中国とロシアが国交樹立から70年~それでも脆弱な両国の関係

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月7日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。習近平国家主席の訪露の報道から、アメリカに対する中国とロシアの関係について解説した。

中国とロシアが国交樹立から70年~それでも脆弱な両国の関係

モスクワで握手する中国の習近平国家主席(左)とロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ)=2019年6月5日 写真提供:時事通信

中国とロシアが国交樹立から70年、対米連携をアピール

2019年は中国とロシアの国交樹立から70年にあたる。6月5日から習近平国家主席がロシアを訪問していて、様々な記念行事も実施されている。わかりやすいところでは習近平氏とプーチン氏の5日の会談の後、モスクワ動物園を訪れてパンダの贈呈式に出席した。中国はオスとメスのジャイアントパンダを友好のしるしとして有償でロシアに貸与している。なお、習氏は現地時間の7日までロシアに滞在する予定。

飯田)パンダを贈ったり握手をしたり、いろいろしていますね。

宮家)もともと世界には様々な国があるけれども、私の経験で言うと、大陸にあって、国境が陸上で接している国同士で仲のいい国はないのですよ。

飯田)ないのですか。

宮家)例えばフランスとドイツ、ポーランドとロシアとか。アメリカとカナダだってそうですからね。

飯田)仲が悪いのですか?

中国とロシアが国交樹立から70年~それでも脆弱な両国の関係

ロ、在日米軍で回答要求  モスクワで記者会見するロシアのプーチン大統領(タス=共同)=2018年12月20日 写真提供:共同通信社

中国とロシアは弱者同盟~妥協の産物

宮家)ええ。であれば、中国とロシアの仲がいいわけがないでしょう。でも、アメリカとカナダなんて似たような人種構成ではないですか。ところが、中国とロシアは人種も文化もまるで違うのですよ。この2つの国が対米連携をアピールしていますが、それはいまアメリカとの関係がどちらも悪いからです。しかし、アメリカとの関係がよくなったらどうしますか? アメリカを取りますよ、それはアメリカの方がいいに決まっているのだから。今の中露は一種の弱者同盟なので、うまく機能するとは思いません。そして特に今言えるのは、アメリカと中国の関係がおかしくなっている。きょうの日経新聞に非常に良い記事が出ています。フィナンシャルタイムズの人が書いたのですけれど、イギリスの知性が米中関係をどのように見ているかという意味で参考になると思います。簡単に言うと、米中がいまやっていることは間違いである、間違いだけれどこれが現実であると。アメリカと中国は100年戦争だと言っているのです。

飯田)日経新聞の5面、オピニオンのところに出ております。『米「対中100年戦争」の愚』 、フィナンシャルタイムズのチーフ・エコノミクス・コメンテーター、マーティン・ウルフ氏が長文を書いています。

宮家)要するに、アメリカと中国の関係が抜き差しならない険悪な状態になると、プーチンさんの身になって考えて下さい。アメリカと中国はこれからそうとうの大ゲンカをする。そのときにロシアの利益を考えたら、中国について一緒にアメリカと喧嘩しますか? そうしたら共倒れになる可能性がありますよ。私なら、とにかくアメリカに「お手伝いしてもいいですよ。そのかわり、クリミア併合のときの経済制裁を何とかしてください。何とかしてくれるのだったらそちらにつくから」と言うかもしれない。その方がロシアにとって利益が大きいかもしれません。中露とはその程度の関係ですよ。
両者は戦略的な同盟国ではなくて、あくまで戦術的な協力者、妥協の産物です。そういうものだと考えたときに、アピールをするのはけっこうだけれど、実はそこに弱点があると見ています。もちろん当面両者は協力しますよ、両方ともアメリカとの関係が厳しいから。しかしその後、中国が強くなりすぎたときにロシアがどう対応するか。ロシアは中国ではなく、他のオプションを考えるかもしれない。中露はまだまだ脆弱な関係だと思います。

人種問題が復活~根底にある人間の性

飯田)潜在的には、かつて中ソ対立というものもありました。

宮家)さらに言えば、その前のロシア皇帝は黄禍論と言って、人種差別的なことをやっていたわけですから、それが今も残っていないはずがないのですよ。その意味でも、ロシアと中国は決して蜜月ではないはずです。

飯田)普通の三角関係的なもので二者対立があったら、もう一方は勝ち馬に乗るかと思いきや、ロシアの歴史的背景まで考えると、おいそれと中国に乗るよりはと考える。

宮家)ロシアにとっては中国が大事なのではなくて、ロシアの国益が大事だから。

飯田)逆にアメリカの視点から考えると、いまはロシアゲートなどもあって難しいかもしれないけれど、そういう条件を一切取っ払ったら、ロシアに接近すると。

宮家)もう一点、非常に危険なことが先ほどの日経新聞に書いてあったのですが、アメリカ国務省で戦略問題を担当している政策企画局長が、米中の対立について「白人国家でない大国と戦う初めての経験となる」と言っていると書いてあるのです。米国の国務省の局長が公式に発言したのですよ。ちょっと待て、日本と戦争したのではなかったのかと。つまりこれは、米中問題が実は人種問題でもあり得るということを鋭く突いているのです。人種問題という古い考えが復活していると考えるべきです。

飯田)それでは宮家さんが常々指摘されている、1930年代の世界に戻っているという点は、人種問題のようなものも含めて。

宮家)もちろんです。いい意味で日本はいま名誉白人です。だから中国と対立することについて、「非白人と戦うのは初めてだ」なんて言っているのだけれど、実はそうではないのですよ。

飯田)70年前の記憶が薄れてしまって。

宮家)人間の性はそんなものですよ。いつも言うのだけれど、グローバリゼーションと言っても、経済システムをグローバライズするのは簡単ですが、人の心をグローバライズするのは難しいのです。やはり人種があり、家族があり、親があり、歴史があり、伝統や民族がある。その部分は人間の性として残る。それを前提に国際政治を考えなくてはいけない時代が来ている、またそんな時代に戻ってしまっているなと思います。

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