梅の名所で知られる茨城で「食べられる梅」のブランドを開発、町を活性化している、老舗漬物店 【10時のグッとストーリー】

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日本三名園の一つとして知られる、茨城県・水戸の偕楽園。
園内には、およそ100種類、3千本の梅の木が植えられ、梅の名所としても有名です。

そのため「茨城は梅の産地」と思っている人も多いですが、実は、茨城産の梅の実は、これまであまり、全国に流通してきませんでした。

「観賞用の梅は、実は採れても小ぶりなので、加工には向かないんですよね」

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そう語るのは、茨城県・大洗で漬物の開発・製造と販売を手掛ける「吉田屋」の、大山壮郎(もりお)さん・38歳。
吉田屋は、天保元年に創業。江戸時代から180年以上も続く老舗で、大山さんは、社長を務めるお父さんのもとで「八代目」として会社を切り盛りしています。

「茨城は梅の名所なのに、和歌山の『南高梅(なんこううめ)』のような、地元産の梅ブランドがなかったんです。前から残念に思っていて・・・」

そんなとき、東日本大震災が発生。
大洗も、海沿いの地域が津波に襲われ、大きな被害を受けました。
吉田屋も、店舗は無事でしたが、海の近くにあった創業以来の蔵が全壊。

「このままでは、町に元気がなくなってしまう。震災の痛手から立ち直るためにも、茨城の梅ブランドを立ち上げよう!と決意したんです」

梅ブランドを作るためには、質のいい梅を安定して出荷できる生産者を確保する必要があります。
初めのうちは、なかなか協力してくれる農家が見付かりませんでしたが、あるとき大山さんは市町村合併で現在「かすみがうら市」になった、茨城の千代田町という地域で、年間8トンもの梅が出荷されていることを知ります。
しかもここで生産された梅の実は、和歌山産の高級梅にも決して劣らない、高い品質のものでした。
大山さんはさっそく、生産者の組合「千代田梅部会」に行って、梅ブランドの話を持ちかけましたが、農家の反応はほとんどが「反対」。
理由は、手間が掛かるため。
さらに梅の買い取り価格は不安定なため、大量に生産しても、儲けが出ない恐れがあったからです。
ここもダメだったか…と思いかけたとき、組合の長老が突然、こう言いました。

「これからは、加工品の時代だ! 協力しようじゃないか」

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この一言がきっかけで、農家も全面協力。
大山さんは、生産者のやる気を高めるため、作った梅は、常に適正価格で吉田屋が買い取ることを約束しました。

一方、品質を維持するため、梅の熟し具合を示すカラーチャートを作って農家に配り「この色になったら摘んでください」と指示。
完熟度を統一したのです。そんな工夫を重ねた末、2013年2月ついに茨城県初の梅ブランド「常陸乃梅」が立ち上がりました。

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大山さんは、まず加工品の第1弾として、梅の実をシロップにつけ込んだ「梅シロップ」を製作。
これが評判を呼び、続けて発売した「常陸乃梅」の梅干しも、好調な売り上げを記録。
生産量をもっと増やさないと、加工する梅が足りない状況になりました。

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さらにおととしの春、吉田屋の店舗の横に、梅専門カフェ「WAON(わおん)」がオープン。
「いいハーモニーを奏でるように」という願いを込めたこのカフェは、梅を使ったスイーツが名物です。
大山さんの奥さん・かおりさんがケーキ教室に通って、レシピを考えました。

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こうして「梅で茨城を元気にする」という夢を実現しつつある大山さんですが、まだまだ、地元のために、やりたいことはたくさんあります。

サッカーが大好きな大山さんは、2006年「FCヴェレン大洗」というクラブチームを結成しました。
将来の夢は「Jリーグ入り」。

「大洗は、よそに出て行った子が戻ってこない町でした。でも、地元に夢があるものを作っておけば、彼らもいつか、ふるさとに戻ってきてくれると思うんです」

【10時のグッとストーリー】

八木亜希子 LOVE & MELODY 2016年4月9日(土) より

八木亜希子LOVE&MELODY