高崎駅「川魚鮨」(1,000円)~湯檜曽ループ、下から見るか?上から見るか? 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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E129系,水上行

E129系水上行

新潟の新しい主役・E129系電車は”国境の長いトンネル”を抜けて群馬・水上までやってきます。
水上の北側は湯檜曽(ゆびそ)・土合(どあい)の2駅が群馬県で、土樽(つちたる)から新潟県。
小説「雪國」の追体験には上越線の普通列車が欠かせないのですが、上越国境を越える定期普通列車はわずかに5往復。
2016年のダイヤでは、水上発は8:24・9:47・13:40・17:48・20:42、越後湯沢発は6:12・8:13・12:04・15:08・17:53のみです。
越後湯沢駅では午後6時前に『本日の水上方面最終列車となります!』と注意喚起のアナウンスがあります。

湯檜曽駅

湯檜曽駅

湯沢から水上へ向かう上り列車のハイライトは、何と言っても「湯檜曽(ゆびそ)駅」です。
湯檜曽駅の上りホームは、今から乗る列車を「はるか上」に見ることが出来るんです。
この日も列車を待っていると、上のほうからカタンコトンと音が聞こえてきました。
スグ、音のする方へ目をやれば、長岡からのE129系電車が軽快に走行。
しかし列車は、そのまま山の中へ消えていってしまいます。

湯檜曽ループ

湯檜曽ループ

どうなっているのか、湯檜曽の温泉街へ足を運ぶと、温泉街にかかる鉄橋の真上を横切る線路が見えました。
実は上越線のこの区間は「ループ線」になっているんです。
今は上り専用ですので、このループは下るだけですが、昭和6(1931)年に開通した時は単線。
真っすぐ登ると勾配が急過ぎますし、当時は長大トンネルを掘る技術も未熟でした。
そこでループトンネルでぐるりと弧を描いて勾配を稼ぎ、9,702mの清水トンネルで上越国境を越えた訳ですね。

湯檜曽ループ車窓

湯檜曽ループ車窓

このループ、湯檜曽駅のホームで「下から見る」ことが出来るということは・・・?
当然、湯沢方面から水上行に乗れば「上から見る」ことが出来ます。
長岡(越後湯沢)から乗る時は、進行方向右側を狙って乗車。
土合駅を出て3~4分、眼下に現在の湯檜曽駅ホームが見られます。
なお、清水トンネルの土樽側にも松川ループというループ線がありますが、コチラはほとんどトンネルでループを確認することはできません。

E129系電車,湯檜曽駅入線

E129系電車・湯檜曽駅入線

先ほど上に見えたE129系電車が、3分ほどで湯檜曽駅に入線してきました。
すごく高い所に見えた列車が、目の前に入ってくるのはちょっと不思議な感じ。
地図を見ればループしているのは一目瞭然ですが、現場だとワクワク感がプラスされますね。
この高低差を実感したい場合は、関越交通の「ゆびそ温泉」バス停から、旧湯檜曽駅の跡へ急坂が続いています。
実は湯檜曽駅、昔はループした上に駅があったんです。
今、行くことが出来る昔の駅前まで登るだけでひと苦労。
このキツい勾配をループで緩くして、列車がトコトコ走る様子を思い浮かべれば、少しほのぼのした雰囲気も感じます。
ただ、旧湯檜曽駅の入口には、上越南線殉死者の慰霊碑があって、調べれば実に60人もの方が犠牲に・・・。
多くの方の犠牲の上に成り立っていることに思いを馳せながら、いつまでも大事に使いたい「上越線」です。

林屋旅館

林屋旅館

さて「湯檜曽駅」を訪れたからには、湯檜曽温泉にも入っていきたいところ。
地名に「湯」と入っているくらいですので歴史は古く、鎌倉時代から室町時代にはあったようです。
いつも新幹線でスルーしていたエリアなので、私にとっても初めての湯檜曽温泉です。
今回は大正11(1922)年創業、老舗の「林屋旅館」で日帰り入浴(800円)を楽しむことに・・・。
コチラのお宿、昭和初期には与謝野晶子・鉄幹夫妻が泊まったこともあるのだそうです。

湯檜曽温泉

湯檜曽温泉

昭和初期そのままの造りというタイル貼りの大浴場に一歩を足を踏み入れると・・・、おーっ!感動のサラサラ掛け流し!!
目の前で透明な温泉が、止めどなくオーバーフローされていきます。
注がれているのは、41.4℃、ph7.9、成分総計360mg/kgの単純温泉。
成分は濃くありませんが、ナトリウム・カルシウム、塩化物、硫酸塩などが多めで、入るだけでとても爽快感があり、よく温まります。
いやぁ、この優しいお湯を今までスルーしてたのは勿体なかった!

川魚鮨

川魚鮨

さて、駅弁も山の味が恋しくなってくる頃。
高崎駅弁を手がける「高崎弁当」の定番の1つ「川魚鮨」(1,000円)がリニューアルされていました。
先月9月21日から、このバージョンになったばかりだそう。
前は大きなボックスに入っていましたが、掛け紙をかけたコンパクトな形になりましたね。
お値段もちょっとお求めやすくなって、気になる中身は?

川魚鮨

川魚鮨

「川魚鮨」はイワナの押寿しとギンヒカリの押寿しが、ハーフ&ハーフになっている駅弁です。
イワナの白身とギンヒカリのサーモンピンク、以前は単純に並列でしたが、対称的な詰め方をして紅白の彩りをひと工夫。
この『丁寧さ』を感じられると、「駅弁」って一気に美味しく感じるんですよね!
ちなみに「ギンヒカリ」は、群馬県がおよそ10年をかけて開発した最高級ニジマス。
通常2年のところ、3年かけて成熟させ、滑らかな食感が特徴、群馬県内でも食べられる場所が限られた魚です。
勿論、川魚特有の臭みも無く、プラスチック製の小さなナイフで切り分けて、サッパリといただけます。
水のきれいな谷川連峰を望んで走る、上越線のお供にはピッタリの駅弁と言えましょう。

水上駅

水上駅

下り線の「モグラ駅」と上り線の「ループ線」。
列車本数は少ないですが、水上~土合間で並行して運行される谷川岳ロープウェイ行の路線バスを併用すると、タイムロスを減らすことも可能です。
これから辺りは紅葉が美しくなり、やがて雪国へ・・・。
加えて、高崎~水上間のSLや世代交代が進む115系電車など、鉄道的にも見どころいっぱいの「上越線」。
敢えてたっぷり時間をかけ、上越国境を鈍行で越えてみてはいかがでしょうか?

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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