深まる秋に余韻に浸れる映画を…『ジュリエッタ』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第98回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回の「しゃベルシネマ」は、『ジュリエッタ』を掘り起こします。

巨匠ペドロ・アルモドバル、原点回帰にして最高傑作

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そのキャリアを重ねるごとに円熟味が増し、世界的な巨匠としての地位を揺るぎないものとしているスペインを代表する映画監督、ペドロ・アルモドバル。
“女性賛歌3部作”と呼ばれている自身の代表作『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール<帰郷>』にも通じるエモーショナルなヒューマンドラマ、それが最新作の『ジュリエッタ』です。

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スペインのマドリード。
一人で暮らしているジュリエッタは、ある日、偶然再会した友人から「あなたの娘を見かけた」と告げられ、衝撃を受ける。
ジュリエッタには一人娘のアンティアがいるが、彼女は12年前、理由も言わずに突然姿を消してしまったのだ。
それ以来、一度も娘に会っていないジュリエッタは、愛する娘に会いたいという母親としての激しい思いに駆られる。
そして封印していた過去と向き合い、居場所すら分からない娘に宛てて手紙を書き始める…。

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これまでにもペネロペ・クルスやカルメン・マウラといった“スペインの宝石”を見出してきた、アルモドバル監督。
カナダのノーベル賞作家アリス・マンローの小説を原作に、孤独な女性が母親として、娘、そして自分と向き合う姿を描いている本作を映像化するにあたり、アルモドバル監督は主人公ジュリエッタ役に二人の女優を起用。
“現在”のジュリエッタを演じるのは、スペインのベテラン女優、エマ・スアレス。
そして“過去”のジュリエッタに抜擢されたのは、日本でも放送されたTVシリーズ「情熱シーラ」で脚光を浴びた新進女優、アドリアーナ・ウガルテ。

奔放な若い頃、そして悲嘆に沈みがちな現在の姿を、各々の持ち味を発揮して、“二人ひと役”で演じ分けているのが印象的。
特に二人の女優がシーンごとに入れ替わる描写がとても自然で美しく、監督の手腕が光っています。

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本作は、2016年カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、巨匠アルモドバル監督の原点回帰にして 、最高傑作との呼び声が高い作品。
これまでにも女性の生きざまを艶かしく描いてきたアルモドバル監督は、人生の豊かさや複雑さ、人間の愛おしさを描かせたら当代随一。

鮮やかな色彩とともに、母娘の中に潜む深い哀しみを描き出した本作は、深まる秋にじっくりと堪能していただきたい一作です。

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ジュリエッタ
2016年11月5日から新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:エマ・スアレス、アドリアーナ・ウガルテ、ダニエル・グラオ、インマ・クエスタ ほか
©El Deseo. Photo by Manolo Pavón.
公式サイト http://julieta.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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