「絶景!土讃線秘境トロッコ」の旅(その1・秘境編)~高松駅「あなご飯」(1,000円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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朝9時半前、JR土讃線・琴平駅に少し変わった2両編成の列車が入ってきました。
後ろこそ普通の特急列車のような車両ですが、前は窓がないオープンエアの車両。
実はコレ、四国のJR土讃線を走る「絶景!土讃線秘境トロッコ」という観光列車なのです。
2015年から週末を中心に、土讃線の琴平(香川県)と大歩危(おおぼけ・徳島県)の間を1往復運行中。
琴平発の下り列車は、寝台特急「サンライズ瀬戸」から程よいタイミングで乗り継ぐことが出来ます。

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この列車は、オープンエアの1号車と荒天時などに避難できる2号車の2両編成。
1号車と2号車は共通の座席番号になっており、始発駅・琴平の段階では2号車に乗車。
景色が良くなってくる途中の「坪尻駅」から、1号車のトロッコ車両に移動できます。
琴平~大歩危間は、特急列車でおよそ40分。
そこを「絶景!土讃線秘境トロッコ」号は、自然の風を感じながら「2時間」かけてのんびり走ります。

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絶景!土讃線秘境トロッコ」という列車には「絶景」と「秘境」という2つの要素があります。
琴平を出て最初に目指すのは、香川・徳島県境の「秘境」。
讃岐財田(さぬき・さいだ)駅を出て、猪の鼻峠越えの長いトンネルを抜け徳島県に入ると、右手の下のほうに小さな木造駅舎が見えてきました。
この駅こそ、四国を代表する「秘境駅」として知られる「坪尻駅」!
アレ?列車は駅をスルスル~っと・・・通過しちゃうんですか???

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絶景!土讃線秘境トロッコ」は、坪尻駅の駅舎とホームを通り過ぎたところで停車、おもむろにバックを始めました!
実はコレ、元々決まっている「予定通り」のこと。
「坪尻駅」は、急な坂の途中に駅が設けられています。
昔、滑りやすい急坂の途中で、鉄の車輪で鉄のレールを走る列車が発着することは、技術的に難しいことでした。
その名残で、平らな場所を確保するために「スイッチバック」方式の駅となっているんです。

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絶景!土讃線秘境トロッコ」のお客さんには、乗車中の見どころなどが丁寧に記されたガイドマップが配られます。
その中には、もちろん「スイッチバック」の解説も・・・。
この図解が非常に分かりやすい!
1つ前の画像は、図の真ん中「②」に当たります。
しかも、このマップ、JR四国の社員の皆さんによる手作りマップなんだとか。

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ようやく「絶景!土讃線秘境トロッコ」号は「坪尻駅」に停車することが出来ました。
坪尻駅では10:26~39まで、およそ「13分間」の停車。
土讃線は単線ですので、この間に上りの特急列車「南風(なんぷう)8号」岡山行とすれ違います。
「南風」の2000系気動車は、坪尻駅に停車することなく本線をそのまま通過。
急坂もカーブも臆することなく、振り子機能を使って車体を傾けながら、グイグイと登っていきました。

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坪尻駅の構内踏切を渡った所にある「25」の数字。
この数字は、坂の高低差を表す「25パーミル」というもの。
25パーミルとは「1,000m進むと25メートル坂を上ります」という意味。
土讃線では最も急な坂で、その途中に駅が設けられているという訳なんです。
こういった坂の途中のスイッチバック駅、東日本エリアでは中央東線などに昔、多かったようですね。

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「坪尻駅」は川の谷底に設けられた無人駅で、周囲に民家はほとんどなく1日の平均利用者も1~2名。
近くを通る「国道32号」までは数百メートル歩かねばならず、クルマで来ることが出来ません。
車掌さんもそれを煽るように(?)「廃屋には決して近づかないでください」とアナウンス。
元々「坪尻駅」は、列車がすれ違うための「信号所」として開設され、それが駅に昇格したものです。
ですので「駅」というよりは「列車がすれ違う場所」としての役割のほうが大きかったと考えられます。

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さあ、13分の小休止の後、坪尻駅の発車に合わせて、いよいよトロッコ車両に移動!
まずはトンネルの冷たい空気によって、乗客は「トロッコ列車」の洗礼をうけます。
ちびっ子たちが、アトラクション感覚で騒ぎ始めるのもこの辺りから・・・。
四国とはいえ、山間部では4月の空気はまだ冷たいせいか、車掌さんがひざ掛けを配ってくれました。

