東電刑事裁判~津波の予見対策と合わせて議論すべき“もう1つの争点”

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月19日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。東京地裁において19日に判決が出る福島原発事故の裁判について解説した。“”

東電刑事裁判~津波の予見対策と合わせて議論すべき“もう1つの争点”

東電刑事裁判~旧経営陣3人にきょう19日判決

東京電力福島第一原子力発電所事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元会長の勝俣恒久被告ら東電の旧経営陣3人に、東京地裁が19日、判決を言い渡す。最大の争点は、巨大津波を予見し対策をすれば事故を回避できたのかどうか。禁錮5年の求刑に対し、旧経営陣側3人は無罪を主張。企業トップらの刑事責任をめぐり、どのような司法判断が下されるのか、注目が集まっている。

飯田)元会長の勝俣被告の他に、元副社長の武黒一郎被告と武藤栄被告が強制起訴されているということです。津波の試算というものが事前にあったではないかということ、それによって防潮堤ができていれば防げた、というのが検察側の主張です。

鈴木)当然これは法律論ですし、裁判ですから、そういうところに争点は絞られます。つまり、津波が予見できたのかどうかです。予見して、堤防をつくっておけば防げたのではないか。それをやっていなかったから悪い。あるいは、いや、それは予測できなかったでしょうということが争点になっている。

原発の安全性に対しての考え方のあり方も併せて考えるべき

鈴木)でもこの裁判の背景は、その部分だけではないと思うのです。「津波を予測できたのか、予測した上で堤防をつくっていたのか」というところに焦点が絞られてしまうと、見誤るのだと思います。原発そのものが、安全神話の下につくられて来ました。安全神話をつくったのは別に東電だけではなくて、政府も含め、もしかすると社会全体もそうだったのかもしれません。原発というものの安全性が、果たしてどうなのかというところ。予測できたのかという点に絞った判決よりは、裁判のなかでのやり取り、原発の安全性に対しての考え方が甘かったのではないか。もしくは間違っていたのではないか。今回の裁判は、これも合わせて見ないといけないのだと思います。だから矮小化されて、有罪か無罪かということではなくて、その辺も考えなければならないでしょう。

東電刑事裁判~津波の予見対策と合わせて議論すべき“もう1つの争点”

小泉進次郎環境相がいわき市内で記者団の取材に応じ、原発の処理水に関する質問に答えた=2019年9月17日午後、福島県いわき市 写真提供:産経新聞社

汚染水処理問題~政治がリードしてもっと早く議論すべきだった

鈴木)いま、新たに汚染水処理の問題があります。

飯田)汚染水を処理した後の、いま貯めているトリチウム水というものですね。

鈴木)これを海に流すのかどうかで揉めていますが、もう事故から8年ですよ。いま水が満杯になって来ました、さあ、どうしようかというところですが、もっと前からわかっていたことですよね。

飯田)そうです。このまま増え続けたら当然、敷地はいっぱいになります。

鈴木)この8年間、政治がリードして、この水をどうするかという議論をもっと早くから始めていなければいけなかったと思うのです。もうどうしようもなくなると、時間も余裕もないから流すしかない、という流れができて来るのが、本質的に道を間違っていると思います。そういう意味で、対応が遅かったというものがあります。それから、これは東電の責任と言われているけれど、電力会社に結果責任はあると思いますが、日本の原子力発電は、仕組みとして電力会社が全責任を実際に負わされます。でも、これはエネルギーという国策でしょう。政府の責任もあるのです。

飯田)国策民営とも言いますね。

鈴木)この裁判は、すべてが矮小化されて終わってしまう可能性があります。この判決、もしくはこれまで法廷ではいろいろな話が出て来ました。原発の安全神話、安全性、政府責任を含め、トータルで見るべきだというのが私の考えです。

東電刑事裁判~津波の予見対策と合わせて議論すべき“もう1つの争点”

復興支援イベント「ゆめあかり3・11」が開かれ、優しい明かりに包まれた会場ではステージで歌や楽器の演奏が披露され、訪れた人の心を和ませた=2019年3月9日 写真提供:産経新聞社

原発をなくした場合、その後どうするのか

飯田)閣僚によっては、これから先は原発をなくす方向に行けばいいと言う人もいますけれども、なくして行ったときにどういったエネルギー安全保障を考えるかも含め、油を持って来るにしても中東も南シナ海も大変なことになって来ると、どうしたらいいのかを全体で考えなければいけません。

鈴木)古臭いと言われるかもしれませんが、僕は石炭担当記者でしたから。

飯田)そうなのですか。九州で。

鈴木)日本が唯一持っているエネルギーは、石炭なのですよ。

飯田)そうですよね。もともとの自前資源としては。

鈴木)例えば、そういう石炭などは安い海外炭にどんどん移行しました。日本の石炭は地下を掘って行くからお金がかかるし、危険もあるわけです。それよりも安い海外の石炭を買えばいい、と石炭政策も変わって来ました。だけど、日本唯一のエネルギーは石炭であり、海外では唯一のエネルギーが石炭だったら、税金をかけてでもそれを掘り続けている国もあるのですよ。石炭に戻れとは言いませんが、エネルギー政策とは何かということを議論しなければいけません。それで、原発しかないという結論にはならないと思うのです。いろいろな可能性があると思うのですが、もう8年も経っています。なぜ早く始めないのか、というところが忸怩たる思いです。

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