沼津駅「沼津香まだい寿司」(1,050円)~湘南電車の面影を感じる季節限定駅弁【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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E233系沼津行

E233系沼津行

朝夕を中心に東京でも見かける東海道線の普通列車・沼津行。
この列車こそ、日本の鉄道史に名を残す「湘南電車」の系譜を継ぐ列車です。
「湘南電車」は昭和25(1950)年、オレンジと緑の「湘南色」をまとった電車によって「東京~沼津間」で運行を開始。
当時100キロ以上走る「電車」は画期的で、このために作られた「80系」は、新幹線に続く日本の長距離電車の基盤を築いた車両とも云われます。
東京で「沼津行」を見かけたら『日本の長距離電車はココから始まったんだ!』というレジェンドを見つめる眼差しを送っていただきたいものです。

沼津香まだい寿司

沼津香まだい寿司

「沼津」という行先を見ると、口の中が「魚」になってきますよね!
でも、沼津へ行っても沼津港まで足を伸ばすまでの時間は無い・・・。
そんな貴方のために、沼津の魚が「駅弁」になってやってくれています。
明治24(1891)年創業、沼津駅弁「桃中軒」が手がける「沼津香まだい寿司」(1,050円)。
毎年10月から翌年5月までの期間限定駅弁です。

沼津香まだい寿司

沼津香まだい寿司

東海道沿線に鯛めし駅弁は数多くあれど、真鯛を「寿司」で味わえるのは珍しい!
鮮度にこだわるために、期間限定というのもプレミア感がありますよね。
しかも「昆布〆」と「炙り」の2種類の鯛が楽しめます。
ほのかに柑橘系の香りが漂うのは、静岡産のダイダイを入れた特製酢で軽く〆ているため。
特に「炙り」は鯛そのものの旨味と焦げ目の苦み、甘酸っぱさのハーモニーがヤミツキになります。

すりおろし山葵

すりおろし山葵

これに程よいピリ辛感を加えてくれるのは、天城産の生わさび。
おろし金も付いていて、自分で擦り下ろしていただきます。
以前紹介した「港あじ鮨」にも取り入れられている「桃中軒」の十八番ですね。
沼津からは夕方18:08(宇都宮行)、19:04(小金井行)、20:35(宇都宮行)の3本が東京直通。
始発駅でぜひ駅弁とグリーン車の座席を確保して、山葵スリスリしちゃいましょう。

E231系

湯河原駅付近を走るE231系

高校時代、私は夏休みや冬休みに静岡から東京まで予備校の講習会へ、しばしば東海道線の普通列車で通っていました。
当時は沼津発着がほぼ毎時1本、朝夕は静岡発着も多くあり、特に夕方は平塚や国府津で後ろの編成を切り離したり、沢山あった寝台特急の通過待ちがあって停車時間が長かったものです。
通過していく「あさかぜ1号」のシャンデリア輝く食堂車や「富士」「はやぶさ」のゆったりしたロビーカーを眺めては「自分で稼ぐようになったら乗りたい!」と思って励みにしたもの。
その夢が叶う前に寝台特急はほとんど姿を消し、今は東京~静岡間の普通列車もなくなりました。
でも、やっぱり湘南色で東海道を上り下りする”グリーン車付の普通列車”は青春の1ページ。
「湘南電車」の面影と共に”走る鉄道文化遺産”としていつまでも乗り続けたい「東京~沼津間」の普通列車です。

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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