38年前の10/25・ゴダイゴ『西遊記(MAGIC MONKEY)』リリース 【大人のMusic Calendar】

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MAGIC-MONKEY,GODIEGO

干支など、いまではあまり意識することはないかもしれないが、それでもテレビなどは年末年始にその年の干支の動物が頻繁にフィーチャーされる。今年は申年。猿の映像に必ずといっていいほど、流れていたのがゴダイゴの「モンキー・マジック」である。同曲とともに国民的ヒット曲となった「ガンダーラ」を収録したのがゴダイゴの『西遊記(MAGIC MONKEY)』。同作がリリースされたのが38年前の今日、1978年10月25日である。

『西遊記』は日本テレビ開局25周年テレビドラマ『西遊記』(出演者:堺正章、夏目雅子、西田敏行、岸部シローほか)のサウンドトラック・アルバムであり、ゴダイゴのオリジナル・アルバムである。『ゴダイゴ(組曲:新創世紀)』(1976年7月25日)、『デッド・エンド(DEAD END)』(1977年11月1日)に続く、3枚目のオリジナル・アルバムだ。

彼らにとって、同作は出世作といっていいだろう。ゴダイゴが国民的なバンドになる契機となった。オリコンの週間アルバム・チャートの第1位を獲得し、同じくオリコンの1979年の年間アルバム・チャートの第1位も獲得している。当時、50.8万枚を売り上げ、最終的にはミリオンセラーになっている。それまで英語で歌う風変わりなグループ、音楽的な実力はあるものの、一部のマニア向けと思われていたが、こんなにも大衆にる愛されバンドになるとは誰も予想できなかった。

ゴダイゴ(ミッキー吉野グループ)が音楽を手掛けたNHK土曜ドラマ『男たちの旅路』(脚本:山田太一、出演者:鶴田浩二、水谷豊、桃井かおりほか)の第2部第2話「冬の樹」(1977年2月12日放送)で、彼らは“人気バンド”という役柄で出演し、ファンが殺到するというシーンがある。あくまでもそれは“フィクション”と思われていた。その後、“アイドル・バンド”として、世代、性別を超え、老若男女に愛され、彼らに熱狂的なファンが殺到し、取り囲み、追いかけまわされるバンドになったのだ。『西遊記』のヒットを契機に、テレビ、ラジオ、新聞、芸能誌、一般紙までが彼らに注目。週刊誌や経済誌などでは、その経済効果まで論じられた。まさに社会現象となったのだ。

彼らが『西遊記』の音楽を担当し、ブレイクに至るには、様々な活動を通し、テレビや映画、CMなどのクリエイター、多くのアーティストやディレクターの信頼を得ていたことも大きいだろう。

当時、ミッキーは、ゴダイゴはただのバンドではなく、プロジェクトであるということを盛んに語っていた。プロジェクトとして、自らの音楽をいろんなところへ流通させるというミッキーの戦略もあった。そのための知識や技術はバークリーで、学んでもいる。

『西遊記』の前後には日本テレビ番組『いろはの“い”』(1977年11月25日)や大林亘彦監督の映画『ハウス』(1977年6月25日)、映画『キタキツネ物語』(1978年7月10日)、NHKドラマ『男たちの旅路』(1978年7月25日)など、数多くのドラマや映画の“劇伴”を手掛け、それらはサウンドトラック・アルバムとして、リリースされた。

そして、サントラと同時並行で、CM音楽の制作、他のアーティストへの楽曲提供、レコーディング、ライブなどのバッキングを積極的にこなしている。その数は膨大な量になる。彼らが手掛けたCMソングを収録した『CMソング・グラフティ ゴダイゴ・スーパー・ヒッツ!』(1978年1月15日。ゴダイゴと同じく日本コロムビアに所属していた大滝詠一が前年77年3月25日にリリースした『NIAGARA CM SPECIAL Vol.1』のヒットも同作のリリースを後押しした)は、その集大成である。ミッキーは、サミー・デイビス・ジュニアを起用したサントリー・ホワイトのCMで、「78年度コマーシャル大賞アレンジ賞」を受賞している。

また、ちあきなおみ『あまぐも』(1978年1月25日)、桃井かおり『KAORI TWO』(1978年7月5日)、Char『THRILL』(1978年7月10日)、絵夢『夜から朝への流れの中で』(1978年8月21日)などのレコーディングにも参加している。特にCharの『THRILL』には、ミッキー、スティーヴ・フォックス、トミー・スナイダーが参加し、トミーは3曲、歌詞を提供している。

同作が契機となり、78年7月21日から8月28日まで全国24か所を回るツアー「Char Super Concert with. Godiego in summer」 を行っている。同ツアーでゴダイゴは初めて日本武道館のステージに立つ。本来であれば、Charのレコーディングに参加したのは前述通り、ミッキーとスティーヴ、トミーのみ、彼らだけがバッキングを務めればいいわけだが、タケカワユキヒデと浅野孝已も参加している。ゴダイゴがバッキングだけでなく、ゴダイゴのセットもあった(同ツアーでは「ガンダーラ」、「モンキー・マジック」なども既に披露されている)。そこにはゴダイゴをただのバッキング・バンドではなく、ちゃんとしたバンドとして売っていこうというゴダイゴのプロデューサー、ジョニー野村の意向(意志!)があった。

