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転倒すれば1分以上滑走も…それでも魅力的なボブスレーという競技

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転倒すれば1分以上滑走も…それでも魅力的なボブスレーという競技

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

転倒すれば1分以上滑走も…それでも魅力的なボブスレーという競技

日本代表のレーシングスーツを着た、篠原凌さん

今回ご紹介するのは、「氷上のF1」と呼ばれる、ボブスレーの日本代表選手です。

篠原凌さんは、東京都昭島市の出身で26歳。子供のころからサッカーやテニスなどスポーツが大好きで、世界で戦う選手に憧れた少年時代を過ごします。中学・高校と陸上部で活躍し、駿河台大学・陸上競技部で4年生のとき、100mで10秒62の自己ベストを記録。

「自分のなかで、まだまだ速くなれるという自信があったので、大学卒業後もアルバイトをしながら競技を続行していたんです。そんなとき大学の監督を通じて、ボブスレーをやってみないか、と話があったんですが……」

転倒すれば1分以上滑走も…それでも魅力的なボブスレーという競技

世界ジュニア選手権(4人乗り)で17位に

ボブスレーと聞いて、「それ、何ですか?」と聞き返した篠原さん。家に帰って父親に話すと、「お前、そんなことも知らないのか?『クール・ランニング』という映画があるから観てみろよ」。そう言われ、さっそくDVDを観た篠原さん。

南国・ジャマイカのボブスレーチームがオリンピックを目指す、コミカルで感動的なストーリーに、「これは面白い! 100mで世界を目指すのは難しいけど、ボブスレーなら世界を目指せる!」と思ったそうです。

2017年1月、長野県の合宿に参加し、初めてボブスレーに挑戦。カーブでは5~6人が背中に乗って来たような「G」を体感し、息もできないほどでした。そんなとき、4つ目のカーブでザザ―――ッと音がしたと思ったら、ボブスレーが転倒! 頭と肩を氷の表面にすったまま、ズズズズズ……。

転倒すれば1分以上滑走も…それでも魅力的なボブスレーという競技

カーブでの滑走は想像を絶するほどの重圧がかかる

「やばい! 死ぬ! と思いました。転倒するとブレーキが効かず、1分以上、滑走し続けるんです。これは無理だ、危険すぎる。命がいくつあっても足りない。完全にビビってしまいましたね」

ボブスレーと言うと、『押して、乗って、滑るだけ』…そんなイメージだったという篠原さん。先頭に乗る「パイロット」はハンドルを操作し、的確なコース取りをしないとタイムが縮まりません。最高時速140キロほどに達し、タイムは100分の1秒まで計測。さらに、一瞬の判断を誤ると転倒してしまいます。

知れば知るほど奥が深く、単純な競技ではない……篠原さんは、だんだんボブスレーの魅力にとりつかれて行きます。

転倒すれば1分以上滑走も…それでも魅力的なボブスレーという競技

遠征先のトレーニングルームで

驚いたのは、遠征先のヨーロッパで見たトップ選手の体格です。そのほとんどは190センチ、100キロを超える大男ばかり。選手はスピードとパワー、そして体重が求められます。ボブスレーは重いほどスピードが出るからです。

ボスブレーを始めた2017年1月、体重は65キロでした。肉とお米を食べて食べて、9ヵ月後の代表選考会では84キロに! それでも世界でいちばん小さいボブスレーの代表選手です。

今年(2019年)、念願の「パイロット」に選ばれましたが、嬉しさも半分です。2人乗りに比べて、4人乗りはスピードが出るのでリスクも高い。後ろの3人の命を預かっている、という責任を感じるそうです。

転倒すれば1分以上滑走も…それでも魅力的なボブスレーという競技

世界ジュニア選手権(2人乗り)では14位を獲得

「忘れられないのは、パイロットになって初めて転倒したときですね。首を痛めていないか、どこか怪我をしていないか。頭のなかは、みんなの怒った顔が浮かびました。ボブスレーが止まった後、『すみません!』と頭を下げると、『全然平気だよ、俺ら。次、次! もう1本行こうぜ!』。2回目に滑りきってゴールしたとき、みんながヘルメットをぽんぽん叩いて『よくやった!』と喜んでくれたときは、ヘルメットのなかで泣いてしまいました……」

来月(2020年)10月~3月まで、代表チームはヨーロッパへ遠征します。ボブスレーはまだまだマイナー競技なので、日本代表に選ばれても、遠征費の一部は自己負担です。

この冬、「ヨーロッパカップ」や「ワールドカップ」で好成績を上げて、「世界選手権」への出場権を狙うという代表チーム。さらに目標は、2022年の北京冬季オリンピックで入賞し、続く2026年のイタリア大会でメダルの獲得……。

「出発するときは見送る人が誰もいなかった成田空港を、凱旋帰国でいっぱいにしたい。そのぐらいの覚悟で頑張ります!」

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器具を使ってスタートダッシュのパワーをつける

長野オリンピックの際に建設された競技施設、「長野市ボブスレー・リュージュパーク」(愛称:スパイラル)は、製氷の維持管理に費用がかかり、いまは休止状態になっています。

国内で本格的な練習ができなくなったことで、代表チームは10月からボブスレーの本場・ドイツで合宿し、ヨーロッパ各地で開かれる大会に出場し、3月に帰国するそうです。4月~9月までのオフシーズン、選手たちは1人で黙々と練習に励み、月に1回、長野県で合同練習をしています。

ちなみに篠原さんの現在の体格ですが、短距離選手時代と同じなのは、165センチの身長だけ。体重は85キロ、胸囲120センチ、太もも66センチ、腕まわり42センチ。この冬は、日本のボブスレーに注目したいですね!

転倒すれば1分以上滑走も…それでも魅力的なボブスレーという競技

大学4年生、体重65キロだったころの篠原さん

「日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟」
http://www.jblsf.jp

ボブスレー日本代表・篠原凌さんのホームページ
http://ryo-bobsleigh.spo-sta.com/staff

上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

番組情報

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月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

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