日本バス友の会と資料室・第二の人生をバスに捧げる73歳 「あけの語りびと」(朗読公開)

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
上柳昌彦あさぼらけ 『あけの語りびと』

今朝はバスに魅せられた、城谷邦男(しろたにくにお)さんのお話です。

城谷邦男,日本バス友の会

城谷さんは、現在73歳。
日本バス友の会』の顧問をされています。
バスが好きになったのは、ひょんなことが、きっかけでした。

東京理科大学を卒業し、クラリオンに入社します。
クラリオンといえば、戦後、日本初のカーラジオを開発したカーステレオ、カーナビのトップメーカーとして知られています。
城谷さんは、営業部門のシステム開発に携わり、一日中、コンピュータを相手に仕事をしていました。

隣の部署は、宣伝部。
初代クラリオンガールのアグネス・ラムが大ブームとなり、猫の手も借りたい忙しさ。ある日、宣伝部から声がかかります。

「城谷くん、旅行が好きなんだって?カメラの腕も相当らしいね。今度、PR誌を作るんだけど、ちょっと、手伝ってくれないかな。」

クラリオンバス機器ニュース

クラリオンは、路線バスの案内放送装置、つまり……、(次は有楽町駅です。お降りの方はブザーでお知らせください。)
あの装置で全国シェアの8割を占めていました。
取引先のバス会社に配るための、PR誌を作ることになって、城谷さんは、その手伝いをすることになりました。

クラリオンバス機器ニュース
クラリオンバス機器ニュース

バス会社を訪ね、取材し、写真を撮り、原稿を書き上げると、宣伝部長から、

「さすが理系だな。きっちりした、いい文章だ。君は、宣伝に向いているから、こっちに来なさい。」

と、宣伝部へ引っぱられました。

その頃の城谷さんは、全くバスに興味はありませんでしたが、新しいことにチャレンジするのは、好きな性格。
宣伝部に移ると、もう1つ、大きな仕事を任されます。
それは、6代目クラリオンガール、烏丸せつこさんの担当でした。

「マネージャーのような仕事でしてね、イベントや写真撮影会などへ、烏丸せつこさんを連れて現場を回る仕事でした。私もまだ若く、まわりから、羨望とともに、からかわれましたね。もちろん、同時に、PR誌も作っていまして、6年間で、全国100社ほどのバス会社を取材しましたね。」

クラリオンバス機器ニュース

当時、バスに関する雑誌や書籍が、ほとんどない時代、バスファンが、どこで聞きつけたのか、「PR誌がほしい」と、電話が来るようになり、その数が100人を越えて、こんなにバスファンがいるんだと、城谷さんを驚かせます。

「お礼の手紙が届いたり、会社に訪ねてくるファンもいましてね、その頃になると、私も、すっかりバスの魅力にハマっていたんですよ。同じように見えるバスですが、デザインや形が、電車以上に、種類がありましてね、知れば知るほど、奥が深く、面白いんです。」

華やかな宣伝部で6年過ごし、品質管理の課長になった城谷さん。
その後も、バスファンとの交流が続いたことから、全国のバスファンとネットワークを作ろうと、いまから36年前の昭和55年、『日本バス友の会』を立ち上げます。
すると、今度は、雑誌やテレビ局から、問い合わせが殺到します。

「まだ携帯電話がなくて、職場に電話がかかってくるんですよ。仕事にならないときもあって、いろいろ悩んだ末、50歳で脱サラ!子供が、まだ中学生と高校生でしたが、『バス文化の向上』のために、第二の人生を、バスに捧げようと、決意したんです。」

現在会員は、北海道から沖縄まで500人ほど。
「全国路線バス大百科」などの出版や、旅行会の企画、さらに、ボンネットバス3台をはじめ、産業文化財として貴重な、16台のバスを保存し、イベントや映画などに貸し出しています。

ボンネットバス

2年前、城谷さんは、埼玉県ふじみ野市に『バス資料室』を開設。
バス好きが集まる情報交換の場にもなっています。

バス資料室
バス資料室

路線バスに乗って、小さな旅をするのが好きだという城谷さん。
最後に、こんな話をしてくれました。

「私は、田舎のバスに乗った時、お年寄りに話しかけてみるんですよ。おばあちゃんは、みんな話好きでね、あれは秩父のバスだったかな?『あんた、どっから来たの?』から始まって、だんだん話が弾むと、『私、次で降りるけど、うちに寄って、お茶、飲んでいきなよ』先があるからと断ると、『だったら、これ、持って行きな』渡されたスーパーの袋を、バスを降りてから、そっとのぞくと、野菜の天ぷらが入っていたんです。おばあちゃんが、お昼に食べるものを、くれたんですね。田舎の路線バスは、こんな触れ合いが、今も残っているんですよ。」

2016年9月28日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

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