14歳で異物誤飲の手術をするか!? 元気な愛犬を前に葛藤

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【ペットと一緒に vol.150】by 臼井京音

14歳で異物誤飲の手術をするか!? 元気な愛犬を前に葛藤
筆者の愛犬リンリンが14歳を迎え、胃内に異物が見つかりました。これまで何度も異物誤飲で手術をしているリンリンにとって、何が最良の選択か。今回は、筆者の葛藤の記録をお届けします。

 

クッシング症候群かもしれない

筆者の愛犬のリンリンが、4月に14歳になりました。そこで健康診断を動物病院に依頼したところ、血液検査の数値からクッシング症候群の疑いがあると告げられ、レントゲン検査では胃内の異物が発見されました。

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動物病院の帰りに立ち寄ったカフェで

クッシング症候群とは、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されて起こるため、副腎皮質機能亢進症とも呼ばれています。多飲多尿になり、初期は食欲が過剰になったり、脱毛などの症状が見られます。リンリンも少し思い当たる症状があったので、再度の血液検査と、新たに超音波検査を行いました。

結果は、血液検査はすべて正常数値。超音波検査でも、副腎、腎臓、肝臓ともに大きさなど異常は見られませんでした。「よかったですね。でもシニア犬で、しかもテリア犬種はクッシング症候群にかかりやすいので、定期的に血液検査などを行いましょう」と、かかりつけの獣医師から言われ、ほっとすると同時に何度もうなずきました。

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リンリンの14歳の誕生日に撮影

異物誤飲を繰り返すリンリンとの生活

ノーリッチ・テリアのリンリンはこれまで、実は何度か異物誤飲をして、緊急手術をしたことがあります。腸閉塞になり、命の危機が迫ったときもありました。同居しているリンリンの娘犬のミィミィは、筆者が同じように育てたのに、10年間で1度も異物誤飲をした経験がありません。

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いつも筆者の脚元でへそ天で眠るミィミィ

リンリンは、携帯の充電コード、テーブルの上に置いた歯間ブラシ、娘の髪留め、子供用のプラスチック製のおもちゃなど、何でも食べてしまいます。さらに、老犬になってからは散歩中にドッグフードサイズの小石を見つけるやいなや、すぐに口にしてしまうように。視力が衰えたせいかもしれませんが、その異常な食欲という点も、クッシング症候群を疑った理由のひとつでした。ちなみに小石は、うんちでほとんど排出されます。

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リンリンのレントゲン画像(胃内異物の金属は真っ白に写ります)

リンリンは生粋のテリア気質で、好奇心旺盛でエネルギーが豊富。そのため、つい最近まで散歩中は人の少ない公園でロングリードにしてボール遊びをしたり、室内でも知育玩具遊びやノーズワークや脳トレをしたり……。可能な限り、退屈にならないように作業意欲を満たす努力をして来ました。「なのに……」と、携帯の充電コードなどを口にするたびに泣きたい気持ちになります。

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おやつを仕込んだおもちゃで遊ぶリンリン

動物病院にリンリンが手術入院するたびに肩を落とす筆者に、友人や家族は「ミィミィだって同じように育てたんだから、リンリンが少し特別な性格なのかもよ」と言ってなぐさめてくれます。

確かに、誤飲を防ぐべく最大限に気を付けてはいます。最良の予防策は、リンリンをサークル内や区切ったスぺースで過ごさせること。でもこれでは、リンリンのQOL(生活の質)が下がってしまうので、ミィミィと同じようにほとんど自由にさせています。

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いつもお気に入りの場所でリラックス

悩ましすぎる胃内異物の処置

リンリンの胃内異物は、これまで1~2回しか手術をしていないのであれば、血液検査などでも問題なく持病もないので、筆者も手術による摘出を選択するでしょう。ところが、これまで複数回手術を行っているので、獣医師からは臓器の癒着があるだろうと告げられています。そうなると、手術時間は通常より長くなり、麻酔の投与量も増やさなければなりません。手術のリスクが高くなっているのです。

14歳という高齢犬のため、術後の回復に時間がかかったり、手術をきっかけにぐっと体が衰えてしまう可能性もあります。それを思うと、正直すぐに手術に踏み切れません。

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この眠り方は、果たして心地よいのか……

超音波検査の日に1度は手術の仮予約をしたのですが、よく考えた結果、やはり手術をしないで様子を見ることに。

リンリンはよく食べて良好なうんちをして、元気に過ごしています。胃内に何年間も異物を抱えたまま、健康で過ごした犬もいると聞きます。ちょうど犬友が、同じノーリッチ・テリアを15歳3ヵ月で老衰で亡くしたことも決断に影響しました。「あと数年かもしれないリンリンの犬生、このまま元気に過ごせるかも……。ぜひそうなってほしい」と。

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つい先日の散歩中の1コマ 元気!

リンリンの体調の変化

手術をキャンセルし14歳と2ヵ月目に突入したある日、リンリンに軟便が続くようになりました。さらに、早朝に黄色い胃液を吐くことも。

「そういえば、異物誤飲で腸閉塞になった初期症状は、下痢と嘔吐だったな」。筆者は警戒をしながら、車で10分で駆けつけられる、24時間対応可能なかかりつけの動物病院へ行くケースの想定を始めました。

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「え? 何か?」byリンリン

ところが、軟便は2日間、数日後に生じた嘔吐も3回くらいで収まりました。筆者は獣医師への取材経験で、季節の変わり目で寒暖差が続いたり、低気圧が訪れている日は、犬は胃腸の調子を崩しやすいと知っていました。リンリンも、そのような状態なのかもしれません。特に老犬なので、いままでよりも体調を壊しやすくなっているでしょう。

獣医師の友人に相談をしたところ、「動物病院へ駆け込んで緊急手術をするにしても、15歳になるといまよりもリスクが上がるのは事実。もし14歳半でも老犬にしてはすごく健康体と言えるならば、そこで手術をするという選択肢も、やっぱりアリかもしれないよ」と。筆者の悩ましい日々は、まだ続きそうです。

確実に言えるのは、先のことは誰もわかりません。だからこそ、リンリンとの1日1日を、リンリンの笑顔が増えるように大切に過ごしたいと思います。

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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