の活動休止からインスパイアされた幻のテープ争奪戦を通じ、史実とフィクションを織り交ぜて音楽家マイルス・デイヴィスの実像に迫った野心作です。

02(w680)

慢性の腰痛に悩まされ、ドラッグと鎮痛剤の影響から自宅で一人すさんだ生活を送る、マイルス・デイヴィス。
彼の元に、音楽レポーターのデイヴ・ブレイデンが強引に押しかけて来た。
スクープを狙うデイヴはあの手この手を使って、マイルスの気を引こうとする。

そんな中、悪徳音楽プロデューサーがマイルスの最新曲のマスターテープを盗んだことが発覚。
二人はテープを取り戻すべく、思わぬ追走劇に巻き込まれる…。

03(w680)

監督・主演・脚本・製作を務めたのは、演技派俳優として知られる名優ドン・チードル。
トランペットの特訓を重ね、マイルスのルックス、キャラクター、仕草から話し方まで完全コピー。
容姿だけでなくその魂まで、スクリーンに焼き付けています。

一方、マイルスの“相方”とも呼べるデイヴを演じるのは、ユアン・マクレガー。
ライヴシーンではマイルスとの共演経験もあるハービー・ハンコック、ウェイン・ショーターなど一流ミュージシャンたちが出演。
音楽通も魅了する圧巻のライヴシーンを再現しています。

04(w680)

面白いのは、マイルス・デイヴィスへのインタビュー…という形式で構成されているところ。
冒頭で、マイルス・デイヴィスはインタビュアーに対してこう言い放ちます。
「俺を語るのに、チンケな言葉を使うなよ。」
この言葉に呼応するかのように、物語は思いもよらぬ方向へ…。

コメディ映画のようなテンポの良さに心地良さを覚えれば、バディムービーのような爽快感もあり。
ガンアクションで大暴れしたかと思えば、今度はカーチェイスが展開していく…といった具合。

下手をすると観客が置いてきぼりになりそうなほどの破天荒さにもかかわらず、これらのテイストとは異なる様々なシークエンスをしっかりとつないでいるのは他でもない、マイルス・デイヴィスが奏でるトランペットの音色。
そこには“帝王”と呼ばれた天才ミュージシャンの孤独と狂気、そして何よりもマイルスの魅力が凝縮されています。

マイルス・デイヴィスのスピリットをいまに伝える斬新な映像世界は、音楽ファンならずとも必見の一作です。

05

マイルス・デイヴィス 空白の5年間
2016年12月23日からTOHOシネマズシャンテほか全国順次ロードショー
監督・脚本・製作:ドン・チードル
出演:ユアン・マクレガー、エマヤツィ・コーリナルディ、
音楽:ロバート・グラスパー
公式サイト http://Miles-Ahead.jp

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

Page top