地域貢献度、総合1位の大学は?~企業や自治体との連携、国際化対応が重要

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(11月6日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。大学の地域人材育成について解説した。

1位信州大学、2位大阪大学、3位徳島大学……上位を占める国立総合大学

日本経済新聞が全国755の国公私立大学を対象に、大学が地域社会にどのような貢献をしているかを探る調査を行ったところ、総合ランキング1位は信州大学で、2位が大阪大学、3位が徳島大学、4位が島根大学と、国立の総合大学が上位を占めた。公立では名古屋市立大学が5位、私立では立命館大学が7位に入っている。

森田耕次解説委員)これは日経新聞の6日の朝刊に出ているのですが、日経新聞が各地方の大学が地域社会にどういう貢献をしているのかということを調べました。総合ランキング1位が信州大学、2位が大阪大学ということなのですが、どういう調査なのかというと5つの分野で質問をして調べたということです。1つは地域貢献の推進体制を見る「組織・制度」について、学生の地元就職や住民向け講座を開いているかどうかの「学生・住民」、企業・自治体との連携を調べる「企業・行政」、地域の国際化支援などの「グローカル」これは「グローバル」と「ローカル」を組み合わせた言葉です。そして「働く場としての大学」という5つの分野で質問をし、調べたものです。

河合)日経新聞がときどきやっている調査のようですね。

森田)大学の地域への貢献というのは重要になってくるのでしょうか。

河合)私もいま高知大学の経営協議会の委員をやっていまして。経営協議会とは、企業で言うと社外取締役のような仕事なのです。

森田)高知大学も20位に入っています。

河合)けっこう高いところにいますね。

森田)地方の国立大学に多いようですね。

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」

大学と地域が連携する流れが広がる

河合)少し前からみんながみんな都会の大学に行くのは難しいという親の事情もあって、地元の進学熱が高まっていたこともありました。また、最近では政府全体で地方創生ということで、大学も地域の大きな主役になって貰おうということで、地域人材の育成を政府としても大きな柱に掲げています。いま地域協働学部という学部を高知大学もつくっているのです。その地域や地元に対していろいろなことをやる特徴的な学部を、国立大学も私立大学も設置する流れが広がっているのです。地域人材を育てていこうということもあるし、地域経済や地域の産業と大学が連携して、産学の連携をより強めていこうという大きなトレンドが各大学に芽生え、かつ具体的に進み始めている時期なので、今回の調査結果にもいろいろな学校が名前を連ねていますね。

森田)日経新聞によると、早稲田大学は数多くの自治体や経済団体と協定を結んでいて、今年の2月には佐賀県の唐津市と環境保全や街づくりに関する協定を結んだと。このような連携をしていくのですか。

河合)三重大学が12位に入っているのですが、三重大学はかなり前から地元の企業と共同開発でいろいろな製品を開発していて、大学の知見と地元企業のノウハウを結び付けて地域ブランドのようなものをつくる取り組みをしている先生がいます。学校全体でやっていたり、個人の教授が直接手伝いをしていることは三重大学に限りません。早稲田大学もその1つかと思います。

森田)高校との連携というのも大学の重要な役割らしく、島根大学は高校と地域振興策をテーマにディスカッションなどを行っていて、小中高校などでのグローバル人材育成に向けた教育支援をしているようですね。

河合)人口が減り、とりわけ若い人が減っていくなかで、地域の高校が人数を確保できなくなって、なるべく地域の優秀な人材は地域のなかの大学で学んでいただきたいという地域全体の思いがあります。県庁や市役所などの人材ももちろんですし、地域企業の次の担い手を育成していかなければいけないということがありますので、高校も大学も連携し、産業界と共に地域を盛り上げていこうということなのですね。

森田)そのためにも若い高校生や小学生とも連携をしながら、ゆくゆくは大学に入ってくださいよ、ということもあるわけですね。

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グローバルな人材育成も推進している

河合)政府は一方で国際化もやっていて、グローバル30という言い方をするのですが、国際的な人材を育てる大学を30校選んで、留学生の受け入れを積極的にしているのですよ。それと地域人材の育成という大きな両側の柱を強化して、少なくなっていく子どもたちを次の日本社会を支えていく人材としてどうやって育てていくのか、ということを考えているのだと思います。

森田)世界で活躍する人材も育てたい、一方で地元に就職してくれる人材も取りたい、ということなのですね。

河合)ただ、地域人材の育成には1つ課題があって、人口激減県と言われているようなところは(県内の)受験生も減っていってしまいます。地域の人材を育てるというときの「地域」がどこを指すのかという問題もあるわけです。例えば高知の場合、かなり人口が減ってゆく県の1つです。高知大学の学生の出身地を見ていくと、全学生の4分の3は高知県外なのです。

森田)4分の3も高知県外なのですか。

河合)東京や北海道、沖縄からも進学されています。地方の国立大学はよその県からも「国立大学志望者」が集まります。高知大学は(他県出身の学生が)多いのだと思いますが、大なり小なり(出身地以外の)国立大学を志望する人はいると思います。こうなりますと、例えば高知大学で言えば、高知県の人材を育てることが「地域人材の育成」ということなのか、ということです。富山県から高知大学へ来ている人の地元は富山県じゃないですか。富山県庁に就職したい、と思っている人もいるだろうし、北海道出身の人たちは北海道の企業に就職することが「地元への就職」かもしれません。「地域人材の育成」というと、その大学の立地している場所のための人材を育成するという方向に行きがちなのですが、どこの地区であっても活躍できる人材を育成するという発想を持たないと、(学生たちの)ニーズと(各大学の)頑張りの方向がずれてくると思います。

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地元のためではなく、さまざまな地域で活躍できる人材育成を

森田)学生の地元就職というところを見ると、そこだけに絞ってしまったら帰ってくる学生も困ってしまいます。

河合)そうなのです。ただ、文科省は各大学が立地する地域への就職というので交付金の額を決めているので、高知大学だったら高知県に就職したい人の割合を(点数化して交付金額を決めるための)算出根拠にしてしまいます。文科省もその辺はよくわかっていなくて、私は文科省の官僚に基準を変えるべきだということを言っているのです。その学生の地元に就職したらカウントできるように変えていかないと。学生のいちばん就職したいところに送り出すのが大学の役割ですので、(学生たちを)バックアップができるように変えていかないと、地域人材の育成はできないと思います。

森田)一方で、東京23区の私立大学は合格の定員を絞っているわけですね。

河合)厳格化しないといけないということですね。

森田)そうすると、東京の私立大学は難しいから地方で学びたいと。それでまた東京で働きたいという学生たちもいますよね。

河合)そうですね。「地域」の意味合いを硬く考えるのではなく、実態に合わせて人材をどう育成していくのかという視点を持っていかないと、本当の意味での地域貢献ができる大学にはならないだろうと思います。

森田)大学も地域との密着を真剣に考えている時代になっているのですね。

河合)大学は大きな力を持っているので、それを活用しながら(各地域に)新しい産業を興すことになっていくと思います。

ザ・フォーカス
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パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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