そのツアー明け、1978年10月25日、ゴダイゴは『西遊記』をリリース。前述通り、同作はサウンドトラック・アルバムであると同時に、ゴダイゴのオリジナル・アルバムでもある。実は、“西遊記”というテーマは、ゴダイゴの歌詞を手掛け、のちにキャスティング・ディレクターとして知られる奈良橋陽子と、日本テレビの番組以前に話し合われていたという。1979年には、奈良橋の演出で、ミュージカル『MAGIC MONKEY』が上演されている。

『西遊記』のエンディング・テーマに使用されたフォーク・ロック調(ミッキーはダンヒル・サウンドを意識したという)の「ガンダーラ」、オープニング・テーマに使用されたオリエンタル・ファンク(という言葉が使われ、海外でも話題になった)の「モンキー・マジック」は大ヒットを記録。オリコンのシングル・チャートのベスト10に2曲同時に入る。『ザ・ベストテン』(TBS系)、『NTV紅白歌のベストテン』(日本テレビ系)などの歌番組でも上位になっているのだ。

文字踊り、ゴダイゴは国民的バンドへと歩み出す。その経緯は改めて、記すまでもないだろう。勿論、書いていたらきりがない。

『西遊記』のリード・シングルとなった「ガンダーラ」(1978年10月1日)は日本語で歌っている(A面は日本語、B面は英語)。これまでの経緯を考えれば、葛藤もあったかもしれないが、既に『キタキツネ物語』で、日本語で歌っていることが“免疫”となったのだろう。

同時に彼らはテレビの歌番組などにも積極的に出演。ジョニー野村の戦略もあった。テレビ出演に抵抗はない。むしろ、エキゾティックな衣装や「モンキー・マジック」の蜘蛛の糸の演出など、楽しんでいたところもある。

これまでの活動の成果が『西遊記』の音楽制作という“大仕事(ビッグ・プロジェクト)”を引き寄せ、そのチャンスをしっかりと彼らはものにした。彼らは“売れ線”などというものに惑わされず、音楽性を変えることなく、そのままメジャーとなった。同作が売れなければ解散という背水の陣だったことは後年、語っているが、彼らは賭けに勝ったのである。当時、メンバーは一夜にして人気者になったことに戸惑いつつもヒットで得た創作の自由(潤沢な製作時間や予算、制作の主導権を掌握するなど)を思う存分に利用し、音楽を豊かにすることに傾注した。

ゴダイゴ・ブレイクの契機となった記念すべきドラマ『西遊記』。現在、「時代劇専門チャンネル」で、ハイビジョン放送されている。それに併せて、当時のスタッフの制作秘話やインタビューなど、全26話の面白さを徹底解剖する特別番組も制作されたが、同番組には、ゴダイゴも出演している。同番組のHP内に、ミッキーとタケカワのコメントがある。

「当時は事前に試写を見たりせず、台本でドラマに合わせた劇伴(ドラマに流れる伴奏音楽)を300曲ぐらい録音していたので、延々と作業している印象でした。まだ、英語詩の音楽が受け入れられない時代だったのですが、『西遊記』は自由に制作させてもらえる、面白くて最高の環境でした! “ゴダイゴそのものが生かされていた番組”といっても過言ではありません」
と、2人は振り返る。

今年は、1976年4月1日にシングル「僕のサラダガール」でデビューして、40年になる。ゴダイゴ・デビュー40周年を記念して、2月、4月には大阪と東京で、クワイヤー、ストリングス、ホーン総勢80余名と共演するプレミアム・コンサート「Godiego with billboard classics premium strings 2016」が開催された。11月にも同じく大阪と東京で、デビュー40周年の締めとして、「GODIEGO CONCERT 1976-2016 40th Anniversary Concert~カトマンズ震災チャリティーコンサート~」が開催される。クワイヤーも加わるという同コンサートは『西遊記』をフィーチャーしたものになるそうだ。申年の締めに「モンキー・マジック」を聞く。悪くない趣向だ。駆け付けていただきたい。

◆ GODIEGO CONCERT 1976-2016 40th Anniversary Concert ~カトマンズ震災チャリティコンサート~
出演:ゴダイゴ(ミッキー吉野,タケカワユキヒデ,浅野孝已,スティーヴ・フォックス,トミー・スナイダー,吉澤洋治) + 竹越かずゆき

2016/11/3(木・祝)Zepp Namba(大阪・なんば) Open 16:45 / Start 17:30
2016/11/12(土)中野サンプラザ(東京・中野区) Open 16:45 / Start 17:30
Charge:前売 S席 8,500 A席 7,500 / 当日 9,000(全席指定・税込)
※未就学児入場不可・大阪のみ入場時ドリンク代500円別途必要
お問い合わせ サンライズプロモーション 0570-00-3337

【執筆者】市川清師

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