猟奇的かつアーティスティックな衝撃作『ミュージアム』 【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第93回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回の「しゃベルシネマ」でご紹介する映画は、『ミュージアム』。
第87回ではジャパンプレミアの熱狂をお届けしましたが、今回は本篇の見どころを掘り起こします。

ギリギリ限界に踏み込んだ超問題作、ついに解禁!

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自らを「アーティスト」と名乗り、次々と猟奇的な殺人を繰り返していく、カエル男。
カエルのマスクを被ったその不気味な男は、ターゲットを定めると独自の調査能力でじっくり観察し、相手がいちばん嫌がる方法で殺人を実行する。

そんな稀代の犯罪者・カエル男を追うのは、捜査一筋、仕事人間の沢村久志刑事。
しかも連続殺人の最後のターゲットは、沢村刑事の妻だった。

妻と息子をカエル男に奪われ、身も心も追い詰められていく沢村刑事。
カエル男は何故、沢村の妻をターゲットに決めたのか…。
驚愕の真実が明らかとなっていく…。

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巴亮介のサイコスリラー漫画「ミュージアム」の実写映画化が発表された時、「なんて無謀な…」という驚きを持った原作ファンもいたことでしょう。
その独特な人間心理描写とあまりにも過激なストーリー展開から超問題作と呼ばれている原作だけに、“怖いモノ見たさ”で映画の完成を心待ちにしていた方も多いではないでしょうか。

カエル男を追う主人公・沢村久志を演じるのは、小栗旬。
犯人の狂気に触れるうちに、自らに内在する狂気に目覚めていく難しい役どころを体当たりで演じています。
一方、先日のジャパンプレミアで発表されたカエル男の正体は、なんと妻夫木聡。
これまでナイーブな役どころが多かった印象がある彼ですが、本作ではトリッキーな犯罪者役を怪演。
小栗旬と妻夫木聡が繰り広げる心理戦は、鳥肌が立つほどゾクゾクします。

ほか、沢村の妻・遥に尾野真千子、新米刑事・西野純一に野村周平、沢村の亡き父に大森南朋、捜査一課警部補・関端浩三に松重豊らがガッチリ脇を固めています。

メガホンを取ったのは、『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督。
その卓越した美意識は本作でも冴え渡り、極上のノンストップ・スリラーエンターテイメント作品となりました。

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本作は日本での公開に先駆けて、海外の映画祭に出品されています。
上映された釜山国際映画祭(韓国)でもシッチェス・カタロニア国際映画祭(スペイン)でも、多くのファンのハートを鷲掴みにし、好評を博しました。

とりわけシッチェスのファンタスティック部門は、「生ぬるい映画なんて観たくない!」という映画ファンの心の叫びが聞こえてきそうなほど、ホラーやスリラー作品の上映ラインナップが秀逸。
そんな「血と暴力に飢えたファン(?!)を虜にしてしまった」と聞けば、本作がいかにスリリングでグロテスクな映画か、想像がつくことでしょう。

特に、残忍なシーンほど“寸止め”で切り返していくカメラワークには創造力をかき立てられて、さらに恐怖が倍増です。

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エンターテインメント作品でありながら、ジャンルムービーとしても精度を極めている本作。
かなりパンチが効いてますので、覚悟を決めて映画館へ…。

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ミュージアム
2016年11月12日から丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:大友啓史
原作:巴亮介『ミュージアム』(講談社「ヤングマガジン」刊)
出演:小栗旬、尾野真千子、野村周平、丸山智己、田畑智子、市川実日子、伊武雅刀、大森南朋、松重豊、カエル男 ほか
©巴亮介/講談社 ©2016「ミュージアム」製作委員会
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/museum/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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