スポーツアナザーストーリー

広島・西川が灯籠流しに書き込んだ野球への思い

話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、8月6日に行われたDeNA戦で逆転2ランを放ち、勝利に貢献した、広島・西川龍馬選手にまつわるエピソードを取り上げる。

DeNAに勝利し、ファンとタッチする広島・西川(右)とアドゥワ=2019年8月6日 マツダ 写真提供:産経新聞社

「たまたまいいポイントで捉えられた。広島にとっては特別な日。そういう日に勝てたことはよかった」(西川)

広島に原爆が投下された8月6日、マツダスタジアムで行われた広島-DeNA戦。この試合は、野球を通じて、核兵器のない平和な世界を訴える「ピースナイター」として開催されました。

ピースナイターは、2008年に「折りづるナイター」として旧・広島市民球場で始まり、今年(2019年)で12回目。毎年8月6日前後に、マツダスタジアムで行われるカープの主催試合で開催されるのが恒例となりました。

球場には半旗が掲げられ、亡くなった方々への配慮で、鳴り物での応援は自粛。いつもとは違った雰囲気でゲームが行われます。カープナインも、ユニホームの袖に原爆ドームが描かれたワッペンを着けてプレーしました。

この試合はまた、首位・巨人を猛追する「2位・3位決戦」でもありました。試合前の時点で、2位・DeNAは巨人に0.5ゲーム差。3位・広島はDeNAに1.5ゲーム差。

巨人独走が一転、上位3強が2ゲーム差のなかにひしめく大混戦となったセ・リーグですが、逆転4連覇を狙う広島にとってはこの試合、絶対に負けられないゲームだったのです。

試合は2回、DeNAが3点を先制しますが、カープ打線はすぐに反撃します。DeNA先発は、6連勝中の上茶谷でしたが、2回、ルーキー・小園がタイムリーを放ち1点を返すと、3回には松山のタイムリーで、2-3と1点差に。

さらに4回、打順は下位打線に回り、2死ランナーなしで、打席には投手の9番・アドゥワ。打球はボテボテの三塁ゴロでしたが、アドゥワの全力疾走で一塁は微妙なタイミングに。アウト判定が、緒方監督のリクエストで覆り、内野安打になりました。

「バッティング練習は一応やっているので。その努力がたまたま……はい、出ました」(アドゥワ)

打順はトップに返って、斬り込み隊長の1番・西川。後半戦から1番に定着した西川ですが、アドゥワの全力プレーを無駄にしませんでした。左翼スタンドに、逆転の11号2ラン! 後半戦19試合で、実に6本目です。

これで波に乗ったカープ打線は、13安打で8点を奪い快勝。巨人が中日に敗れて6連敗を喫したため、順位は3位のままですが、ついに首位へ1ゲーム差に迫ったのです。

久々の3勝目を挙げたアドゥワと並んで、お立ち台に立った西川。後半戦、本拠地で何と3度目のヒーローインタビューです。

「ヒットでつなぐことを最優先に意識して、それが最高の結果になってよかったです」

その回の先頭打者なら、まず出塁。得点圏にランナーがいれば、ホームに還すことを意識して打席に立っているという西川。この試合でも、2安打2四球で5打席中4打席で出塁し、ホームランで2打点。1発もあり、勝負強い斬り込み隊長がチームの快進撃を支えています。

思えば、11連敗の泥沼にあえいでいた7月、巨人との差は最大で12ゲーム差(7月17日時点)ありましたが、後半戦は15勝4敗と巻き返し、1ヵ月経たないうちにほぼ並んでしまった広島。96年、11.5ゲーム差を長嶋巨人に逆転された過去がありますが、そのお返しの「逆メークドラマ」という言葉も囁かれるようになりました。

「特別な日を勝ちで締められた。ナイスゲーム」(緒方監督)

ピースナイター開催に合わせて、両軍の選手がメッセージを記した灯籠流しが行われましたが、「平和に野球できることの幸せ」と書き込んだ西川。こうやって野球が楽しめるのも、平和があってこそ。あらためて、その有難味を噛みしめた一夜でした。

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