福島原発処理水が安全である理由~小泉進次郎氏はどこまで理解していたのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月18日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。松井大阪市長が福島原発処理水の受け入れに言及したニュースについて解説した。

松井大阪市長が福島原発処理水の受け入れに言及

 

松井大阪市長)処理済み汚染水をどうするかというのは、国民のみなさんに理解をしていただくなかで海洋放出、これを進めてもらいたいと思っています。どこに流しても大丈夫なのだから、自然界レベルと比べてまったく影響がないということを明らかにして、そしてあとは丁寧に説明して、政治家が決断すべき事柄だと思います。

 

福島第一原発で増え続ける汚染水の浄化後の処理水の放出について、大阪市の松井一郎市長は科学的に安全が保障されれば、大阪湾への放出に協力する考えを示した。松井市長はまったく環境被害がないものは国全体で処理するものだと指摘している。

飯田)3年余り経ったら、設置のスペースがなくなってしまいますよね。

佐々木)実際に大量のタンクを大阪に持って行って、大阪湾に放出するのは現実的ではありません。ただし、大阪市が表明することで意味を持つのだと思います。松井市長の維新の会に政治的には賛同しませんが、今回の件で松井市長の言っていることには大賛成で応援したいです。

飯田)政治家の政治家らしい発言というか、最後を決めるのが政治家なのだという。

佐々木)誤解している人が多いのですが、そもそも現場に流れ込んでいる水があって、事故現場で確かに汚染されています。

飯田)溶けたデブリに直接触れている水ですね。

福島原発処理水が安全である理由~小泉進次郎氏はどこまで理解していたのか

2019統一地方選 大阪市長に当選が確実になった松井一郎氏(左)と大阪府知事に当選が確実になった吉村洋文氏。笑顔で握手をかわした=2019年4月7日 写真提供:産経新聞社

「汚染水」を二次処理した「処理水」は海洋放出しても安全である

佐々木)それを「ALPS(アルプス)」という、東芝が開発した多核種除去装置を使うと、大半の核種は取り除かれてトリチウムだけが残る。ただし、現状タンクに保管しているのはトリチウムだけではありません。他のストロンチウムなども混ざっています。8割くらいが基準値を超えている。なぜ基準値を超えたものを貯めているかというと、当初の段階で、第一原発の空気中の放射線量を抑えるために、とりあえず基準値を超えても貯めていました。これを海洋放出するには二次処理を行って、トリチウムだけになった段階で放出します。ではトリチウム水を放出していいのかということですが、経済産業省の資料に書かれていますけれど、世界中の原子力発電所でトリチウムは海洋放出されています。

飯田)トリチウム水というと、大変なものが入っているように感じますが、三重水素。H2OのなかにH3が混ざるのはよくあることで、通常我々が飲むコーヒーにも一定量は混ざっています。

佐々木)自然界のなかには大量に存在しています。かつて1950年~1960年代、大気中核実験が行われていた時代は、いたるところにトリチウムが存在していました。年々減っていて、いまは核実験が行われる以前のレベルまで戻っています。福島でタンクに貯められているトリチウムの量はごくわずかで、そのまま流しても問題がないのだけれど、これが本当に知られていません。未だに見出しにも「汚染水」と書いてありますよね。

飯田)見出しで汚染水と書く新聞があるのですよね。

福島原発処理水が安全である理由~小泉進次郎氏はどこまで理解していたのか

小泉進次郎環境相がいわき市内で記者団の取材に応じ、原発の処理水に関する質問に答えた=2019年9月17日午後、福島県いわき市 写真提供:産経新聞社

「汚染水」ではなく「処理水」と明記すべき

佐々木)確かに汚染されていた水なのだけれども、処理して海洋放出しても大丈夫な段階まで来ているわけだから、これは「処理水」と書くべきです。「それは言葉のまやかしだ」と怒る人がいますが、風評被害があるので処理水と書かなければならないのです。いつまでも福島が放射線で汚染されているというイメージがあると、漁業や農業も困るので、福島の人は汚染されているかのように言わないでくれと言い続けていますが、メディアは汚染水と書いてしまう。こういう基礎的な知識が広まっていないのは、マスメディアの影響が大きいのです。

福島原発処理水が安全である理由~小泉進次郎氏はどこまで理解していたのか

復興支援イベント「ゆめあかり3・11」が開かれ、優しい明かりに包まれた会場ではステージで歌や楽器の演奏が披露され、訪れた人の心を和ませた=2019年3月9日 写真提供:産経新聞社

いずれは海洋放出する以外ない~小泉進次郎環境大臣は認識していなかったか

飯田)新任の環境大臣は海洋放出の道を閉ざすような発言をして、前任の環境大臣が問題に一石を投じるような形で「海洋放出しか方法がない」と発言したのに…。

佐々木)前環境大臣が辞める間際になって、海洋放出すべきと誰かが言わなければならないとおっしゃった。それはそのとおりだと思うのだけれど、小泉進次郎さんはそれをどこまで認識しているのか。認識していないで、何となく言ってしまった感じもします。ただ、いずれ海洋放出するしかないことは100%間違いないです。そこにおいて風評被害をどう起こさせないかということは、政府の仕事でもあり、マスコミの役割でもあるのです。マスコミが果たしている風評被害の影響はとても大きいので、なぜそこを認識してもらえないのかなと。

飯田)魚に関してはモニタリング調査をして、問題のないものだけが市場に出ているという形です。もっと言えば、そこは豊かな海域で、そこで獲れたものをどの漁港であげるかという話であったりもするわけですよね。

佐々木)福島沖はずっと魚を獲っていなかったわけです。日本の漁業は乱獲し過ぎてサンマも獲れなくなったりと、いろいろな問題が起きているけれども、福島沖だけ豊かなのです。

飯田)そうですよね。

佐々木)漁獲規制すればこれだけ漁業は復活すると、如実に3.11後の福島が証明しているという、皮肉な話ですが。

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