イーサン・ホークの歌声に鳥肌!『ブルーに生まれついて』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第103回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回の「しゃベルシネマ」は、チェット・ベイカーの半生を描いた伝記映画『ブルーに生まれついて』を掘り起こします。

伝説のジャズ・ミュージシャン、その波乱の人生に迫る。

ブルーに生まれついて

ドキュメンタリー、劇映画を問わず、今年はミュージシャンにフューチャーした映画が目につきます。
ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK – The Touring Years』しかり『ソング・オブ・ラホール』や『シング・ストリート 未来へのうた』など、どれも秀作ばかり。
そんな中、これまた秀逸な音楽映画が誕生しました。

1950年代のジャズ界で、トランペット奏者でボーカリストとして活躍したチェット・ベイカーの転落と再生を描いた伝記ドラマ『ブルーに生まれついて』です。

1950年代、黒人アーティストが主流のモダン・ジャズ界へと飛び込んだ、白人のトランペッターでボーカリストのチェット・ベイカー。
ソフトな歌声と甘いマスクで多くのファンを熱狂させた彼だったが、ドラッグに溺れて破滅的な生活を送るように。どん底まで落ち込んだ彼に一筋の光を与えたのは、彼の半生を描いた映画で共演した女優、ジェーンの存在だった。

彼女の献身的な愛に支えられドラッグの誘惑を断ち切った彼は、再起を図ろうとするが…。

ブルーに生まれついて

メガホンを取るのは、プロデューサーとしても活躍するロバート・バドロー監督。
短編映画「The Deaths of Chet Baker」(日本未公開)でチェットの死を描いたバドロー監督が、再び彼の人物像に迫ります。

主演は『6才のボクが、大人になるまで。』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、いまノリにノッっているイーサン・ホーク。
6ヶ月に及ぶトランペットの集中トレーニングを受けて本作の撮影に臨み、劇中では歌も披露。
哀愁を帯びた歌声は観る者の心に沁み、特に「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を切々と歌い上げるシーンは映画史に残る名シーンと言っても過言ではないでしょう。

チェット・ベイカーが乗り移ったかのようなイーサン・ホークの演技は、早くも批評家の間で「今年度のオスカー候補」との呼び声が上がっています。

ブルーに生まれついて

魅力的なのは、なんと言っても珠玉の名曲たち。
前述の「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」をはじめ、「レッツ・ゲット・ロスト」「虹の彼方に」、そして「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」。
これら代表曲がチェット・ベイカーの人生に寄り添うように構成されていて、彼の心情を切なくも痛々しく映し出していきます。

伝記映画…と言っても、その成功から凋落までをタイムラインに沿って追いかけているのではなく、チェット・ベイカーがミュージシャンとしてもっとも辛かった時期を掘り下げることで、彼が自分自身の音楽を追求した姿を濃密に描き出しているのが、本作の面白いところ。

映画製作者たちのチェット・ベイカーへの愛とリスペクトが伝わってきて、ジャズ映画としても出色の出来となっています。

ブルーに生まれついて

ブルーに生まれついて
2016年11月26日からBunkamuraル・シネマ、角川シネマ新宿ほか全国ロードショー
監督:ロバート・バドロー
出演:イーサン・ホーク、カルメン・イジョゴ、カラム・キース・レニー ほか
© 2015 BTB Blue Productions Ltd and BTBB Productions SPV Limited. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト http://borntobeblue.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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