供血ネコの生きる道は、自分を犬だと思いながら人を癒すこと!?

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【ペットと一緒に vol.161】by 臼井京音

供血ネコの生きる道は、自分を犬だと思いながら人を癒すこと!?

動物病院で輸血を必要としている猫のための供血猫として暮らす、ミムラくん。5年の月日が過ぎ、いつしかスタッフやお客さんに癒しを与える存在になっていました。今回は、ミムラくんの生活を紹介します。

 

体格が良い保護猫が供血猫に

ペットスペース&アニマルクリニックまりも(東京都世田谷区)に、供血猫のミムラ(三村)くんがいます。姉妹病院の院長が保護猫として譲り受けたのち、体格も良く神経質ではない性格に、供血猫としての適性を見出されて現在に至るとか。

「姉妹病院は少し狭いので、こちらの院長が『3段になっている大きなケージも用意したし、引っ越して来たら?』と誘い、ミムラはやって来ました」と、ずっと世話をしている店長でトリマーの末光絢香さんは言います。

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キジトラ模様が印象的なミムラくん

5歳の現在、ミムラくんの体重は5キロ強。実際にサイズが大きいこともありますが、院内を自由に闊歩する姿はなかなかの存在感を放っています。

「夜間は、VIPルームとも言える3段ケージに入って寝ています。ところが、ペットホテルとトリミング繁忙期の日中にケージに入れておいたところ、血便に。ストレスが溜まったのでしょう。それ以来、日中は施設内をフリーで過ごさせています」と、末光さん。

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まさに自由気ままにお気に入りの場所選び

自分を犬だと勘違い!?

ミムラくんは、自分を犬だと思っているに違いないと、病院スタッフは口をそろえます。

「まず、その食欲。腹時計の正確さたるや、驚きます。ペットホテルに滞在している犬たちの食事タイムである18時が近づくと、ミムラはどこで寝ていても起きて来ます。トリミングルームに入って来て『そろそろ晩御飯だよね?』と、私たちにアピールするんですよ」とのこと。

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食べ物が欲しいとどこからともなくひょっこり現れるとか

食事の準備にかかると、預かっている犬たち同様に、ソワソワと落ち着かない様子を見せることも。

「その動きは、まるで犬ですね。子猫のときから姉妹病院で犬に囲まれていたし、こちらでもいつも犬と一緒にいるので、行動が“犬化”したのかもしれません」(末光さん)。

ミムラくんの犬のような行動は、かまって欲しいときにも出現するそうです。

「トリミングが長引いたりして食事を用意できないでいると、ミムラはそばに来て床にジャーっておしっこをするんです。まるで嫌がらせみたいに(笑)」。

そもそも猫は犬よりも、粗相をしない動物です。人や他の動物にあまり排泄行為を見せないように隠れたがり、室内飼育の猫であれば、猫砂などがある猫用トイレ以外ではほとんど失敗をしません。

「注目を得たいから、アピールしてるんでしょうか? いずれにしても、その行動も犬っぽいんですよね」(末光さん)。

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かまってほしいとアピールをするミムラくん

病院スタッフを顎で使う

喉が渇くと、ミムラくんはキッチン台にピョンと上り、蛇口に顔を近づけつつ、近くにいるスタッフに「水、出して」と目で訴えるそうです。

「水飲みボウルは、床にいくつも置いてあるんですよ。なのに、蛇口から出る水を欲しがるんです。『もぉ、ワガママなんだから~』と言いつつ、スタッフは笑顔でミムラの要求に応じています。何だろう……、ミムラには“かなわない”って思わせる魅力がありますね」と、末光さんは笑います。

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スタッフみんな、喜んでミムラくんの言いなりに

冬になると、病院スタッフの私服を置いてある棚に、ミムラくんは陣取ると言います。

「気に入らない洋服やアイテムは、手で払って床に落として、自分好みの寝床を作っています。『あ~、またやられた!』というスタッフの声が、ときどき奥から聞こえます(笑)。とにかく、自由すぎるミムラの院内生活ですね」(末光さん)。

供血ネコの生きる道は、自分を犬だと思いながら人を癒すこと!?

スタッフのバッグの上でスヤスヤ

供血のために姿が見えなくなると……

供血猫としての役目を果たす際、ミムラくんはしばらく姉妹病院に滞在します。

「あまり猫の輸血が必要になるケースはないらしく、ミムラの出番は年に数回しかないんですけどね。それでも、ミムラがいないとスタッフの笑顔が少ないような気がします。ミムラがいそうなところを、キョロキョロと探している自分に気づくこともめずらしくありません」と、末光さんは語ります。

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「きょうボクが見つけた寝心地満点の場所だよ」byミムラくん

そんなミムラくんは、いまやお客さんからも「ミムラくんは、どこにいるの?」と声をかけられるほど、大きな存在になっているようです。

「あまりの傍若無人ぶりに、スタッフもホテル滞在の犬たちも逆らえません(笑)。でも、その大きな姿が見えると、ほっとするんです。足元にスリスリ、撫でるとゴロゴロしてくれることも多くて、最近はミムラのインスタ(@kitazawa_mimura)まで始めるほどかわいくて仕方がありません」と、末光さんは頬を緩めます。

看板猫としても、スタッフのセラピーキャットとしても活躍する、大猫ミムラくん。きっときょうも、スタッフや来訪者の心を鷲づかみにし、目をくぎ付けにしているに違いありません。

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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