あけの語りびと

「英語多読」の魅力~図書館の館長が、英語を学びたい人に勧める理由とは

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

市立米沢図書館館長・岸順一さん

電車のなかで英字新聞や洋書を読んでいる人を見かけると、かっこいいな、羨ましいなと思ったこと、ありますよね。年をとったら英語なんてもう無理、と諦めていませんか?

英語教材の宣伝ではありませんが、「英語多読」…英語を多く読むという勉強法が注目されています。

きょうの主人公は、山形県の市立米沢図書館館長・岸順一さん、62歳。もともと県立高校の英語教師をされていました。

利用者に説明している岸さん

「若い頃、授業を始めると、教室は台風のあとの稲穂状態……。生徒がベタッと机にうつ伏せで寝てしまうんです。英語の授業は教科書を読んで、日本語に訳すだけ。これでは生徒の興味も湧かないし英語力も伸びない。こんなことでいいのかな、と疑問を持っていたときに、英語多読の提案者、酒井邦秀(さかいくにひで)さんの本に出会ったんです」

その本に載っていた「多読三原則」。

1.辞書は引かない

2.わからないところは飛ばす

3.合わないと思ったら投げる

『ナセBA』外観(図書館&ギャラリー)

やさしい英語の絵本から始めて、少しずつ文字の多い本へ読書を広げ、やがてペーパーバックが楽しめるようになる。さらに「話す」「書く」ことも自然と身につく、という学習法です。

辞書を使わず、分からないところは飛ばし、嫌になったらやめて別の本を読む……。いままでの常識を覆す英語の学習法に、「これだ!」と思った岸さん。

「英語嫌いの生徒にも、うまく指導すれば効果が出ると思いましたね。ただ当時、英語の絵本を何冊も揃える予算がなかったので、教師時代は残念ながら断念せざるを得なかったんです」

英語多読の講座で挨拶する岸さん

去年(2018年)4月、市立米沢図書館の館長に就任した岸さんですが、気になった外国語の書棚はあまり活用されておらず、それも古い本ばかりでした。

「2020年から、小学校では英語教育が始まるんです。そこで、図書館で実施している『おはなしかい』に英語の読み聞かせを取り入れてみたら、いつもよりずっと多くの参加者があり、保護者の英語への関心も実感したんです」

英語多読のコーナー

さらにネットで調べると、50歳以上の3人に1人が「学び直したい」と考えていて、その第1位が「語学」。岸さんは高校の英語教師時代を思い出します。多読で使用する本は、オックスフォード大学が出版した絵本が中心で、個人で揃えるのは難しい。

「そうだ! そこは図書館の出番だ!」と多読関連の本を揃え、現在は1500冊の蔵書があります。「県内でいちばん! 東北でも、これだけ揃っている図書館はそうないと思いますよ」と、岸館長は胸を張ります。

「英語多読は、誰でも気軽に始められます。時間がかかりますが、生涯学習にはピッタリです。おじいちゃんやおばあちゃんが、お孫さんに英語の絵本の読み聞かせをすることは認知症予防にもなるし、お孫さんも英語に親しめて、まさに一石二鳥です」

画像提供・協力:オックスフォード大学出版局(株)

「英語多読」をして行くうちに、街で外国人を見かけると話しかけたくなるという効果もあるとか。

「米沢市も海外の観光客がたくさん訪れていますので、米沢弁まじりの英語と笑い声が米沢に広がってほしいです。例えば、リンゴ畑で農家のおじさんが、通りかかった外国人に『米沢のABCは、apple、beef、carpだ。このリンゴうめがら食ってみろ。Taste Good!』そんなふうになるのが私の夢ですね!」

画像提供・協力:オックスフォード大学出版局(株)

最後に、岸館長の座右の銘を伺いました。まずは英語で!

Where there is a will, there is a way……

わかりました? 江戸時代に米沢藩の財政を立て直した、上杉鷹山の教訓です。

「なせばなる、なさねばならぬ何事も、ならぬは人のなさぬなりけり」


岸さんが英語に興味を持ったのは、中学時代。オールナイトニッポンなどの深夜放送にハマり、ビートルズやサイモン&ガーファンクルなどの洋楽に出会って、自分も何とか英語が分かるようになりたい。それが英語教師になるきっかけだそうです。

ところが、受験勉強そっちのけで深夜放送を聞いていたので、目指していた高校に落ちて、中学浪人をしてしまった。1年後、目標の高校に進み、山形大学で英語を専攻して英語教師になり、最後は母校の校長先生になった! まさに「なせばなる!」ですね。

市立米沢図書館のホームページ
http://www.library.yonezawa.yamagata.jp

「英語多読」について、ご興味のある方は「NPO多言語多読」のホームページをご覧ください。
https://tadoku.org

酒井邦秀(さかいくにひで)
1945年生まれ。電気通信大学准教授を経て現在NPO多言語多読理事長。多読三原則を使った多読の提唱者。このごろはTadokuの研究と普及にいそしんでいる。著書『快読100万語! ペーパーバックへの道』(ちくま学芸文庫)他多数。

上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

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