メイ首相辞任後~イギリスはどうなるのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月7日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。イギリスのメイ首相の辞任とその後のイギリスの行方について解説した。

国際主義とダークサイドを象徴する2つの保守に分かれるイギリス

EUヨーロッパ連合からの離脱問題を巡る行き詰まりから、5月に退陣表明をしたイギリスのテリーザ・メイ首相(62)が、現地時間6月7日、与党保守党の党首を辞任する。後継の就任まで党首代行として首相職にはとどまる見込みだが、メイ首相はレームダック(死に体)の状態で、総選挙での過半数割れや議会の抵抗など、目算が外れ続けたおよそ3年の政権だった。

飯田)登場した当初は…。

宮家)鉄かと思ったのですけれど、プラスチックでしたね。しかも溶けて蒸発してしまったということです。しかし、彼女のせいだけではない。以前も申し上げた通り、イギリスの国内政治自体が変質したことの結果です。彼女はその犠牲者だと思います。よく3年頑張りましたよ、ありとあらゆることをやったでしょう。解散して、勝つかと思ったら負けてしまって、益々エネルギーがなくなって、どんどん消耗して行った。結局、何が起きているかと言うと、イギリスの保守層が2つに割れて行くということでしょう。国際主義の保守と、イギリス国内のダークサイドを象徴するような保守、保守陣営がその2つに分かれて行く。そのなかで彼女は股割きにあってしまった。彼女がいなくなって恐らく出て来るのは誰かと言えば、それは強硬なブレグジット派、EU離脱派でしょう。そして、6日にもう開票しているのかもしれませんが、補選があるのですってね。イングランドですから、離脱派がとても多いところです。スコットランドでやるのならまた話は別なのだけれど。

飯田)スコットランドはEU派が多いですよね。

宮家)ええ。たかが補選、されど補選なのですよ。ナイジェル・ファラージさんがやっているブレグジット党というものが出て来ていて、この選挙区は60%以上が離脱に賛成したのですってね。予想では、ブレグジット派が勝つというんでしょう?仮にそうなれば、ますます強硬派は勢いを得て混乱が拡大しかねません(注:同補選の結果は予想に反して労働党候補が議席を守った)。

ボリス・ジョンソン氏というまた変わった人がいて、トランプさんと仲が良いのですが、そういう人が出て来てイケイケ、離脱せよなどと言ったって、状況が変わるわけではない。10月31日がデッドラインですが、ここまでに何も起きないと、またまたデッドラインを延期するか、それとも合意無き離脱になるか、ということで再び大騒ぎになります。

飯田)ボリス・ジョンソンさんは期限が来たら、特に離脱案のような協定案がなくても、どんどん離脱してしまえという人ですものね。

宮家)何の目算もなく、よくそんな無責任なことが言えると思いますよ。合意無き離脱をやって、その後はどうするのですか。翌日からイギリスはどうなるのですか。貿易のルールがすべてなくなって、1つの国に戻るのですよ。何をどこに輸出するのか、いままで買って来たものはどうなるのか、全部ご破算になるのでしょう。「合意無き」なんて勝手に言わないで、と思います。しかし本当に、無責任な人たちが出て来てしまったということですよね。こんなことはあり得ないと思うのですけれど、悲しいかな、これが現実なのですよね。

ナイジェル・ファラージ氏の言っていた離脱のメリット

飯田)ナイジェル・ファラージさんは当時イギリス独立党を率いていて、いろいろなことを言っていましたが、離脱のメリットはかなり嘘だったということがその後、報道されていましたよね。

宮家)それはそうでしょう。国民大衆に迎合するナショナリズムの感情だけで話をしているのですから。もっと責任を持ってやれと言いたいですね。

飯田)イギリス人はもっと賢いイメージがあったのですが。

宮家)賢い人はまだまだ大勢いるけれども、少数派になってしまったのかもしれないですね。

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