スポーツアナザーストーリー

石川遼 優勝は不可能だと思っていた

話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、7月7日の日本プロゴルフ選手権で3年ぶりのツアー勝利と、メジャー制覇を成し遂げた石川遼選手のエピソードを取り上げる。

ゴルフの日本プロ選手権で優勝し、倉本昌弘・日本プロゴルフ協会会長(左)から優勝トロフィーを受け取る石川遼=2019年(令和元)年7月7日、鹿児島県のいぶすきGC 写真提供:共同通信社

「信じられません。いままでの優勝でいちばん興奮した。落ちるところまで落ちて、優勝は不可能だと思っていた」

7日に行われた、男子プロゴルフツアー・メジャー第2戦の「第87回日本プロ選手権」で、石川遼(27)がプレーオフを制し優勝。2016年8月以来のツアー通算15勝目を飾りました。メジャー勝利は、15年の日本シリーズJTカップを制して以来の2勝目です。

九州を中心とした大雨の影響で開幕が1日遅れた今大会は、7日に36ホールの決勝を行うことが決定。6日に第2ラウンドを終えた時点で、石川は通算10アンダーで首位に立っていました。ところが……朝から行われた第3ラウンドは、アイアンが不調でボギー、ダブルボギーを連発。一時は首位と7打差まで後退したのです。しかし、そこで勝負を捨てなかった石川。

「『こんなはずはない』と思う自分と闘っていた。まずは、良いショットを打てるように頑張ろうと」

気持ちを切り替え、自分のゴルフを立て直して行った石川。第3ラウンド終盤、3連続バーディーを決め、首位と4打差の6位に再浮上。

午後の第4ラウンドでもじわじわと差を詰め、15番を終えた時点で、首位の黄重坤(ハン・ジュンゴン、韓国)とは3打差。16番をバーディーで2打差に詰めると、17番で、黄がダブルボギー。石川はパーセーブで、ついに黄に追い付いたのです。

勝負はプレーオフにもつれ込み、まずは18番・パー5での再勝負。石川が豪快にドライバーを振り抜いた第1打は、一瞬OBかと思われましたが、右のカート道に当たってフェアウエー中央へ。第3打、4mのイーグルパットをねじ込んで、奇跡の逆転優勝を果たしたのです。最後のパットは、いままでの優勝のなかでもいちばん興奮したと言う石川。

「自分の読んだラインを信じた。あのパットは必ず最後に右に曲がってくると思って打てた。残り50センチくらいでボールが曲がって行って。信じられない気持ちです」

思わず嬉し涙を流した石川。実は、ツアー初勝利も、悪天候によるスケジュール変更を乗り越えてのものでした。

いまから12年前の07年5月に岡山で行われた、マンシングウェアKSBカップ。当時石川は15歳で、まだアマチュアでした。今回と同様、第1ラウンドが強風で中止になり、最終日に決勝ラウンドの36ホールを実施することに。石川は第3ラウンドを終えた時点で9位に浮上。同日に行われた最終ラウンドは66で回り、7打差を大逆転。15歳と245日で、ツアー史上最年少Vを飾ったのです。

その後プロとなり、華々しい活躍を遂げた石川ですが、16年8月に国内ツアー14勝目を挙げて以降、腰痛や不振で、優勝から遠ざかることになりました。13年から本格参戦した米ツアーでも出場権を失い、昨年(18年)から国内ツアーへ復帰。史上最年少の26歳で選手会長に就任し、久々に国内ツアーにフル参戦しましたが、未勝利という屈辱を味わうことに。

今年(2019年)は腰にヘルニアを発症し、4月に戦線を離脱。復帰した5月の中日クラウンズでは腰痛が再発し、プロになって初めて試合を棄権しました。

「10代の頃からは身体も変わった。年月が経ったにも関わらず、自分の身体に対して傲慢さがあったというか、甘く見ていたところがあった」

初の棄権に大きなショックを受けた石川は、これまでの調整法を反省。トレーナーとも相談し、腰痛防止のため、バーベルなどを使って筋トレを行いました。この大会でも、第1ラウンドが中止になると、ホテルの自室でトレーニングに励んでいたそうです。

そんな地道な努力が実った、今回の日本プロ。悪天候で開催を巡っては論議がありましたが、石川には選手会長としての責任感がありました。

「大会が開催されるからには、自分が勝って『大会を開催してよかった』『盛り上がったね』と皆さんに思ってもらえるように、頑張りたかった」

これで石川は、5年のシード権を獲得。報道陣を前に宣言した次なる目標は、2020年・東京オリンピック出場と、米ツアーへの再挑戦です。

「世界は常に目指しています。富士山を登ったら、僕はエベレストを狙いたい。アメリカにいたときは、装備が不十分な軽装でエベレストを目指していたのと同じ。足りないことと向き合って、目的を持ってアメリカに行きたい」

石川のプロゴルファー人生、第2ラウンドの幕開けはこれからです。

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