【しゃベルシネマ by 八雲ふみね　第679回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。支配人の八雲ふみねです。シネマアナリストの八雲ふみねが観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、8月24日に公開された『ディリリとパリの時間旅行』を掘り起こします。

フランスアニメーション界の奇才　ミッシェル・オスロ監督待望の新作

知性とユーモアにあふれ、価値観の多様性を一貫して描いているフランスアニメーション界の巨匠、ミッシェル・オスロ監督。初長編作品『キリクと魔女』に惚れ込んだ日本アニメーションの鬼才・高畑勲監督が、同作の日本語版の制作を担当するなど、世界中の多くのアニメーション作家に影響を与えている人物です。

アニメーションで独自の美しい世界を表現する彼の最新作は、オスロ監督の故郷であり、美しき時代＜ベル・エポック＞と呼ばれたパリが舞台。ひとりぼっちの少女ディリリが誘拐事件の解決に乗り出す冒険物語です。

どうしても外国に行ってみたい衝動にかられ、こっそり船に忍び込み、ニューカレドニアからパリへとやって来た少女・ディリリ。彼女がパリで開催中の博覧会に出演しているとき、そこで偶然出会った配達人のオレルと共に、初めてのバカンスを楽しむことに。

街のいたるところに知り合いがいるオレルは、ピカソ、キュリー夫人、ロートレックらパリの有名人たちをディリリに紹介する。その頃、パリの街では少女の誘拐事件が頻繁に起こっていて、それは“男性支配団”と名乗る謎の集団による犯行だと噂されていた。

時代を彩った天才たちに協力してもらいながら、事件の解決を目指すディリリとオレルだったが…。

本作の大きな見どころとなるのは、息を呑むほど美しい風景。夕暮れのヴァンドーム広場、絢爛豪奢なオペラ座、優美にそびえ立つエッフェル塔…。

アニメーションの風景は、オスロ監督が4年にわたって撮りためた写真をもとに制作されたもの。写実的な背景にアニメーションのキャラクターたちが見事に溶け込んでいて、三輪自転車で駆け巡るディリリとオレルの姿は、観る者を黄金時代のパリの街へと誘ってくれます。

画面の随所に有名な絵画や美術品が映り込んでいるのも、これまた一興。歴史や文化、ファッション、美術が大好きな人にとっては、目がいくつあっても足りないほどの贅沢なひとときを過ごせますよ。

19世紀から20世紀初頭の自由闊達で華やかなパリ。世界中から多くの才能を惹きつけた、美しき時代でもありました。優雅さと繊細さのなかにも、これまでパリという街が辿って来た歴史の暗い部分や、人種・性別への差別など社会問題へのメッセージもしっかりと込められているのは、さすがオスロ監督作品といったところ。

さぁ、あなたもディリリと一緒に、ミッシェル・オスロ監督による夢のような“時間旅行”に出かけてみませんか。

『ディリリとパリの時間旅行』

2019年8月24日（土）からYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開
脚本・監督：ミッシェル・オスロ
音楽：ガブリエル・ヤレド
声の出演：プリュネル・シャルル＝アンブロン、エンゾ・ラツィト、ナタリー・デセイ
日本語吹替版版キャスト：新津ちせ、斎藤工
(C)2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION
公式サイト　https://child-film.com/dilili/