あなたの青春がここに!太田裕美【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。

そんなアナタのために、ドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が「ぜひ手元に置きたい一枚」をアーティスト別・ジャンル別にご紹介していきます。

先月、40年にわたる連載が終了した『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。その主人公・両さんが大ファンだったのが、太田裕美です。
連載初期、しょっちゅう作品の中に登場していましたし、コミックス第3巻では、本人があとがきを担当していたりします。
スクールメイツ出身で、当時渡辺プロに所属。自らピアノ弾き語りで歌い、歌謡曲とニューミュージック、アイドルとアーティストの中間点を行った彼女は、その垣根を取り払ったという点で、歌謡史的にも重要な存在です。ぜひ持っておきたいレコードをピックアップしてみましょう。

【ビギナー向け】・・・『木綿のハンカチーフ』(1975)

木綿のハンカチーフ,太田裕美

定番中の定番ですが、やはり押さえておかねばなりません。男女の手紙のやりとりを、そのまま歌にするという斬新さ。
作詞・松本隆の仕業ですが、「都会に出て行った男が、故郷に残った彼女を振る」という湿っぽい内容にもかかわらず、明るいポップな曲をつけて返した、作曲・筒美京平もさすがです。
楽曲の良さはもちろんですが、主人公が男・女・男…と何度も切り替わる難曲を、サラッと明るく歌いこなした太田裕美の歌唱力があってこそのミリオンセラー。
歌謡曲ファン必携の一枚です。(写真は私所有のもの。17年前、仕事でお逢いしたときにサインしていただきました)
大ヒット曲ですので、入手は容易ですが、もし余裕があれば、シングルに先立って発表されたアルバム『心が風邪をひいた日』に収録のヴァージョンも聴いてみてください。
アレンジと3番の出だしの歌詞が若干違います。
アルバムでは「恋人よ 君は素顔で」でしたが、松本の意向でシングルでは「恋人よ いまも素顔で」に変更。
シングルカットにあたり歌い直しています。

【上級者向け】・・・『さらばシベリア鉄道』(1980)

さらばシベリア鉄道,太田裕美

これも作詞・松本隆、作曲は大瀧詠一です。
前回、松田聖子の『風立ちぬ』と大瀧のアルバム『A LONG VACATION』の関連について触れましたが、この曲はその『ロンバケ』収録曲で、もともと大瀧は自分で歌うために書きました。
ところが、松本の書いた歌詞が女言葉だったため「なんかオレが歌うと気持ち悪いなあ」「これは女性に歌わせた方がいいんじゃないか?」と発案。
同じCBSソニー所属で、担当ディレクターも同じだった太田裕美に提供したのです。
太田のシングルが先にリリースされ、『ロンバケ』収録の大瀧ヴァージョンはセルフカヴァーの形になりましたが、思うに松本隆は、初めから太田裕美に歌わせるつもりでこの詞を書いたような気がします。
大瀧がきっとそう言い出すであろうことを見越して…。こちらも両方聴き比べるとよろしいかと。
なおナイアガラ関連曲でもあるため、他のシングルより価格は高く、1,000円〜2,000円で売買されています。

【その他、押さえておきたい一枚】

『雨だれ』(1974)

雨だれ,太田裕美

記念すべきデビュー曲。ピアノを弾いているのは太田本人。

『しあわせ未満』(1977)

しあわせ未満,太田裕美

通算7枚目のシングル。一人称が「僕」の歌詞は『木綿のハンカチーフ』
でも歌っているが、すべて男性視点で歌ったのはこの曲が初めて。

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。