目黒女児虐待死事件~1人が年間60件対応する児童相談所の現状

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月4日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。2018年3月に起きた目黒女児虐待事件と児童相談所の現状について解説した。

目黒女児虐待死事件~1人が年間60件対応する児童相談所の現状

東京都目黒区のアパートで5歳の女児が暴行され、死亡した事件で、傷害容疑で父親逮捕 暴行を受けた現場アパートの前には、花やお菓子が供えられていた=2018年3月4日、東京都目黒区 写真提供:産経新聞社

目黒女児虐待死事件、母親が起訴内容を大筋で認める

去年(2018年)3月、東京都目黒区で当時5歳の船戸結愛ちゃんが両親から虐待を受け死亡したとされる事件の初公判が、東京地裁で行われた。保護責任者遺棄致死の罪に問われた母親の優里被告は起訴内容を大筋認めている。

飯田)2018年3月、東京目黒区のアパートで父親の雄大被告から暴行を受け、死亡したという事件。4日の朝日新聞が1面トップで詳しく報じていました。

佐々木)こういう事件で明らかになるのは、奥さんが見て見ぬ振りをしていたというよりは、暴力的な夫の支配下に入っていて何も抵抗できなくなってしまったということです。下手をすると被害を受けている子どもも支配下に入っていて、児童相談所の人が来て声をかけても、「何もされていません」と親の期待通りのことしか発言しない。そうすると、児童相談所側も手を出しようがありません。児童相談の件数は激増していて、去年の産経新聞が報じた記事ですが、平成2年では1100件だった児童虐待対応件数が、平成29年度は13万件に増えているのです。

飯田)100倍以上。

目黒女児虐待死事件~1人が年間60件対応する児童相談所の現状

年間1500件の虐待相談に対応する児童福祉司はわずか25人

佐々木)100倍ですよ。かと言って、児童相談所の職員数が増えているわけではありません。逆に地方財政は逼迫していると言われていて、図書館の人が全員非正規という話もあります。待遇をよくしようと思って少しでも給料を上げようとすると、「公務員は金をもらいすぎだ」と怒られるので、どうしようもない状況になっているのですよ。産経新聞の記事によると、ある児童相談所は年間1500件の虐待相談に、児童福祉司20人~25人で対応しているということです。そうすると1人あたり60件になってしまう。それで綿密に対応するのは無理ですよね。

飯田)そうですよね。1日がかりでやっても、2ヵ月に1回しか見られないことになりますね。

佐々木)結愛ちゃんの件も、もともと香川に住んでいて引っ越して来たのですよね。香川県では把握していましたが、引っ越した品川の児童相談所は、家庭訪問してもそこまで把握しきれなかった。引継ぎがうまく行かなかったということですが、1人で60件対応していて、さらに1日に緊急の会議が3回も4回もあったりするのだそうです。そんな慢性の緊張状態で仕事をしなければならない。それが3ヵ月も4ヵ月も続けば、糸が切れるか麻痺してしまって、対応しきれなくなりますよね。児童相談所が悪いとか誰が悪いという話ではなくて、そういう問題を我々社会はどうやって支えるのかという、根本的な話です。昔だったら近所のおばちゃんなど、地域の共同体が支えるということがあったと思いますが、戦後70年の近代化のなかで、共同体はうっとうしいし、息苦しいと。日本は戦前に隣組制度のような監視制度があったので、それをやめようというのがこの70年の期間でした。それがマイナスのネガティブな副作用として表れているという現状だと思うのですよ。

飯田)それを、何でもかんでも公に頼れば回らなくなる。

佐々木)地方自治体がすべて担わなければいけなくなってしまっています。ここでもう1度、監視社会にならない、新しい地域の共同体を考えなければならないということだと思います。

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