香港情勢~国際社会が積極的に中国を批判できない理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月21日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。香港情勢を巡る中国政府と国際社会の対応について解説した。

香港情勢~国際社会が積極的に中国を批判できない理由

会談を前に記念撮影する(左から)韓国の康京和外相、中国の王毅外相、河野外相=2019年8月21日、北京郊外(代表撮影・共同) 写真提供:共同通信社

河野外務大臣が中国の王毅外相と会談

河野外務大臣は20日、北京郊外で中国の王毅外相と会談した。会談では、来年(2020年)春に予定されている習近平国家主席の来日や北朝鮮の情勢について意見交換し、香港情勢については「大変憂慮している」との立場を示した。

飯田)中国訪問中、北京でさまざまな外交が繰り広げられています。21日は日中韓の外相会談、そのあとは日韓の外相会談も予定されています。

佐々木)香港のデモについてどういう議論がされたのでしょうか。河野さんは香港情勢について「大変憂慮しております。一国二制度の下で自由で開かれた形で発展してほしい」と、それが非常に重要であると伝えたということですが、王毅外相が何を答えたのかは明らかにされていません。

飯田)そうですよね。直後の報道陣向けのインタビューでも、河野外相は「言っている意味は分かっていただけたと思う」というようなことに留めています。

香港情勢~国際社会が積極的に中国を批判できない理由

天安門事件=1989年5月20日 写真提供:産経新聞社

香港問題を巡る中国への国際社会の対応~天安門事件のときとは異なる中国の存在の強さ

佐々木)曖昧ですよね。香港問題は国際社会が、いまの中国にどう対応するかという大きな試金石になっています。1989年の天安門事件で、中国は国際社会から猛バッシングを受けています。87年くらいに鄧小平が改革開放運動を始めたばかりで、当時の中国は経済力が弱く、ひどい国だと散々に言われてへこたれていたのですけれども、あのころと比べて経済力は強大になり、軍事的にも大きな影響力を与えています。もし仮に中国が強権に出て、天安門事件と同じように香港を蹂躙したとき、果たしてかつての天安門事件と同じように国際社会は強い対応に出ることができるのか。いまやEUは中国との経済的なつながりが強くなっていて、しかも距離的にも離れているので、あまり強く出ないだろうと言われています。日本としてもここで強く出ると、かつてはアメリカの後ろ盾があったから、日米の関係を強くすることで中国に対抗するということができた。けれどアメリカが徐々に撤退して来て、自国のなかに留まりつつあるという状況では、中国と敵対することは戦略上よろしくないという判断は日本政府としても働くわけで、仮に香港がそうなって行くとしてもあまり強く出ることができないのではないかと思います。

飯田)河野外務大臣は香港のデモが始まったときからツイッターなどで発言していますが、それ以外の首脳で何か言及したのは、G20での日中首脳会談の際に、総理が発言したくらいですよね。

佐々木)どうしていいかわからなくて戸惑っている、という状況なのではないでしょうか。

飯田)いまだったら安倍さん・トランプさんの関係がいいというところがあるけれども、更に長期的にアメリカとのことを考えるとそうなりますね。

香港情勢~国際社会が積極的に中国を批判できない理由

中国政府にとって国際社会よりも国内引き締めの方が重要

佐々木)中国は国際社会でどう見られているかということをもちろん気にしているのですが、それ以上に国内の引き締めの方が重要なのです。あの国は10億を超える人口を抱えていて、広大な面積であちこちにいろいろなパワーが潜んでいる。それを抑え込む中央集権勢力を作るには、大変な力が必要となります。国内で香港デモに乗じて新しいパワーが台頭しようとするのを防がなければいけないので、それを抑え込むことに全力を挙げるはずです。そのときに多少国際社会から何か言われても、いまや中国は気にしないという段階に来ている可能性はあるのではないでしょうか。

習近平氏と江沢民一派の2つの力のそれぞれの香港への見方

飯田)いろいろな見方が飛び交っていて、この間も台湾のメディアを見たら、「中国には2つの中央がある」とありました。習近平氏の中央と、上海を握っている江沢民一派の2つです。江沢民一派は、先ほど話題になった天安門事件のときを考えても、武力を使うのを厭わないのではないかと。一方で習近平氏は、人民武警を深圳に配置してデモンストレーションはやるけれども、それ以上はやらないのではないかという見方です。それとまったく違う見方もあって、江沢民氏の方は上海を見ていて経済を司っている部分があるから、香港の自由な空気で海外資本が流れ込んでいる強みなどの重要性をわかっているので、軍事的な動きを止めるけれども、北京の習近平氏はわかっていないから行ってしまうのではないかということです。

香港情勢~国際社会が積極的に中国を批判できない理由

深圳と香港を一体化させて新しい経済圏にするのが狙い

佐々木)真反対ですね。いま習近平体制になって完全独裁だと言われていて、まさか江沢民一派が生き残っていたというのも不思議な感じですよね。他のニュースを見ていると、長期的には中国政府は深圳と香港を一体化して、新しい経済圏にして行こうという目論見があると。2040年に一国二制度は終わってしまうわけだから、そうなると香港と深圳は名実ともに1つのエリアになる。中国に返還されたころは、香港は金融センターとして重要な場所だったのですが、経済的には地位が低下しつつあって、いまアジアの金融センターはシンガポールの方が大きい。同時に深圳の経済的意味も大きくなっています。中国の巨大企業は大体、深圳に本拠地を持っています。長い目で見れば、香港は深圳に飲み込まれてしまうでしょう。だからいまここは穏やかに終わらせておいて、長期的に香港と深圳を一体化した経済エリアにして行くというものが、中国政府の戦略ではないでしょうか。

飯田)確かに橋を架けて新幹線を通してという、そういう意味で削り取って行くような作業はどんどん進んでいるわけですよね。

佐々木)経済的にも、かつては香港が豊かで中国が貧しかったけれども、もはやレベル的には変わりません。

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