スポーツアナザーストーリー

大逆転3位が見えて来た阪神~引退したメッセンジャーが示したものは?

話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、9月29日に引退試合を行った阪神・ランディ・メッセンジャー投手にまつわるエピソードを取り上げる。

【プロ野球阪神対中日】引退セレモニー ナインから胴上げされる阪神・ランディ・メッセンジャー54 ノートリ=2019年9月29日 甲子園球場 写真提供:産経新聞社

「タイガースファンガ、イチバンデス! アリガトウ、ホントニ、メッチャ、アリガト!」(引退セレモニーの本人スピーチより)

29日、ホーム・甲子園球場で行われた中日戦に先発登板。現役最後のマウンドに立ったメッセンジャー。中日の先頭打者・大島にすべて直球勝負を挑み、みごと空振り三振に。2013年・2014年と、2年連続で最多奪三振のタイトルを獲ったメッセンジャーらしいラスト登板でした。

矢野監督とナインがマウンドへ集まり、ハイタッチを交わしてベンチへ退いたメッセンジャー。花束を持って出迎えてくれたのは、今季限りでの退団が決まっている鳥谷でした。

実はメッセンジャーと鳥谷は、同じ1981年生まれの“同級生”。10年間ずっとチームメイトで苦楽を共にして来ただけに、鳥谷に見送られたのは「本当に最高の瞬間だった」と語ったメッセンジャー。非常に感慨深いものがあったようです。

「ランディの最後は、勝利で飾りたい」……そんなナインの総意が後押しして、試合は阪神が6−3で快勝。これで阪神は勝率5割に復帰。30日のシーズン最終戦に勝てば、先に5割で全日程を終えた広島を抜いて単独3位となり、大逆転でCS(クライマックスシリーズ)進出が決まります。

「チーム全体が、いい雰囲気で、いい野球ができている。そんないい野球を、自分の目の前でしてくれたことに感謝しています」(試合後の会見より)

2010年に来日したメッセンジャーは、タテ縞のユニフォームを着て今季で10年目。開幕戦では5年連続、6回目の開幕投手を務めました。5年連続は、2002年~2006年まで開幕投手を務めた井川慶と並んで球団史上2人目。6度務めたのも小山正明・江夏豊というレジェンドと並ぶ球団タイ記録です。

来日2年目の2011年~昨年(2018年)までの8年間で、実に7度の2ケタ勝利を記録。唯一届かなかった2015年も9勝を挙げており、2010年代の阪神を支えたエースは文句なしでメッセンジャーと言っていいでしょう。

また、9年在籍したことにより、昨年(2018年)国内FA権を取得。同時に外国人枠の対象から外れることになりました。オフに他球団との争奪戦も噂されましたが、タイガース愛が強いメッセンジャーは阪神との契約を延長。しかし長年にわたる疲労蓄積で右肩を痛め、今季は3勝で終わりました。

来日通算100勝まであと「2」に迫りながら潔く引退を決意したのは、チームに迷惑をかけたくないという思いもあってこそ。外国人選手としては異例の、まるで生え抜きのような「引退試合」が組まれたのは、メッセンジャーがチームのために献身的に働き、最後までタイガースを愛したからです。

心残りは、在籍10年間で1度もリーグ優勝を体験できなかったことです。しかし、日本シリーズの舞台は2014年に経験しました。この年、シーズン2位になった阪神は、CSで優勝チーム・巨人を破ってシリーズに駒を進めました。

ソフトバンクとの日本シリーズ第1戦、先発を務め、白星をもぎ取ったのはメッセンジャーでした。しかし2度目の先発となった第5戦は、好投しながら打線の援護に恵まれず、敵の胴上げを許す悔しい敗戦……。

ポストシーズンでは、2017年の奮投も記憶に残っています。8月の巨人戦で、右足にライナーの直撃を受け、腓骨を骨折。戦線を離脱しましたが、わずか2ヵ月後、シーズン最終戦で1軍に復帰。それから中3日で、DeNAとのCSファーストステージ初戦に登板して勝ち投手になったのです! しかし阪神はその後連敗して、ファーストステージ敗退……。

大逆転での3位が見えて来たいま、阪神ナインに求められるのは、あのときメッセンジャーが身をもって教えてくれた「フォア・ザ・チーム」の精神です。

30日は、メッセンジャー同様、チームのために戦って来た鳥谷がレギュラーシーズン最後の試合に臨みますが、今季限りでタテ縞を脱ぐ2人のためにも、有終の美を飾ろうというモチベーションが加わった阪神。CSに進出すれば、DeNA、巨人にとって手強い存在になることは間違いないでしょう。

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