しゃベルシネマ

役になりきる!松山ケンイチ・東出昌大『聖の青春』 【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第83回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

映画の中には、実際の起こった出来事を映像化する“実話もの”と呼ばれるジャンルがあります。
そこで今回の「しゃベルシネマ」では、「羽生善治の最大のライバル」と呼ばれた天才棋士・村山聖の生涯を描いた『聖の青春』を掘り起こします。

病と闘いながら全力で駆け抜けた、わずか29年の生涯を描く奇跡の実話

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原作は、ブックレビューで「感涙の名作」「勇気が湧いてくる」などのコメントで五つ星を獲得、大絶賛されている大崎善生さんの渾身のデビュー作。
村山聖(さとし)は、「東の羽生、西の村山」と天才・羽生善治に並び称された実在の棋士。
29歳でこの世を去るまで、病と闘いながらも将棋にそのすべてを賭けた彼の人生を、師弟愛、家族愛、そしてライバルとの友情を通して描き出した、ノンフィクションエンターティメントです。

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主人公・村山聖を演じるのは松山ケンイチ、ライバル羽生善治に 東出昌大。
ほか、染谷将太、リリー・フランキー、竹下景子、安田顕、筒井道隆…と、個性あふれる顔ぶれが集結しています。
メガホンを取ったのは、『ひゃくはち』『宇宙兄弟』の森義隆監督。
原作に、そして村山聖という人物に惚れ込んだ森監督が、企画の立ち上げから実に8年という歳月をかけて完成させました。

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オドロキなのが、スクリーンに映し出される村山聖役の松山さんと羽生善治役の東出さんの風貌。
体重を20kg増量し、肉体面と精神面の両方から村山役に挑んだ、松山ケンイチ。
予告編が解禁になると同時に「羽生に瓜二つ!」と、世間を騒然とさせた東出昌大。
「そこに村山がいる」「羽生がいる」と、存在を揺るぎないものとする演技は圧巻。

一体どんな思いで、どんなアプローチで、それぞれの役と向き合ったのか。
映画を観終わった後、私のいちばんの興味の対象でした。

先日、本作の完成披露試写会が行われ司会を務めた時にも、当然のことながら役作りの話となり…。

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お二人に共通していたのは、それぞれのキャラクターの内面を追求したということ。
「役作りのために、お知り合いの方の話を聞いたり映像を見たりもしましたが、それだけではコピーになってしまう。
内面を創り上げることで、村山聖以上に村山聖になれるんだと信じて取り組みました」と、松山さん。
一方、東出さんも「羽生善治さんの役を演じることで、頭の中が真っ白な状態で何物にも囚われない“無の境地”のような次元を体感しました」と、撮影当時を振り返ります。

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森監督、竹下景子さん、安田顕さんも交えてトークセッションしているうちに、私はふと思いました。
撮影中の出来事を思い返すだけで、松山さんと東出さんの中には村山聖が、羽生善治がよみがえってくるのかなぁ〜、と。
それは舞台挨拶中盤に、今年5月に第74期名人戦で羽生さんを破って新名人となった、佐藤天彦名人が登場した時のこと。
佐藤名人に会った感想をお聞きしたところ、なんと松山さんが「叶うなら(佐藤)名人と対局したい!」と、申し出たのです。
その時の松山さんの背中からは、劇中で村山が対局に向かう時と同じ闘志がみなぎってました。
そして松山さんの言葉に、小さな声で「分かる!」とつぶやき、頷きながら微笑む東出さん。
その表情は、まるで“メガネを外した羽生名人”といった印象でした。

お二人の話からは「演じる」ということに全身全霊を賭ける苦しみ、そしてその苦しみを超えた人だけが知る喜びが感じられました。
そしてそれが、真摯に将棋と向き合う棋士たちの魂とリンクするものがあったから、この映画にホンモノの輝きをもたらしたのでしょう。

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聖の青春
2016年11月19日から丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:森義隆
原作:大崎善生(角川文庫/講談社文庫)
出演:松山ケンイチ、東出昌大、染谷将太、安田顕、柄本時生、北見敏之、筒井道隆、竹下景子、リリー・フランキー ほか
©2016「聖の青春」製作委員会
公式サイト http://satoshi-movie.jp/

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