イギリスのEU離脱~ポイントとなるのは「関税同盟」と貿易

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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(10月21日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。イギリスのEU離脱問題について、「関税同盟」をキーワードに解説した。

イギリスのEU離脱~ポイントとなるのは「関税同盟」と貿易

英中部マンチェスターでの与党保守党大会で演説するジョンソン首相=2019年10月2日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

イギリス首相、EUに離脱期限延期を求める~「延期しないほうがいい」という書簡も

イギリス議会下院は19日、政府とEUが合意した離脱協定案の採決を先送りすることを決め、ジョンソン首相は10月31日としていた離脱期限を延期するよう、EUに要請する義務を負うことになった。これによりジョンソン首相はEUに離脱期限の延期を求める手紙を送ったものの、署名はしていない。

飯田)書簡2通を送ったということで、延期を求める書簡には署名をしなかったのですが、もう1つ、自らの考えを明記した書簡には署名があったそうです。

須田)「10月31日までに離脱した方が、イギリスとEUにとって共にハッピーになる」のだと。そのような文言も添えたということです。法律には逆らわないけれども、自分のスタンスを明確にしたということだろうと思います。それを受け取った方も、「ジョンソン首相は延期するつもりはまったくないのだ」と受け止めたということで、またイギリス議会が揉めることになります。

イギリスのEU離脱~ポイントとなるのは「関税同盟」と貿易

「関税同盟」というキーワード

須田)あまり日本のメディアは取り上げませんが、「関税同盟」というキーワードをしっかり理解していただきたいのです。どこが揉めているのかというと、そもそもEUとはある種の関税同盟を結んでいる国々なのです。関税同盟というのは、その国々の間では関税はかからないのですが、EU域内が問題なのではなくて、EU以外の国との関税がどうなるのかというところが1つのポイントです。例えばTPPと比較するとわかりやすい。TPPを結ぶと、その域内は関税がゼロになったり、低い税率が適応されたりするわけです。EUのメンバー国は、他国と関税に関する協議をするときどうするかと言うと、個別にやります。だから日本はEU域内の国や、外の国とやるときには個別にやります。しかし、関税同盟をやると個別にはできないのです。

飯田)例えば、ベルギーやフランスなどが日本と交渉しようと思っても、EU全体としか交渉はできないということですね。

EUでの関税同盟に残るとイギリスは関税を協議する権利を持てない

須田)EUと日本が関税に関する協定を結ぶとすると、それはEU全域に適応されるということです。そうすると、自分の国で関税を協議する権利を持たない。関税については主権ですよね。

飯田)関税自主権というものですね。

須田)主権を持っていないことになってしまいます。これをジョンソン首相は問題視しているのです。関税自主権を取り戻す、ただしEUとの間ではFTAを結ぶということで、結果的にはEUとの関係を元通りにしようというのが狙いです。ただ1つ大きな問題になっているのは、北アイルランドの扱いです。イギリスのEU離脱でいちばんの問題は、北アイルランドとアイルランドの国境地帯の問題です。ここに国境があり、人、物、金の制限がかかってしまうことで何が起こるかと言うと、北アイルランドの独立問題が再燃して来る。従って関税の部分に関して、北アイルランドとアイルランドの国境地帯では従来通りのルールが適応されるということで、「関税はかかりません」という形になるわけです。一方でイギリスとEUはFTAを結びますから、ここも関税はかからない状況になります。ただそうなると、北アイルランドとしては「イギリスから分離されてしまうのではないか」、或いは「本当に人、物、金の移動が自由になるのか、そうはならないのではないか」となる。そのため、結果的に独立運動がまた激しくなるのではないかということで、北アイルランドは反対しているのです。

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