10時のグッとストーリー

店主が1人で経営する自転車店~いち早く「ルイガノ」に注目した手腕

番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

バイクのように燃料もいらず、健康にも役立つと、愛好者が多いスポーツサイクル。その専門店をたった1人で経営している人がいます。

今回は、販売から修理、メンテナンスまですべて1人で行い、30年以上にわたってユーザーに愛されている、70代のご主人のグッとストーリーです。わざわざ遠くから買いに来る人もいるこのお店、愛されている秘密は何なのでしょうか?

「サイクルハウス オザキ」店主・尾崎和夫さん

小田急線・経堂駅からすずらん通りを15分ほどまっすぐ歩くと、経堂小学校の先に、海外メーカーのスポーツサイクルが並べてある専門店があります。世田谷区船橋の「サイクルハウス オザキ」。店員は、ご主人の尾崎和夫さん、ただ1人です。

「ウチは自転車レースをやっているようなプロが来る店じゃなくて、ビギナーが中心だから」と言う尾崎さんは、いま71歳。お店を訪れるお客さんの話を聞き、その人の目的に合った自転車を勧め、体型などを見た上で、椅子の高さやブレーキなどを的確に調整、販売します。メンテナンスは1年間無料。

「と言っても、1度買ってもらったらずっと面倒を見ちゃうんだけどね」と笑う尾崎さん。もともとは、大手自動車メーカーのセールスマンでした。「実は私、“マスオさん”なんですよ」。

「サイクルハウス オザキ」外観

この場所で最初に自転車店を始めたのは、尾崎さんの義理の父=奥さんのお父さんでした。ところが、お義父さんが体調を崩し、商売を続けるのが困難に。

そのころ、30代半ばの尾崎さんは成績優秀なセールスマンでしたが、上司と折り合いが悪く、会社勤めに嫌気が差していました。尾崎さんは考えた末、奥さんにこう告げました。「お義父(とう)さんの店、オレが継ぐよ!」。

収入は一時的に減るけれど、当時はちょうどバブルが始まりかけたころ。景気が上向いて来たときに商売をやめるなんてもったいない、と尾崎さんは考え、思いきって会社を辞めたのです。尾崎さんは、現在の店舗がある奥さんの実家に引っ越し。お義父さんから経営権を譲り受け、2代目として自転車店を始めました。

「お義父さんは職人かたぎで『技術は見て覚えろ』というタイプだったので、取引先のメーカーに通って、ゼロから自転車について勉強しました」

思い切って商売のやり方を変えたことが、お店の転機に

転機になったのは、バブルが弾けてからです。景気悪化で自転車を買う人が減り、お客さんは安売りをする量販店に流れて行きました。

「こっちの仕入れ値が、量販店の売り値だから。これは勝負にならないなと、思いきって商売のやり方を変えることにしたんです」

尾崎さんは既製品の家庭用自転車を売るのをやめ、スポーツサイクル中心のお店に切り替えると、国内のフレームメーカーと提携して、お客さんが自分の好きな色のフレームや、付けたいパーツを自由に選べるようにしました。フレームや部品を仕入れ、組み立てるのはぜんぶ尾崎さんの仕事。

「私1人でやってますから、人件費がかからないので、価格もうんと下げたんです」

よそなら10万円ぐらいするセミオーダーのスポーツサイクルが、4万円ぐらいで買えるとあって、口コミで評判が拡がり、注文が殺到するようになりました。

尾崎さんが健康のために毎日乗っているという愛車・ルイガノ

ところが、また問題が……。価格の安い東南アジアのフレームメーカーに押されて、取引先の関西のメーカーが次々に廃業。しかし安いフレームを使ったら、自転車の質が落ちてしまいます。

尾崎さんは、当時まだ日本ではそれほど人気がなかった「ルイガノ」など、海外メーカーとの提携にいち早く乗り出し、それをお客さんの好みに調整した上で販売する専門店として勝負しました。いまでこそルイガノは人気の車種ですが、早くからその良さに目を付け、調整やメンテナンスまでずっと引き受けてくれる店は珍しく、ユーザーからもメーカーからも、厚い信頼を得ています。

「いまでも遠くからわざわざやって来て、買ってくれるお客さんは多いですね」

尾崎さんがお客さんに必ず言うのは、「1週間以内に、必ずまた店に持って来てください」。1週間乗るといろいろなクセが出て来るので、そこで故障しないよう、また微調整をするためです。

「買ってもらったお客さんに『ありがとう』って言われるのが、いちばん嬉しいですね。本当はこっちが『ありがとう』なのに(笑)。体が続く限り、この商売を続けて行きますよ」

八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50

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