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このトンネルを抜けると、眼下には「池田」の町並みが広がります。
池田といえばかつて甲子園で、蔦監督の山びこ打線で名を馳せた「池田高校」のある町。
今は、平成の大合併で「徳島県三好市池田町」となっています。
山間の決して大きくはない町の高校から「日本一」になったことは、今なお町の皆さんの誇りではないかと思います。
列車は山裾をぐるりと回りこむように、池田の中心部へと入っていきます。

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こんな景色を眺めながらいただくのは、高松駅の駅弁「あなご飯」。
ただ「絶景!土讃線秘境トロッコ」には車内販売がありません。
今回は「サンライズ瀬戸」が高松駅で27分停まった際に買い込んでおきました。
四国は駅弁のある駅が限られているので、車内で食べたい場合は岡山、高松、丸亀(朝10時~)などで買っておくことをお勧めします。
また日中の特急「しおかぜ」「南風」では、丸亀~観音寺・琴平間のみで行われる車内販売で買えることもあります。

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高松はもちろん、瀬戸内の定番駅弁「あなご飯」。
昔から高松駅の駅弁を手掛けていた「高松駅弁」は、残念ながら数年前に無くなってしまいました。
現在は「ステーションクリエイト東四国」の委託を受けた岡山の「三好野本店」さんが
「高松駅弁」のブランドを守りながら、レシピを引き継いでいます。
蓋を開けると、香ばしいタレの匂いと共に、焼き穴子が5枚と細かく刻まれた穴子も・・・。
香川らしい「いりこだし」の味付けご飯と一緒にいただくことで、心地よい味のハーモニーとなります。

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今回はオープンエアの車両でいただいたので、車窓からは春らしい「草の匂い」も。
草の萌える匂いって、桜が終わって新緑を迎える今の時期だけのもの。
都会ではあまり感じることのできない自然の感覚を呼び起こしてくれるのも「トロッコ列車」のいいところです。

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絶景!土讃線秘境トロッコ」は、四国三郎・吉野川の鉄橋を渡って阿波池田駅へ・・・。
次回、後編の「絶景編」に続きます。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

【ごあいさつ】
はじめまして、放送作家の望月崇史(もちづき・たかふみ)と申します。
ニッポン放送には、昔の有楽町の社屋の頃から、かれこれ20年お世話になっています。
最近では、月~木・深夜24時からの「ミュ~コミ+プラス」で放送された、
ルートハンター」のコーナーに、5年ほど出演させていただきました。

そんな私がライフワークとしているのが「駅弁」の食べ歩き。
1年間に食べる「駅弁」の数は多い年でのべ500個。
通算でも4500個を超えているものと思います。
きっかけとなったのも、実はニッポン放送の番組。
2002年~05年に放送された「井筒和幸の土曜ニュースアドベンチャー」の
番組ウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載することになり、
本格的に「全国の駅弁をひたすら食べまくる生活」に入りました。
以来、私自身のサイトや、近年は「ライター望月の駅弁いい気分」というブログで
「1日1駅弁」を基本に「駅弁」の紹介を続けています。
”駅弁生活15年目”、縁あってニッポン放送のサイトで連載させていただくことになりました。
3つの原則で「駅弁」の紹介をしていきたいと思います。

①1日1駅弁
②駅弁は現地購入
③駅弁のある「旅」も紹介

「1日1駅弁」ですので、日によって情報の濃淡はありますが、
出来るだけ旬の駅弁と鉄道旅の魅力をアップしていきますので、
ゆるりとお付き合い下さい。

【プロフィール】

望月崇史(もちづき・たかふみ)望月

1975年12月8日静岡県生まれ。
早稲田大学在学中から、ニッポン放送で放送作家に。
卒業後の2002年「井筒和幸の土曜ニュースアドベンチャー」の番組サイトで始めた
ライター望月の駅弁膝栗毛」をきっかけに、全国の駅弁食べ歩きをスタート。
以来およそ15年、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。
1日1駅弁のウェブ紹介を日課とし、これまでに食べた駅弁は4500個以上。
ニッポン放送「ミュ~コミ・プラス」ルートハンター、鉄道特番などにも出演。
丸の内朝大学・温泉クラスの講師も務める。