北方領土返還問題が進まないのはなぜか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月12日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。停滞する北方領土返還交渉について解説した。

北方領土の元島民、空路墓参り

北方領土の元島民らが10日(土)、飛行機で択捉・国後島の墓地を訪問し、慰霊式を行った。空路での墓参りは、高齢化が進む元島民の負担軽減を目的に2017年から始まり、今回で3回目となる。およそ70人が参加し、11日に北海道の中標津空港へ戻った。

飯田)国後島で1ヵ所、択捉島で2ヵ所の墓地を回ったということです。2組に分かれての訪問だということだそうです。

北方領土問題はタイミングを逸したか~支持率が落ちるプーチン大統領

須田)このタイミングで墓参りということになったのでしょうが、この問題は国益が絡んでいるだけに、相当ナイーブになっています。そして事実上、暗礁に乗り上げている形になっていますが、北方領土返還も絡んでいますから、その辺りをどう扱うか。あまり譲歩しても日本国内に悪い感情を与えますし、国益を強く主張しても、今度はロシア側の感情が悪化してしまうと思うので、その辺りのバランスが相当難しいのだと思います。日本側としては、プーチン大統領の国内支持率が落ちて来ていて、なかなか北方領土問題が進みません。強いリーダーシップがあるならば、多少強引にやっても国内は抑えられたのだけれど、譲歩すれば自らの足元が崩れるので譲歩できない状況になってしまっている。そういった点で言うと、北方領土返還問題はタイミングを逸した感じがしますね。

飯田)プーチンさんの足元では、大規模なデモが起こっており、5万人規模まで膨れ上がっています。このあたりにも戦力基盤の陰りが見えるということですか?

須田)デモはこれまでも起こっていたのですが、情報統制で抑えていました。しかし、それがもうできなくなって来たということです。ロシアや中国といった情報統制をしている国にとって、恒常的にデモや抗議活動は起こっているのですが、それを抑えられているのかどうか。このような情報が漏れるということは、国内の締め付けが若干緩んでいると見るべきでしょう。

シベリア開発と北方領土問題は表裏一体

飯田)新聞などで報道されていますが、ロシア領土である主張を強めるという意味もあって、プーチンさんはクリミアでバイクに乗ってデモンストレーションをしたということです。

須田)クリミア共和国の大統領を乗せて。

飯田)サイドカーに乗せていましたね。

須田)ロシアにとって独立的な動きはクリミアだけではなくて、チェチェンやシベリアのサハ共和国など、分離活動は根強いのですよ。日本で報道されないのですが、シベリアの分離活動を押さえつけるためのシベリア開発というセンテンスがあるのです。シベリア開発に日本がお金を出す代わりに、北方領土ということで、経済的に成長・発展して行くことになれば分離活動も抑えられるというのがプーチンさんの読みなのです。ただ、逆に北方領土に手を付けるということは、また分離活動に火をつけてしまいかねないので、結果的に前へ進みません。これまで北方領土返還問題は、シベリア開発とコインの裏表で一体化していたでしょう。その理由が実はそこにあったのです。

飯田)共同の経済活動を続けることで、信頼醸成をして、返してもらおうという戦略だということも一部では解説されていますが、なかなか軌道に乗らないというところですか?

須田)先にお金を出して後で解決ということになると、出しただけで終わってしまう可能性も高いですから、そこのバランスも大事だと思います。

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